074_盗賊
あれがブルンドだ。
朝食を取った後。甲板にて船長自ら指さし俺に教えてくれる。
大きな港町からあまり離れていないこともあり。一般的な漁港なのだろう。
港付近には小さな船がちらほら漁をしている。
陸が見える沿岸を五日間の航海。トローリング漁モドキで大量の魚を釣り上げて以降。魔物が現れる事もなく。ただまったり過ごし、今日にいたる。
乗船している船がゆっくりと岸壁に接岸し、タラップが設置される。
船旅に慣れていない者にとっては、待ち望んでいて陸地だ。
激しい船酔いをるす者は居なかったが、軽微な船酔いは全員体験している。
みんな餌蒔きしなかったのは良かったよ。
上陸してすぐ。百人規模のコボルト達による大歓迎を受ける事になった。
もちろん『あんこ』がだが。
あんこに悪いが、俺たちは『あんこ』から少し離れ様子を見る。
側にいたコボルトに、港町の住民に迷惑だろうから、さっさと移動しようと提案する。
あんこを除いた俺たちは、移動のための馬車に案内され。『あんこ』の周りが落ち着くまで待たされることになった。
当初の予定では、漁港で昼食後に移動の予定だったので。野営地ではなく、ただの道端の広場にて昼食となった。
やっと火が使えるので、待ちに待った焼き魚。ブリの塩焼きだ。
ブリのあら汁とセットで作る。
俺と『あんこ』は刺身も堪能し、移動を再開する。
護衛のコボルトが十数人同行しているが、そこまで警戒する必要あるのか?
この辺は治安が悪いのかもしれない。
そんな事を考えて、ガドローズのカルスト台地にあるコボルトの大きな集落に向け数日。
あの考えはフラグだったのだろうか?野盗に襲われたのである。
あんこが事前に気が付き。俺が探知魔法のマナスキャン。マナサーチを使い。認識しているヒューマンや生物の数などを特定して、護衛のコボルトに伝える。
俺達の車列は、野盗が待ち構える場所から距離を取って停止する。
「どうしよっか。間違いなく野盗だろうけど」
護衛のコボルトに相談する。
「野盗でしたら殺処分で問題ありません。しかし人数が多いです」
そう俺が確認した人数は二十四人。護衛のコボルトの倍である。
盗賊団と呼称しても良いだろう規模だ。
あんこにお任せしちゃおうか?とは言え強い野盗が居るかもしれない。
作戦を考えるべきだ。
んー。焦れるのを待つのが楽かな?待ち伏せは相手に有利だしな。
即席で何か良い魔法が出来ないだろうか?
人族相手だし、理想は非殺傷の身動きが取れなくなる魔法だけど。
そんな都合が良い方法を思いつかない。
病院の手術とかで使う麻酔ガス?広範囲に散布?イメージできない。
次点でこちらに怪我人が出ない方法は・・・これしかないか。
「コボルトの皆さんは馬車を守ってもらえる?俺と『あんこ』で対処するからさ」
「『あんこ』様とジャン様のお手を煩わせる分けには」
「良いから良いから」
『あんこ』に騎乗し、対処方法を説明する。
俺が物理障壁魔法を使い、『あんこ』が索敵および接敵。そして魔法による攻撃。
ダンジョンで『あんこ』がオークに使ってた魔法だ。
魔法がレアなこの世界だと。物理攻撃を防いでしまえばイージーモード。
俺は単騎。野盗の待ち伏せポイントに突っ込む。
周囲からわらわら統率もなく突っ込んでくる者。弓を放つ者。脳筋しか居ないのだろうか?
人数が居るんだから、もうちょい考えて行動しろよ。
・・・
苦戦も何もなく、殲滅が完了する。
車列に戻り。コボルト達に後片づけをお願いする。戦利品の回収と死体の処理だ。
「今の盗賊さ。拠点とか作ってないのかな?」
「人数が居ましたから。近くにあるかと思います」
護衛のコボルトのリーダーが答えてくれる。
「どっちにあると思う?」
『あっちっすかね。臭い匂いが向こうの方から臭ってくるっす』
あんこ鼻が良いな。コボルトのリーダーは分からなかったみたいだぞ。
「『あんこ』がそれっぽい臭いを見つけたので、ちょっと行ってくるわ」
「さすが『あんこ』様。お役に立てずすみません」
ナタリー達の護衛を任せ。盗賊の拠点。お宝探しに向かう。
あっけなく拠点らしきバラックが見つかる。
探知魔法には、まだ数人盗賊が残っているらしい反応を捉えた。
気にせず。先ほどと同様に『あんこ』に突入させる。
『つまらないっす。ゴブリンより雑魚だったっす』
盗賊らしき反応がすべて消えた後。あんこが愚痴る。
いや、『あんこ』が規格外すぎるだけだぞ。俺が障壁魔法使わなくたって、矢は避けるでしょ。近接武器も軽々避けるでしょ。魔法も使って首を飛ばすでしょ。
敵が魔法を使わない時点で、『あんこ』に敵は居ないんじゃね?
そういえば。前に『あんこ』の抜け毛がハサミで切れないと、一般教養講師のオルファさんが嘆いていた事を思い出した。『あんこ』の抜け毛成ぬいぐるみの作成に苦戦しているらしい。
『あんこ』毛。フェンリルの毛。ガチで刃物によるダメージ無効なんじゃないか?
試していないから何とも言えないが。
俺が障壁魔法使わなくても、物理無効とかじゃないよな?
まぁ。『あんこ』が強い事には文句はない。有難いだけだしな。
そんな事考えていると。バラックの中から若い裸の女性が現れた!
盗賊に捕まった若い女性と言えば、お約束ですか。
インベントリに突っ込んであった、汚れ物のシーツを洗浄魔法をかけ取り出す。
「とりあえずこれで、肌を隠してね。後で安全な場所に送り届けるから」
そう告げてシーツを渡すと・・・あと二人いるらしい。
追加で、新品のシーツを二枚渡す。
服はさ。女性陣の物だし。勝手にあげることは出来ないのよ。
捕まっていた女性達がバラックから外に出たことを確認して、入れ替えで踏み込む。
臭いよ・・・。
我慢しながら、金目の物をインベントリに片っ端から収納する。
分別は後だ。この臭いがシャレにならない。目も痛くなってきた気がする。
バラック以外にも野ざらしの木箱やら、車輪の無い幌馬車などから金目の物をインベントリに収納し。女性達の元へ戻る。
「それじゃ行こうか。一旦ガドローズのカルスト台地にあるコボルトの集落に向かうから。そこでどうするか考えればいいさ」
あんこに騎乗せず。女性達と歩いて車列に戻った。
もちろん拠点の盗賊の死体は野ざらし。金目の物は回収したし。スカベンジャーが処理してくれるだろ。




