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081_貴族との遭遇

焼肉パーティの翌日。

俺は案の定の二日酔い。

治癒魔法で解毒してアルコールを除去し、水分補給にインベントリから取り出した水を、がぶ飲みする。

これまた初夏のビメリュスで塩を作った副産物。

それほど冷たくないので冬場は重宝する。

ちょい離れた所にトイレを増産する。壁と穴を掘るだけの簡単仕様。

ぼっとんだけど、直ぐに埋めちゃうし問題ない。

目覚めた女性陣もやはり二日酔い。

治癒魔法をかけ、俺と同様に、ぬるい水をジョッキで渡す。

作りたてのトイレの説明とお湯が入った桶を用意する。

俺はその後。片付けを開始する。

インベントリに入れて、汚れを分離するだけだ。

女性陣が顔を洗って戻って来たので、インベントリから着替えを取り出し手渡す。

今だ寝ていたミカエルを叩き起こし、女性陣は馬車でお着換えタイム。

寝汗で汚れた服を回収し。汚れを分離。

洗浄魔法を使いさっぱりしてもらった。女性はいつでも綺麗な方が良いよな。

朝の着替えと洗浄魔法での身支度は女性陣に好評でルーチンワークになっている。

ナンシーは、旅が出た当初。俺に着替えを見られて恥ずかしがっていたが、主従関係の契約の事もあり、恥ずかしがるものの、しっかり着替えをする様になっている。

俺とミカエルも時間を掛けずに、着替えと洗浄魔法。

作り置きの暖かいスープで朝食を済ませる。

馬たちも、ご飯をモリモリ食べている。元気そうで何より。

囲っていた壁を取っ払って、いざ出発だ。

しかし今日は空が厚い雲に覆われて、今にも雨が降りそう。

御者席の二人に耐水性のフード付きのポンチョを渡す。

このフード付きのポンチョは、ちょいお高い魔物の皮性で、重いがビニールの様な素材で一切雨を通さない優れもの。

高いこともあって、王都を出るまでに三着しか用意できなかった。

値段のせいではなく、市場に出回らないのである。

荷馬車はホロの中に天幕張っているので、雨対策はばっちり。

あとは『あんこ』だけど・・・。

雨、風、寒さは気にしないだろう。

ただ、俺たちが雨による泥汚れを気にするだけだ。

予想通り、しばらく進むと雨が降ってきた。

みぞれになる前の極寒の雨。

この辺は雪は降らないらしいが、上空の気温が氷点下にならないだけの事だ。

「ナンシー。寒くないか?カイロはまだ温かい?」

御者席に声を掛ける。カイロと言っているのは、ただの焼いた丸石を厚手の毛布に包んだだけの物。インベントリには沢山用意してある。

「手が冷たいだけですよ。こればっかりは手袋をしたままだと濡れちゃうので。ミカエルと交互に、手を温めるために交代しています」

防寒防水の手袋。考えてなかったわ。

間違いなくミトンになるだろうけど。防水のミトン。ポンチョ同様入手困難な予感。

考える俺を見て、ミカエルが答える。

「大丈夫ですよ。ナンシーと交互に手綱を握れば良いので」

「無理と感じたら、素直に声を掛けろよ。休憩するからな」

「ありがとうございます」

主従関係とはいえ、無理強いさせる様な男にはなりたくない。

時間はあるんだから、ゆっくり進めばいいさ。


『主!この先で馬車が立ち往生してるっす』

進行方向の確認に行っていたのだろう『あんこ』が走ってくるなり俺に状況を伝えた。

「秘祭の告知があったのに、この道を使った馬車ねぇ」

「コボルトの集落に、立ち寄るつもりが無かったんじゃないの?」

ナタリー鋭い。宿場町を利用しない予定での移動。それは何かしら急いでいるから。

で、馬車に負荷をかけすぎて壊れたとかかな?

