073_海
朝早く。日が昇り切らないうちに宿を後にて、コボルト達が用意してくれた船に乗り込む。
うん。荷運び用二本マストのスクーナ型。客船ではない。
客船は貴族用。無駄な装飾が多くて重く。速度も出ない。
その点このコボルトの運搬船は頑丈で積載量が多く、標準的な速度。
実用に特化した船だ。
頑丈なのは、魔物がいる世界なので、荷を守るために必須な事。
豪華客船旅行が目的じゃないから満足だ。
すでに『あんこ』は乗船しており。コボルトに囲まれ、くつろいでいた。
船での注意事項。緊急時は船長の言葉が何事より優先される。この一点のみ。
まぁ、お約束だね。船の上じゃ逃げ場はない。俺は素直に了承する。
しかし船長のコボルトは、「大型の魔物や大嵐じゃないと緊急時ではないから、何でも言ってください」と気さくに話してくれた。
港を出て、しばし陸から離れた後。南下を始めた。
陸が見える距離を移動するらしい。
余り陸から離れると、大型の魔物に遭遇するのだそうな。
早速、俺たち付きのコボルトに質問する。
せっかくの海。トローリングがしたい!
案の定。そんな漁法は知らないとの回答。
そんな回答で諦めるわけがない俺。魔法とインベントリを駆使して釣り具を作成する。
ポリエチレンの糸。分子構造はそれほど複雑じゃないはず。
うんうん唸りながら、魔法にて極細の糸を数百メートル作成。
これをインベントリで編み込む。
出来あだったのは釣り糸のPEライン。トローリングだしちょい太めにした。
釣り針は大き目のステンレス仕様。
ハリス部分にワイヤーを作成。
リールはどうしようか?
魔道工学の出番である。
大量の木材はインベントリにあるので、悩み悩んでインベントリで部品を工作する。
そうしているうちに船酔いする事もなく昼食を挿み、夕食の時間になってしまった。
出来上がったのは、ウインチ。途中小型化は現段階では無理と早々に諦め、小樽サイズの巻き上げ機を作成した。
糸のテンションをある程度調整できるように、糸が引き出される仕組みに苦労した。
もちろん魔道工学を駆使しての自動巻き上げ式だ。
船長の許可を得て、船尾に固定させてもらおう。
釣り竿?早い段階で諦めたさ。カーボンロッド?グラスファイバー?無理に決まってる。
それとなく魔物の素材から手ごろな物を探そうと、ビメリュスの雑貨屋で決めていた。
夕食時後。船長にウインチの説明。何をしたいのかなど説明して設置の許可を得ることが出来た。
夜のうちに設置する。
ウインチと、ロッドガイドっぽい糸が出る方向を固定する物を船の後尾に取り付ける。
後はルアーと重り。
餌にする場合は重りが必須。ちょうどいい深さに沈めなければいけない。
ルアーなら、それ自体を重くすればいい。
ルアーは金属製で中身を空洞にして重さを調節。ナタリーとヘルミナの金の像を作った経験が役に立った。
これで準備は万端。細かいことは抜きにして、大雑把ながらトローリングで魚をゲットできるはずだ。
翌日朝早く、トローリング漁を試してみる。まずはルアー。
帆船なので速度がころころ変わる事を想定し、あまり重くないルアーで試す。
ろくに待つこともなく、ウインチの糸にテンションが掛かり、糸が引き出された。
何もかもが初めての道具なので、慎重にいこう。
糸の強度は大丈夫そうなので、ウインチを低速巻き上げで起動する。
ウインチの糸が巻き上げと、引き出しを勝手に繰り返す。
・・・これじゃない感が半端ない。
俺がやりたかったのは、カツオとかブリとかを、竿で釣り上げるやつ。
うん。次回の旅行では必ず実行しよう。
そうしているうちに魚影が見え。コボルト達が、錨を引き上げるフックの様なもので魚を引き上げる。
ギャフ作るの忘れてた。
引きあがった魚はブリ?大きさも見た目もブリっぽい。
「すごい。こんな大きな魚獲れるんだ」
ナタリーが褒めてくれた。
コボルト達の評価も上々。
ちゃんとしたギャフを作って、何度も繰り返すウインチ巻き上げトローリング。
インベントリ保存用だし、他にやる事も無さそうなので繰り返す。
インベントリに入れて名前が明確になったブリを筆頭に。さわら。カツオ。はまち。カンパチ。
入れ食い状態だ。
魔物が釣れるのをちょっと警戒していたが。今のところ食用の魚しか釣れていない。
このウインチはこの船に残していくつもりなので、手の空いたコボルト達にも作業してもらう。
運搬中の小遣い稼ぎに魚捕り。売って設けるのも良し。
上陸してからの食卓を豊にするも良しだ。
船上では火が使えないため、調理は陸に上がってからになってしまうがね。
暇になったので、予備のルアーなど作っておく。
・・・君たち、そろそろ止めておこうか。
港に水揚げする前に、この量は腐っちゃうよ。
後部甲板を埋め尽くす魚。
今回はマジックバックを持っている体で、大量の魚を釣り上げてもOKとは言ったけどさ。ここまで釣れるとは思わないじゃん。
予備のルアー作成と昼寝をして。戻ってきたらこの状態。
ポイポイポイ。インベントリに収納し。俺の分はもう良いので、後は自分たちの分だけにしなよと声を掛け。爆釣トローリングはお開きとなった。
やっぱり生でも食べられるんだし。寄生虫どうにかできないかな?
そう考えだした夜。ネットでアニサキスを見つけやすくするライトがあったよな?と思いだした。
ある波長で良く見える様になるんだっけ?
ここは魔法がある世界。良く見えるではなく殺処分してしまえないか?
船の上は暇なので。魔石もたんまりあるし。ブリを捌いてアニサキスを見つけ取り出す。
魔石を光らせる式を分解し、光の色が変わる部分を見つけ出し、アニサキスが良く見える光に調整する。
この波長に反応した場合の加熱式を組み込む。
こんな感じ?さあ実験実験。
半身のブリに魔石の光を当てる。
ジュッ!
音と共にちょい焦げ臭い匂い。
ちょっと温度が高いか。船が燃えたらシャレにならない。発火点にならない温度まで下げる。
次に身の中身に入り込んだ、アニサキスが殺せるかの実験。
アニサキスをブリの肉で挟んで、魔石の光を当てる。
半透明だったアニサキスが、真っ白い熱で死滅した色に変わっていた。
成功だな。
魔石と魔法式を組み込んだ長細い四角い箱を作り出した。
ティッシュBOXサイズになってしまったが。これで生でも魚が食べられる。
という分けで最終実験である。
まるまる一本のブリを用意。
アニサキス殺傷ライトを照射。さばいてアニサキスの生存確認。
・・・。インベントリで確認できないか?やってみたら出来た。
アニサキスと、アニサキス(死)。区別され表示で来たので、殺傷ライトを当てる前と後で判断した。
その後、アニサキス殺傷ライトもコボルトに贈与。
みんなで美味しくブリ刺を堪能しました。
まぁ刺身を喜んだのは、俺と『あんこ』だけだったけどな。
生ものは危険。よくある話なので強制はしなかったよ。
でも緊急時には殺傷ライトを使ってから食べる様にとね。
塩レモンで食べたけど美味かったよ。




