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004_初めての魔物

「ありがとうございます。荷台に乗せてくれて」

あの後、やってきた荷馬車の商人に拾われ、最寄りの町トイプに向かっている。

商人の名はバシャード。中年で奥さんと息子はトイプで店番してるらしい。

アリシアさんからの念話が一切聞こえなくなってから30分程度で小川を渡ってきたバシャードさんに声をかけた。

記憶がなく、一人と一匹で火のついた竈の前に座っていたと伝え。どうすれば良いかと相談した結果。とりあえず最寄りの町まで乗せていくという事になったのである。

今フェンリルはおとなしく荷台に乗っている。

荷馬車が動き始めるとしばらくは追走していたのだが、しばらくして荷台に飛び乗って伏せている。

名前はまだ無い。

バシャードさんの荷馬車は軽トラほどで一頭引き。隣村に商品を卸してきた帰りとのこと。

この辺りはかなり安全で魔物は臆病な雑食の魔物ラッド(ヌートリアっぽい)しか生息していないらしい。

そのラッドが馬車に乗せてもらってしばらく進むと道端で何かを食べていた。

「でかいネズミ。あれがラッド?」

「おう。図体がでかいだけで。近づくと逃げていく。ネズミと何ら変わらんよ」

襲ってこないのに魔物?と質問したら、体内に魔石を生成するかしないかが大まかな判断基準らしい。

フェンリルは荷馬車から飛び降り。瞬時にラッドに飛び掛かった。首にかみつきボキリと嫌な音がでる。首の骨が折れたのだろう。

ラッドは足をピクピクさせ、やがて動かなくなった。

「殺しちゃって問題ない?」

「魔物で駆除対象だ。農家に喜ばれる」

バシャードさんは馬車を降り腰のナイフを取り出すと。フェンリルからラッドを取り上げしっぽを切り落とした。

そして馬車に乗り込み切り取った尻尾を渡してきた。

「ほら、とっときな。明日ギルドに持っていけば小遣いになる」

フェンリルは取り上げられたラッドを眺めた後。すでに荷台に飛び乗っている。食べる気はなかったようだ。

訓練された猟犬っぽくてかっこいいな。素直な感想だった。

「ラッドの魔石は取らないの?」

「魔石は砂粒程度だ。小さすぎて金にならんよ」

「それより何か思い出せることはないのか?坊主は成人前だろうけど健康そうだし、自分の食いぶちぐらいは稼げるだろう?捨てられた様には見えないんだがな」

バシャードさんは馬車を進めながら不思議そうに質問してきた。

「小銭稼ぐ単純労働ならできると思う。どうしてあそこにいたんだろ?」

ステータス表示は「状態:健康」なので単純労働はできるだろう。やる気はないけど。

「ま、記憶なくても平気だし。それよりも手持ちがほぼ無いので金策考えないと」

「おお?強いな坊主」

記憶喪失設定めんどくさくなってきたぞ。ぼろが出る前に話を切り替えなければ。

「この犬の名前何だったんだろ?とりあえず犬の名前考とくか」

それっぽく名前を付けなければいけない言い訳をしながら、荷台に振り向いた。事実名前がない。

見た目は黒いハスキーだ。性別は不明。

黒をイメージする。ペットの名前はお菓子や甘いものが定番である。導き出された答えは・・・。

「キミは『あんこ』だ。これからよろしく」

フェンリルは俺の言葉を聞きながら。了解とでも返事したかのように「うぉふ!」と吠えた。

後は初期段階で必須なことを考える。ゲームなら攻撃や防御手段の確認とか、金策につながる能力確認だけどこの場ではためらわれるな。ちょっと聞いてみるか。

「バシャードさん。何か仕事紹介してもらえません?もしくは楽にお金稼げる方法とか」

「それならギルドに行って聞いてみな。仕事の紹介もだが、いろいろやってるとこだ」

「ギルド?冒険者ギルド?」

ファンタジー世界定番の冒険者ギルドきましたよ!

「冒険者ギルドってなんだ?そんなギルドしらんが。トイプの町は生産ギルドが仕切っているのさ」

詳しく聞いてみると、トイプ自体それほど大きな町ではなく、農業の町らしい。

名産は麦と芋、玉ねぎ。麦中心で芋と玉ねぎは周辺の村で作っているらしい。

畜産については、少量で牛、豚、鶏も育ててはいるが、地消する程度だそうな。

つまり生産ギルドだけで事足りるってことのようだ。

前世の食材名が出てきたので、安心感が半端なかった。

しかし異世界転生で有名な冒険者ギルドは存在しないのか?。

「魔物を狩って賞金を得るとか、商隊の護衛依頼を仲介してるところはないの?」

「そりゃハンターギルドだな。トイプには無いけどな。興味あるのか?魔物を狩る仕事に」

「お。あるのか」

「やめときな。実直に生きるのが賢い生き方だぞ」

確かに現時点では魔物を狩れるのかどうかも分からない。しかし異世界転生といえば魔物を狩らないといけない。これは必須だろ。しかしバシャードさんの言う通り。情報が集まるまで魔物を狩るのは様子見するか。でも興味はあるし、どんな魔物がいるのか聞いてみよう。

「近場にはさっきのラッド以外には、どんな魔物がいるの?」

「もうちょい南に行けば『ホーンラビット』とか『ゴブリン』なんかも出るぞ。北は『ガリム聖域』があるから魔物はいない。おかげでのんびり農作業が出来るのさ。ハンターに興味があるならトイプじゃダメだが、生きていくには困ることは無いぞ」

「考えてはみるけど、ん~。」

まぁせっかくの異世界、いろいろ歩いてみたいしね。路銀をちょい稼いで、次の町に移動かな。


そして町に向け移動している間にだいぶ日が落ちてきた。

「仕事探しは明日かな。手ごろな値段で寝泊まりできるとこしりません?」

「それもギルドで聞いてみればいいだろ。手ごろなところ紹介してくれるさ」

「それもそうですね」

「悪いな。うちじゃ無理なんだ」

「仕方ないですよ。事情もあるでしょうし」

しばらくして空が赤焼けてきたころトイプの町に到着した。


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