第十一話 今日は動く日。明日は、たぶん休む。
第十一話です。今日は、「動く日と休む日を分ける」話をします。
朝だ。
たぶん。
目を開けて、最初に確認するのは――
体。
どこが痛いか。
どこが重いか。
昨日より、どうか。
「……うん。動ける」
これ、意外と大事。
動ける日に、動かないのはもったいない。
火は生きてる。
水の準備も、だいたいできてる。
腹は、騒いでない。
「よし。
今日は動く日」
自分で言って、少し照れる。
なんだろう、この“計画立ててる感”。
エルフが首をかしげる。
「動く日?」
「そう」
私は立ち上がる。
「毎日全力で動くと、
だいたい三日目で詰む」
布多めの人が頷く。
「疲労の蓄積ね」
「そうそう」
私は指を鳴らす。
「だからね、
動く日と、休む日を分ける」
姿勢のいい人が補足する。
「負荷分散ですね」
「言い方」
私は笑う。
「でも、そう」
今日は動く。
歩く。
探す。
確認する。
明日は、休む。
火と水を守る。
体を戻す。
「それで、生き延びる」
エルフが腕を組む。
「地味だな」
「地味よ」
私は即答する。
「でも、地味は裏切らない」
まず、少し遠くまで歩く。
昨日まで行かなかった方向。
地形を見る。
風の通り。
日当たり。
「ここ、暖かい」
布多めの人が言う。
「風が遮られてる」
「いいね」
私は頷く。
「休む日に向いてる場所」
姿勢のいい人が周囲を見回す。
「防御面でも有利です」
「言い方」
私はまた笑う。
「でも、覚えとく」
動く日は、
メモを取るみたいに、
頭に残す。
水の流れ。
木の種類。
影の位置。
「全部、
今日だけで決めない」
エルフが言う。
「慎重すぎないか?」
「慎重で疲れない方がいい」
私は立ち止まる。
「疲れると、判断が雑になる」
これ、
もう何回目か分からないけど、
大事だから何回でも言う。
昼前、
さすがに足が重くなってきた。
「はい」
私は手を上げる。
「ここまで」
布多めの人が驚く。
「もう?」
「もう」
私は即答する。
「余力を残すのが、動く日のコツ」
姿勢のいい人が頷く。
「合理的です」
「ありがとう」
私は腰を下ろす。
火の場所に戻る途中、
さっき見た暖かい場所をもう一度確認する。
「明日は、
ここで休む」
誰も反論しない。
夕方。
今日は、
無理をしていない。
歩いたけど、
走っていない。
探したけど、
焦っていない。
「……悪くない」
私は空を見る。
「こういう日が、
命を繋ぐのよ」
夜。
火を囲んで、
全員で座る。
「なぁ」
エルフが言う。
「明日は、本当に休むのか?」
「休む」
私はうなずく。
「休むのも、仕事」
布多めの人が笑う。
「いい言葉ね」
「でしょ」
私はちょっと得意になる。
「今日動けたのは、
昨日休んだから」
一拍置く。
「明日休めば、
また動ける」
派手じゃない。
でも、続く。
今日は、
“続けるための一日”だった。
次は、おっさんが「休む日」に落ち着かなくなって、何もしない練習をします。




