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017_ハンターギルド

ここはハンターギルドである。

横ではあんこが歯をむき出しにして威嚇の真っ最中である。

何がいけなかったのか。必然なのであろうか。目の前には二人のハンターが各々剣と斧を構え、あんこと対峙している。えーと。後のこと考えると穏便にやり過ごすことを考えなきゃならないんだが、どうすればいいんだこの状況。


時はさかのぼり、コボルトのエポックの案内でハンターギルド前に着いたところから始まる。

「ここがハンターギルドです。ジャン様の登録ですよね。あんこ様を従魔登録もされるのですか?」

「フェンリルとばれると襲われるって聞いたし。世渡りするための偽装目的にね。何か別の似たような魔物いない?」

「フェンリル様はフェンリル様なんですが・・・。怒らないでくださいね。ブラックウルフでしたらフェンリル様の足元にも及びませんが、人族ならしり込みするかと」

ブラックウルフ?ブラックドックならイギリス辺りに出没したって言われている魔犬だよな。あれの狼版?

「あんこもそれでいい?偽装目的だし、ただの犬でも俺的には良いんだけど」

『なんでもいいっすよ』

ハンターギル後の建物は総石造りで大きな両開きのドアが開いている。人の出入りはあまりない。時間のせいかな?今は昼を過ぎ、夕暮れには遠い午後3時ぐらいだろうか。しかしながら中からは馬鹿笑いが外まで聞こえてくる。これまたお約束の酒場併設なのだろうか?

「魔物を狩る仕事とか、護衛の依頼とか仕事を探すにはハンターギルドと聞いたので。あってるよね?」

「間違いはありません。でもあんこ様が仕事をする必要はありませんよ。我々コボルト一同がお世話いたします」

「それじゃいかんのよ。紐はかっこ悪いと思うのよ。それにだ、魔物を狩り、金を稼ぎ、旨いもの食って、欲しいものを買う。この一連の流れはかっこいい男のイメージそのものだろ?」

「そ、そうなのですか?」

「そうなのだ。重要なのは金を稼ぐの部分。金をもらうではなく、「稼ぐ」に意味がある。恵んでもらうとか、寄付してもらう。これは受け身の集金方法だ。それに対して「稼ぐ」はアクティブに攻める集金方法をさす」

「は、はぁ」

「でだ、俺みたいに見た目がすでに終わっている場合。努力や根性でかっこいい男にはなれない」

「それなりの見た目だと思いますが」

「お世辞はやめてくれ。それで金を稼ぐ手段だが、一般的でかつ大金を稼ぐ手段はいくつか思い当たる。もちろん自分が出来る範囲での話だ」

『主なんか熱いっすね』

「おう。まずは「魔物狩り」。これは説明するまでもないだろう。次に運送業については説明するわけにはいかないが必ず稼げる。さらには物販事業。今まで見たこともない聞いたこともないアイテムを売り出す。さらには特許取得!・・・。特許って制度あったっけ?」

「特許とは何でしょうか?」

「ま、まぁかっこいい男の第一歩としてハンターギルドにて「魔物狩り」についての仕事を学ぼうかと思う」

『わっちは、かっこいいとかどうでもいいっすが。魔物を狩るのは楽しいっすから』

「あんこ様がそうおっしゃるのでしたら」

ちょいしまりが悪かったがハンターギルドのドアから中へ入る。

中は、案の定酒場併設なのか?飲食は出来る様だが、待ち合わせや軽い打ち合わせ向けに併設されフードコートっぽい感じだ。

エポックから説明を受ける。依頼掲示板について。資料室について。カウンターについて。最後に酒場について。やっぱり酒場らしい。絶対ギルドの思惑と違うだろ。

しかし住民や利用者は酒場で定着してるから、部外者のエポックから酒場との説明されたんだよな。

とかなんとかエポックの説明を聞いていると。ガラの悪い男が絡んできた。

ギルド職員を見ると視線をそらした。他人事ですかそうですか。

「ここはお子さんが来るところじゃねえぞ。それにくせえんだよ犬ころ連れてくるんじゃねえ。聞いてんのか?」

お約束が発動した。と思ったらいきなり頭に衝撃がはしる。

あんこが反応しガラの悪い男を体当たりで吹っ飛ばす。

エポックは呆然と立ち尽くす。

俺はと言うと、痛いことは痛いのだが、げんこつを食らった感じでそれほどダメージは無い。たぶん男は小突いただけなんだろうけど、普通に攻撃されたとあんこは判断したんだろう。

