028_救助
あんこに懇願され、簡単に昼食を作りました。
太陽を見ることが出来たら黄色く見えるんだろうか?
ナタリーさんはべったり離れません。
ツアー客たちはナタリーさんに賛辞を送っていました。
俺はと言うと、まぁ。人並みにエロは好きだけど、メンヘラは勘弁したかった。
ぐちゃぐちゃなおぞましい愛憎劇とか、超めんどくさい話をよく聞くし。
助けてくれなかった『あんこ』恨むからな!
昼食後、冷静に考える。
歳の差十歳とか、戦国時代に普通にあったよな。
しかしだ、収入が安定しないのに奥さん?駄目だよ。
そもそも、結婚なんてまだ考えたくねぇ。
この世界に来て何もしてない。和食を諦めるなんてできない。どうしたものか。
多分ここからの脱出は簡単にできる。試してはいないが斜めに穴を掘ればいい。
壁に穴が開けられないとしても、闘技場の地面に落とし穴が作れたって事は。
最悪下に掘ってから横に穴を掘って闘技場外まで出ればいい。
空気は、魔法で何とかなるだろう。
そんなこともあって、素直に救出を待っていたのだが、ナタリーさんが壊れた。
ツアー客は、俺とナタリーさんのイベントが発生したこともあり、持ち直して落ち着いている。気分転換になった様だ。
マナススキャンをすると扉の外は十数人集まっている。
何時開けてくれるんだろうか?
そろそろ『あんこ』が夕食の催促来るかな?と考えていたころ。
定期的にマナスキャンを実行し、扉の外を確認していたら動きがあった
おおよそ五十人ぐらいの人が陣形を整えている。この時、扉前に広い空間があった意図に気が付いた。閉じ込めた魔物を撃退するために整備されていたのだろう。
「みなさん。救助がやってきたようです」
俺はあんこに騎乗し、竈とトイレを急いで更地に戻した。落とし穴は証拠に残しておく。
しばらくして扉が開き、号令と共に兵士が雪崩れ込んできた。
カッコイイなファランクス。密集体系で闘技場の中心に雪崩れ込んでいった。救助隊のご入場である。
魔物は居ないから、演習を見ているみたいだ。
ファランクスに続くのは救護隊であろうか?俺たちがいる観客席に駆け込んできた。
バリスタにも数人向かっているようだ。
「中央に大穴確認!魔物は確認できず。索敵に入る!」
ファランクスの中央から大声が響き渡る。
統率のとれた動きかっこいいな。
「大丈夫か?他の生存者は?」
救護隊の人から声を掛けられた。ので簡潔に答える。
「ヒドラは討伐しました。生存者は俺を含めて五名。犠牲者三名です」
「了解した」
救護隊の人が大声で叫ぶ。
「オレゴン中隊長。ヒドラは討伐済み生存者確保!」
その後ファランクス体系は解除され、兵士たちが、散り散りになった。念のため魔物を探しているんだろう。
念を押して『あんこ』が従魔であることをしっかり伝えておいた。
あんこにツアー客の荷物を括り付け、落とし穴について説明するために闘技場に降りる。『あんこ』とナタリーさんも付いてくる。
救護に駆け付けた兵士が一人付いて来て、背が低いおじさん兵士の前に案内された。
「無事で何よりだ。この穴の説明してくれるか?」
兵士特有の上から視点ではなく、子供相手って感じだな。
「簡潔に説明しますと。魔法で落とし穴御作って、ヒドラを落とし。焼き殺しました。」
「おまえ魔法使いなのか?」
「はい」
「しかしこの穴の大きさは・・・。」
詳しく話さない方が良い気がヒシヒシと感じるので。子供ムーブも織り交ぜて、勝手に補足してくれる事を祈ろう。
「穴の中で、炭になってるのがヒドラです。その後には魔物は現れていません。ですがマナ溜が出来てますので、また現れるかと」
「なに?マナ溜があるのか?」
何やら険しい顔になってる。
「落とし穴のところに『もやもやー』って」
「全員即時バリスタの状態を確認しろ。救護した民間人を直ぐ非難させろ」
おじさん兵士号令でいきなり慌ただしくなった。
「この落とし穴どうします?元に戻せますが?」
「いったん元に戻してくれ」
言われるがまま、魔法でヒドラの炭ごと穴を埋め更地にする。
「すごいな。とりあえず待機所に移動しよう」
待機所と言われた闘技場内で扉横の空き地に、おじさん兵士共に移動した。
「お前さんはこのダンジョンがどういう所か知っているか?」
「ナタリーさんに聞きました。詳しくはないですが」
「魔石の採掘場だ。お前さんが倒したヒドラが定期的に湧き出す。それを安全に倒すのが周囲のバリスタだ。バリスタで串刺しにして足止めして、首を一気に切り落とす。お前さんには今マナ溜が見えるんだよな?」
「はい。はっきりと」
「お前さんが倒したヒドラで打ち止めじゃないって事だろうさ。以前はヒドラが現れる周期が存在していた。確か七日だったはず。靄が見えてから三日後に現れていた」
今はボスのリポップ待ちなのかな?
「ヒドラが現れてすぐ退治しましたが、マナ溜はずっと見えてましたよ」
「周期が変わっているのか・・・とにかくバリスタの確認後、地上に出て教会に報告だな」
「教会?」
「今はダンジョンは教会が管理を行っている。昔は違ったがな。その辺は嬢ちゃんの方詳しいんじゃないか?」
そういえばナタリーさん一切発言してないな。こっちを向いてニコニコしている。
そうこう話していると兵士が駆け寄ってきて。おじさん兵士に報告していた。
バリスタの確認が終わり正常に稼働する状態だそうな。
おじさん兵士と数人の兵士に囲まれと地上に向かう。
地上で待機していたツアー客に『あんこ』が背負っていた荷物を返し、教会に向かう。
俺?ナタリーさんと共に重要参考人だそうな。人が三人亡くなっているし。
おじさん兵士によると、魔物がやったことだし何もないよ、形式だけよろしくって言われた。
ナタリーさんとの付き合い方も考えなきゃならないし。
タスクが増えなきゃいいなぁ。




