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079_鍾乳洞

朝早く俺たちはコボルトの集落を出発した。

大勢のコボルトに見送られ、一旦来た道を引き返し、コボルトの護衛と共に、旅の目的の大鍾乳洞を目指す。

集落には、ロックキャンサーの在庫が切れたらまた訪れるかもしれない。

そんな集落から鍾乳洞まで約一時間。大きな入口が出迎える。

入り口の前は広場になっており、馬車の駐車が可能になっている。

気さくなコボルトの護衛とは、トリビスに立ち寄った時に、また飲もうと約束を交わし、俺たちが鍾乳洞に入る前にお別れである。

彼らの本職は荷馬車の護衛。拠点はホルギュカの王都カラッス。

ホルギュカのカラッスとモーグのトリビスを、陸路で移動する商隊の護衛である。

残ったのは、俺たちがこの後使う馬車と馬二頭。ガイドと護衛のコボルトが二人。

俺たちはガイドと共に鍾乳洞に踏み込む。護衛のコボルトの一人には馬車御見ていてもらう。

当たり前すぎて忘れていたが、洞窟なんだから真っ暗。

照明用のロングスタッフを慌てて取り出し、ミカエルとナンシーに持たせる。

ガイドのコボルトを先頭に奥に進む。

鍾乳洞の内部は思ったほど寒くはない。とは言え防寒具を脱げるような気温ではないが。

気が付いたこと。蝙蝠が居ない。

このカルスト台地。奇妙な事に空を飛ぶ鳥や魔物が極端に少ない。

これは、カルスト台地に着いた時に説明されたが、危険な飛ぶ魔物は数年前のワイバーンが通過したのが最後で、目撃すらされていない。

絶対何かあるが、首を突っ込むのはイベントが好きな英雄希望の異世界人とか、酔狂な人に任せる!

俺はとにかくこの世界で、和食が食える様にする。

他の事はそれが達成できてからだ。

蝙蝠の糞がないので、匂いもきつくなく地面は歩きやすかった。

ガイドが立ち止まり、つらら石が大量に天井から生えている場所を指さす。観光スポットなのだろう。

これから先は、このつらら石の大広間だそうな。

ガイドに確認して、ちょっと強めの照明魔法を使ってみる。

これはすごい。ちょっと大きめの体育館なみの広さの部屋の天井全てが、大きさが様々のつらら石。

ここの鍾乳石は、白みが強い乳白色。

ちょっと思いついたことをやってみよう。

照明魔法の光の波長を変える事が出来ないか。即席の実験だ。

光の波長の波を時間をかけ徐々に細かくするイメージ。

うん成功。暗い紫から徐々に色が変化していく。

紫、青、緑、黄、橙、赤へと。

「うわー奇麗」

素直に反応する女性陣。

「ジャンすごい。こんな魔法も使えるのか。なんで学園では爪を隠しているんだ?」

ミカエルは初披露の魔法って事もあり、突っ込んでくる。

主従関係があるし、口外はしないだろうから追々話していこう。

しかし単発で色が変わるだけだし、俺としてはいまいちだけど、喜んでくれたのなら良しとするか。

つらら石の大広間を進み。水が流れる横穴に入る。

雨が降った後には、横穴の足元は完全に水の流れる川になるのだろう。

そんな横穴を進むこと十分程度。また大きな広間に出る。

こちらも広間の先に光が届かず良く見えない。

「こちらがリムストーンプールの広場となっています」

ガイドの説明を聞き、また強めの照明魔法を使う。

奥にある小さな滝を始点に棚田の様なプールが広場を覆いつくす。

これが有名なんだろう。そう思わせる圧巻な見ごたえだ。

俺たちが出てきた横穴は、傾斜がある広場の中央付近。

右手奥に滝があり、左手に向けて傾斜しており、それぞれのプールに水が流れ落ちていく。

プールを覗き込むと、真っ白い球状の鍾乳石が堆積している。

一つ取ってみると、見事なまでの真っ白い球状の石。

インベントリに入れて確認すると、炭酸カルシウムと出た。

貝殻と同じですか。

ならば記念に一つだけにしとこう。貝殻さえあればいくらでも作れそうだし。

その後、様々な鍾乳石を見て、大満足で鍾乳洞を出る。

地底湖に照明魔法を落として、水の底からライトアップは流石にやりすぎたか。奇麗だけど怖かった。

どこまでも深く透明度がやけに高い青白く光る水。

ちょっと足元が震えたよ。

鍾乳洞の入り口の広場で休憩と、ガイドのコボルトへのお礼のあいさつ。

ここから少し南へ行くと、コボルトの集落とブルンド、そして次の観光地『ホルギュカの大草原』への道が十字に交差している。

これから先は護衛が居ないので、馬警護は慎重にしなくてはならない。

当初俺たちの旅。全旅行行程に護衛とガイドが付く旅行プランだったが。

そこまでコボルト達にお世話になるのも気が引けたので、遠慮させてもらった。

『あんこ』万能説があるので大丈夫。

守備は俺がなんとかできるしね。

十字路でガイドと別れ、俺たちは十字路で南に延びる道を進む。

御者は荷馬車の経験がある、ナンシーが担当した。

もちろんミカエルは御者の訓練をするために。御者席に座っている。

この馬車はホロ付きの荷馬車。大きなクッションを持参していたので、客車ではなく荷馬車を選択した。

ホロのフレームも、しっかりしたものを選んで、冷気対策もできるようにカスタマイズ済み。

ホロ内に天幕を張って、加熱した石を置く箱を置き。床にも厚手の毛布。

万全の態勢で旅に挑んでいる。

もちろん御者の二人の防寒対策も万全だ。

あんこは、つねに馬車の周りを警戒してくれており、馬の休憩タイミングも管理してくれている。

たまに『あんこ』に騎乗し馬車の外を満喫したりする。

ナタリーとヘルミナも『あんこ』に騎乗するのが楽しいらしく。荷馬車に三人一緒し居る事が少ないぐらい。

そして今日の野営地に到着する。

コボルト達が秘祭の告知を出したためなのか、すれ違う人もおらす。この野営地も貸し切りだ。

つまりそういう事である。

全面土魔法による囲いを作って風対策。馬車馬たちも安心。

一酸化炭素対策も万全。暖炉と換気孔も作る。

焚火で野宿も良いんだけど。女性が居るし。安全を考えると、出来る時はやってしまおう精神で旅行を楽しみます。

「ジャンさー。学園に在籍する意味あるんか?」

ミカエルが、ここぞとばかりに質問してきた。

「もう無いかな。貴族とのコネもできたし。知りたかった事はあらかた調べた。金も不満が無いぐらいに稼げるし。貴族になる気も無いしな」

「お前が普通じゃない事はよくわかったよ。俺が聞きたかったのは魔法に関してだよ。俺が知る限り、お前ほど魔法が使えるヒューマンは聞いたことが無い。もちろん俺が知らないだけかもしれないが」

「そっちか。魔法については秘密としか言えないな。ナタリーやヘルミナも知らない。全てを知っているのは『あんこ』だけ」

ミカエルは『あんこ』をチラ見して。

「口外できない、主従契約結んでも話せない内容なのか。いや、すまん。これ以上踏み込むのは止めておく」

ミカエルは両手を上げ話題の打ち切りを宣言する。

頭の回転が速い奴は良いね。説明が面倒くさいからな。

この世界は実験場。魔法に関しては『地母神の加護』の影響。

現地人に話せる内容じゃないよ。

アリシアさん好きにして良いと言われているから、魔法に関しては好きに使ってるけどさ。

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