078_狩り
土産屋で見せてしまったロックキャンサーの蒸し焼き。
昼食にナタリーとヘルミナの要望でカニパとなってしまった。
俺のインベントリには、調理済みの食料がたんまりストックされており。
いつでも食べる事が出来る事を知っているので、在庫があると知れてしまえば。後の祭りになるのは必然。
ロックキャンサーを食べた事が無い、ミカエルとナンシーも警戒していたが、余りにも美味しそうに食べる俺たちを見て、一度口に入れた後は、お約束の無言の殻むきが始まっていた。
宿の食堂で食べていた俺達。
なぜか『あんこ』もカニパに参戦しており。在庫のロックキャンサーが全て無くなってしまった。
ジャイアントの方はまだ半分ぐらい残っているが、あれは味が違うので別物。
ジャイアントロックキャンサーは味かさらに濃厚。
そのまま食べるより、食材として使うのが正解なんだよ。
でだ。居合わせたコボルト達にも一口食べてもらった。
あんこが食べるものを食べないという選択肢はないらしい。
一応、草食動物、肉食動物は食べるのに、腐肉食動物はなんで食べないの?って感じで、ただの食べず嫌いなだけだよと説明しといた。
ただしネズミは病気を持っているのが殆どだから、ロックキャンサーみたいに食べるのはお勧めしないと注意も忘れない。
さて、これで午後の予定が出来てしまったわけだ。
ロックキャンサー狩り。
いつ何時カニが食べたくなるか分からないので、在庫補充が必要。
幸いこの地には、ラッドなみに生息しているらしい。
今回『あんこ』は狩りに参戦出来ないが、要領はつかんである。何とかなるだろう。
ロックキャンサー狩り。女性陣は不参加。ハサミが危ないし、一応魔物。
コボルトの狩人も何人か手伝ってくれるらしい。
俺は探知魔法のマナスキャンを使って、ロックキャンサーの位置を特定し。訓練用に購入した鉄筋ソード(持ち手の部分だけしっかり作った)を振り下ろし絶命させ、インベントリに収納を繰り返し。
ミカエルはコボルトが持ってきてくれるロックキャンサーを受け取り。荷物持ちに徹する。
「嬉しいね。こんなに居るとは思わなかったよ」
「ロックキャンサーが、あんなに美味い物とは知らなかったよ」
ミカエルはしみじみと語る。
居合わせたコボルトからも同様の声。
死肉を食べる魔物だもんな。普通食べようとは思わないだろ。仕方ない事だと思う。
とは言え味を知り。食べても無害と分かった今。
ただの美味しい獲物でしかない。
集落の食料事情に一役買ってくれるだろう。
うまくすれば観光客相手に一儲けできる。ロックキャンサーの産地。郷土料理として。
しかし切りがない。俺は鉄筋ソードを振り上げるのも、そろそろ限界。
上段からの打ち下ろし。ロックキャンサーの逃げ足は速いが、近寄っても逃げないので、一撃で仕留めれば簡単に対処できる。
なので、一撃に力を込めて鉄筋ソード振り下ろす。それを数百回繰り返しているのだから、未熟な子供の体には負担が大きい。
もう無理。とロックキャンサー狩りを止め。コボルトの狩人達にまかせる。
彼ら全員で俺の討伐数と同等のロックキャンサーを狩っている。
探知魔法のマナスキャンを使える分。俺の方が早く見つける事が出来た差だろう。
近くの岩に腰掛けて、休憩しようと声を掛ける。
集まってきたコボルト達に、冷えたエールのジョッキを渡す。
「一杯ぐらいなら平気でしょ。この辺で危ない魔物ってヘルバジャーだけですよね?」
「危ないのは後、熊とジャイアントピルバグだな。俺達なら泥酔してても問題ないぞ」
そう言って気さくに話しかけてくれる。
「『あんこ』様の主ってどんなお方かと気を張っていたが。あんたが気さくでよかったよ」
「ああ、爺どもが敬語を使えとか、礼儀正しくとか。お前たちが来る前に、ぐちぐち口うるさく言われてなぁ」
まぁ。あった事もないフェンリルを従者としている人物だもの。警戒はするだろ。
ヘタにご機嫌が悪くなったら、崇拝する『あんこ』に八つ当たりとかさ。
「それで、ロックキャンサーもっと狩るのかい?」
インベントリのカウントは五百を超えている。
「そろそろ良いかなと思っていました。仕留めるペースが全く落ちないので、どれだけいるんだろうと」
「それな。俺たちも、こんなに狩った事無いから良く分からない」
「そうそう。それにだ。こいつら直ぐに増えるんだよ。ラッドより繁殖力高いんじゃねえか?」
「でもまぁ餌が無きゃ増えないし。スタンピードも起きたことないからな」
エールのお代わりを出してあげて、集落に帰る事にした。
帰り道。ヘルバジャーに追われている野生の牛を発見。
俺が出る幕もなく、コボルトの狩人達があっけなく両者を狩る。
その場で解体して、内臓などの不要な物はその場に投棄。どうせロックキャンサーが食べるだろうと笑って答える。
集落まで俺が運ぶことを提案して、インベントリに収納する。
そして、集落に到着する直前。
「ジャンさんよ。あの四角い岩はジャンさんが作ったんだって?」
午前中に作った展望台を指さし質問してきた。
夕暮れにはまだ時間があるので、説明がてら寄るこ事にした。
扉や窓はまだついていない。丘の上にある俺が作った展望台。
地下室と、屋上から遠くを見渡せるので、監視出来て便利かなと説明し。
夕日を見るために、もう一度ここに来る事になるが、一旦宿に帰る。
女性陣と合流。今回は『あんこ』も一緒に展望台に戻ってくる。
日もだいぶ落ちてきて、空が赤く染まってくる。
屋上に上り。それぞれリラックス出来る体制で、夕日が落ちる景色を眺める。
付き人のコボルトが運んできた椅子に腰かけたり。手すりに身を預けたり様々だ。
俺は立ったまま眺める事にした。
明日は目的の鍾乳洞。
有名なんだから見ごたえあるんだろうな。
つらら石や洞窟珊瑚楽しみだ。
そんな事を考えながら。ぼへっと夕日を眺めて本日は終了。
ロングスタッフの照明で道を照らし、集落に帰る。
そのまま集会場に赴き、晩餐となった。
本日とれたての野生の牛。ヘルバジャー。そしてロックキャンサーが食卓に並ぶ。
あんこが食べるロックキャンサーを見て、コボルト達も腰が引けながらだが、口に運び、そして感想の嵐。
美味しいよね、蟹ってさ。




