086_野次馬
野営地にて、カストロイデスの肉を焼いて食べてみた。
すまんこれは無理。
濃い味付けをすれば食べることは出来る。
しかし、保有している肉に対して、この味は調理に使いたいとは思えなかった。
『あんこ』も俺たちが食べている肉の味に慣れてしまっており、いまいちと回答。
残されたのはブラックウルフの子。彼らは頻繁に食べていた肉の味と、お腹いっぱい食べられるので高評価。
ちなみに、俺以外の人族は食べていない。
俺が無理判定をした時点で興味がそれ、普通に市場で売っている肉で満足と満場一致で、ブラックウルフの子専用となった。
さてさて、美味しくないカストロイデスの肉についてはここまで。
お茶を飲みつつ、いつもの食後の雑談タイム。
かなり寒くなった夜空を見上げ、白い息を吐く。
コーヒーが飲みたいな。自動販売機から出てくる激アマの缶コーヒー。
たまに無性に飲みたくなるんだよなあれ。
しかし無い物ねだりだ。ちょっとセンチになりながら焚火に目を落とす。
『この辺のブラックウルフが来てるっすよ』
「え?何か用かな?」
ブラックウルフは基本人族に攻撃はしない。
なので、特に警戒もせず待ちのスタンスでいる事にする。
怖がらせない様に、ナタリー達にもブラックウルフがこちらに来る事を事前に教えておく。
しばし待つと、三頭のブラックウルフが森の中から顔を出した。
こちらから声を掛けるとしよう。ナタリー達からすると俺が、ガウガウと言っているらしく、コミカルで笑えるってさ。
「こんばんわ。何か御用ですか?」
「うわ。話が出来るのか?」
ブラックウルフの反応が面白い。
「魔法ですよ魔法。それで何か御用ですか?」
「いえ、知り合いの子とフェンリル様を見かけたと同僚が言っていたので、確認をしに来たのです」
なるほどね。まずは『あんこ』の事の前に、ブラックウルフの子について説明しておこう。
ブラックウルフの子供たちとの事の成り行きを説明する。
さぁ多分問題の『あんこ』についてだ。
「こっちがフェンリルの『あんこ』俺の神様の指示で、従者をしてもらっている」
神様の事は、人族に知られなければ多分問題ない。
この会話は人族にはガウガウ言ってるだけだしな。
俺が生きにくく成らなければ良いのだから。現地のブラックウルフになら話しても問題ない。
「おおー。神様の使途なのですか?」
「いえ違います。神様の意図は分かりませんが・・・」
ま。説明はこんな所だろう。
その後、このまま南下して大草原に向かう事と、ブラックウルフの子供を含めた家族は、かなり北に移住する事を話した。
状況を把握したブラックウルフたちは、挨拶をして森に消える。
ついでにカストロイデスの肉を、お土産に持たせる事も忘れない。
朝早く目が覚める。
俺は基本外でタープ泊だ。男は外。女性陣は幌馬車と別れている。
まぁタープ泊と言っても、すのこを作ってベット代わりにして、厚手の毛布にくるまるので、それほど寒くはない。
秘密兵器の焼き石カイロがあるからね。
今それはどうでもいい。今問題なのは、ブラックウルフの群れに囲まれている事。
五十頭はいるかな。とんでもない数だ。
話してみると、興味からの野次馬だってさ。
俺たちは見世物かよ・・・。
ミカエルも起きて驚くが、悲鳴を上げすに済んだ様だ。
気にせずに朝食の準備に取り掛かる。
今日は軽くで良いだろう。見られながらの食事って食べづらい。
『あんこ』とブラックウルフの子は、和気あいあいと楽しげだ。
起きてきた女性陣は、当然悲鳴を上げる事になった。
無理もない。この数は勘弁してほしい。
俺は状況説明をする。解散させたいけど指示できる相手とは思えない。
一応お願いしてみるか?
俺はブラックウルフ達にお願いしてみる。
見送りは嬉しいが、君たちの数が多すぎて、連れが困惑しているので解散できないかと。
すると、半数以上がひと吠えしながら立ち去っていく。
うーん。全頭解散とはならず。まぁ数が減ったし。我慢してもらおう。
なんとか朝の身支度と朝食を終え。どっと疲れた一同が馬車に乗り込む。
「それじゃ出発します。皆様ごきげんよう」
俺がブラックウルフに挨拶し、馬車を出発させる。
ブラックウルフたちは、身動きをせず俺たちを見送ってくれた。
馬車からブラックウルフ達が見えなくなり、ほっと一息。
勘弁してくれよ。こういう事はもうこりごりだ。
野次馬がこれ程精神に来るとは知らなかった。
芸能人とかってすごいわ。メンタルが化け物だと底心思い知らされた一件であった。
馬車は森を進み、『あんこ』達は気ままに馬車の周りを走り回る。
たまに見かける角ウサギを狩って持ってきたり、楽しそうで何より。
女性陣はカストロイデスの毛皮について盛り上がっている。
そこそこ珍しく。結構なお値段らしい。
御者はミカエルがしており、ナンシーも話に参加している。
形が悪いが角ウサギの毛皮でミトンを作った事もあり、寒い中の御者も問題なくなった。
俺はそんなミトンを作成中。
俺が作らなくても、針仕事を経験したことがあり、最も上手なナンシーが作るのが良いのだが。
手に職をつける必要もないが、暇つぶしに作っている。
角ウサギの毛皮は、ギルドでの買い取りも、たかが知れてるので、気にせず使っている。
そして他に作るものが無いか考えているが、なかなか思いつかない。
旅行の道中の暇つぶし。前の世界ならスマホや読書など様々なつぶし方があったが、こちらでは雑談ぐらいしかないのが苦痛になりつつある。
今の話題には入りにくいしなぁ。
外は寒いから『あんこ』に騎乗して気分転換もつらい。
そんな事を考えていたら、いつの間にか意識を手放したのだった。