一緒に飲んでいた男たちが立ち上がり、各々の武器を片手に身構える。あんこは威嚇を始め冒頭の解説となったわけだ。

手を出したのは男たちなんだが、用がない子供が来る場所ではなく、しかも従魔が入ってきてことに対しての苦情なのかなと。話し方と対処方法に問題があるだけの様な気がするので、何とも冷静に考えることが出来ている。

こういう時ってさ、ギルド職員が飛んでくるんじゃないのか?ちらっとカウンターを見ると、また我関せずのムーブで視線をそらした。まじ使えねえ。

憲兵さんはいないのか?うーむ。やっぱり自ら対応するしかないのか。

「あのぉ。殴られた理由を教えていただけません?私の従魔は主人の私が攻撃されたことに対して防衛対応したに過ぎなくてですね。さらに、皆さんが武器を構えているので、威嚇しているわけで」

何事もない感じで男たちに話しかけてみる。何か来る可能性が分かっていれば魔法でいくらでも対応できるし。さっき対応できなかったのは、この世界を甘く見ていて、注意していなかったから。良い勉強になったので特に恨むとか仕返しとかは考えていない。

「俺たちは仲間がお前の従魔に吹っ飛ばされたことに気が付いてだな。先に手を出したのはトッドなのか?」

「おいおい。どういうことだよ。お前に絡みに行ったのは見ていたが、手を出した?」

「ええ。頭を殴られましたね。多分そこの職員さんも見ていたかと思います」

殴った本人は倒れたまま気を失っている。こいつからは証言も取れないだろ。じゃあ職員は?とギルド職員を見ると。あわててやってくる。

「ギルドでの騒ぎは困ります」

おいおい。お前今頃何言ってんだ?俺らがギルドに入る前からゲラゲラ大笑いしてただろ。それは騒ぎじゃないのか?それに、絡んできたところも見てただろ。

「殴られたところ見てましたよね?嘘ついたり誤魔化すと従魔が怒りますよ。人の言葉理解できる賢い従魔なので」

ギルド職員は顔を青くしながら頷いて、男が先に殴ったことを認めた。

「というわけですので、武器を降ろしてくれませんか?それとも先に手を出しておいて、被害者を主張して攻撃してきます?それなら従魔はもちろん、私も容赦しませんよ」

伸びている男に水でも掛けてやるか。バレーボールサイズの水玉を作り出し、勢いは付けずに伸びた男に着弾させる。

「武器を向けるってことは殺すと意思表示してるってことです。ならば全力で対処するしかないのですが。理解してます?」

「魔法?ちょ!待ってくれ。あいつが先に殴ったことを知らなかったんだ」

武器を構えた男たちは、謝りながら武器を下ろす。ギルド職員はと言うと相変わらず他人事ムーブ全開で。先ほどの場所からいつの間にか遠ざかっている。

「あんこ。もういいよ。ありがと」

あんこの首筋をなでて落ち着かせる。

『奴には攻撃意志がなかったので対応できませんでした。申し訳ないっす』

ぽんぽんと軽く叩いて。問題ないと意思表示する。

「せっかく知り合いになったので。お話しませんか?」

「え?俺たちとか?」

そりゃ気まずい相手に、「お話しませんか?」などと言われたら、きょどるよな。

しかしだ、ハンターの仕事について現役っぽい奴らから情報を分捕れるチャンスを逃がすのも、もったいないだろう。

間違いなく魔物を狩る仕事には教科書は無い。実地で学べる部分が多いはず。少なくとも魔物に対峙するまでの道中などの合間に関する知識が必要なことは分かるので。現役のハンターを捕まえるこのタイミングは逃したくないのだ。

出来る限りニコニコしながら、男たちに詰め寄るのであった。

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