どちらにせよ、相手がどう出るかかな。助けなきゃならない訳でもないし。

海上には助ける義務。みたいなものがあった気がするが。異世界でしかも地上。

お高く接して来たら無視して通過しよう。

ミカエルの方針を伝え、御者席からナンシーを荷馬車の中へ招き入れる。

女性が御者しているとね余計なイベントが発生しかねない。

男尊女卑なんだよ、この世界。しかも中世ヨーロッパ並みのキツイやつ。

あんこには視界に入らない様に、隠れて着いてくる様に伝えた。

しばらく進むと『あんこ』の言葉通り。立ち往生している馬車が見えてきた。

道から少し外れ、馬が三頭に傾いた豪奢な客車。

「止まれー。止まってくれ」

御者だろうか。ずぶ濡れの男が両手を振って大きな声で呼び止める。

俺はミカエルに停止するように伝え、とりあえず用件を聞く様に指示を出す。

「どうしました?」

「車軸が折れてしまって、身動きが取れなくなってしまった。今助けを呼びに人をやっているが、食べ物の手持ちが無くなり難儀している。少し分けてもらえないだろうか」

豪奢な馬車ってだけで、傲慢な貴族が登場するのかと思ったが、そうそう異世界物の定番な貴族は登場しないよな。

食料を分けるのは問題ないが、手持ちの食料は全てホカホカの出来立てか、新鮮な食材ばかり。

保存食っぽいものは何かあったかな?と考えた結果。パンとリンゴとチーズ。

全て日持ちする食べ物だし、それほど怪しまれないだろう。

小声でパンとチーズとリンゴならOKと指示を出し、インベントリから麻袋に入れ直す。

「粗末な物しか、持ち合わせがありませんが」

御者っぽい人とミカエルがやり取りをしていると、豪奢な馬車から男の声が響き渡る。

「さっさとしろ。いつまで待たせる気だ」

あら。またもお約束だったのか。

どうしよっかな。関わりたくないし、麻袋に入れたのは二人だと七日分の食料。

袋ごとあげて、さっさと移動する様にミカエルに指示する。

ミカエルは食料が入った袋を差し出し、馬に指示を出すが。馬車の中から呼び止められた。

「止まれ。貴様は私をここに置き去りにする気か?」

馬車からお貴族様が顔を出し、罵りだした。

えらいものがエンカウントしやがった。

俺が交渉するしかないか。ミカエルじゃ何も判断できないしな。

念のため、女性陣には馬車から降りる事になった場合に備え、フード付きのマントを取り出し渡しておく。

顔を隠して話はしない様に念を押しておく。

俺はポンチョを羽織り、馬車から降りる。

「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。わたくしはジャンと申します。出来る限りの協力をいたしますが。馬車を修理する事は、わたくしには出来ません」

「ならばその馬車を提供しろ。私は急いでいるのだ」

ここで理由とか聞いたらアウトなんだろうな。

そしてこんな所で馬車を強奪か。盗賊と変わらんな。

「わかりました。馬車をお渡しします。乗車している奴隷を降ろすので、少しお待ちください」

馬車の裏手に回り、小声で女性陣とミカエルに、見られない様に馬車を降り、離れた岩陰に隠れるように指示を出す。

車内の見られちゃまずい物や、クッションなどインベントリに収納する。

「お待たせしました。私たちに出来る事はもう何もありませんので、これで失礼してもよろしいでしょうか」

「好きにするがいい」

満足げに御者に叱咤し始める。

役立たずとか、私を働かせおってとか。帰ったら罰を与えるとか。

意識が俺から反れているうちに、出来るだけ音を立てずに、その場を立ち去る。

女性陣に合流し。道を外れ、さらに遠くへ移動する。

馬車が全く見えなくなるほど遠くに移動して、簡易シェルターを魔法で作成する。

石でできた、暖炉付き豆腐ハウスだ。

とりあえず体を乾かして温めないと。

今後の事はそれから考えよう。

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