表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

015_コボルト

コボルトたちに案内されたのは倉庫の裏手にあり、長屋を思わせる建物であった。

あんこが建物に入れないため、建物前の庭に大きな布を敷き、あんこと俺が座って、周りを十数人のコボルトたちが囲んで座っている状態だ。

カラフルな服を着たコボルトたちが肉やら果物やらを大きな器に乗せ運んでくる。それをあんこの前に並べていく。

なんなんだろこの状態。気まずいぞ。

そうこうしていると、食事を勧められた。あんこは遠慮などせずぱくつき始める。

俺は落ち着いてから頂こう。

少し離れてところでは小声で話すコボルトは「フェンリル様の横のガキはなんだ?」とか「フェンリル様をかどわかしてるガキ」とか「ガキガキ」となんかネガティブな感想が聞こえてくる。

実際俺の体は子供だが中身は大人なので、冷静に対処しよう。スルーだスルー。


「初めまして、わたくしギドン商会長をしている『エンバ』と申します。このたびは『あんこ』様にご挨拶でき感動しております」

「こちらこそ「ジャン」です。疑問があるのですが質問よろしいですか?」

白い毛が混じるエンバさんとお互い挨拶を交わし、疑問を質問しあう。

まずはなぜ『あんこ』がフェンリルと分かったのかと問うたところ「魂に刻み込まれています」と回答された。なんだそれ?

次に、このコボルトの集まりについて聞いてみる。この場所はギドン商会の宿舎で集まっているのは従業員一同とのこと。コボルト単種族の商会なんだってさ。

そしてなんで『あんこ』に土下座してたのか重要なので確認した。あれは土下座ではなく、崇めていたんだって。違いが良くわからん。

崇める理由は過去に何度もコボルトの集落を災害から救っており、数々の伝承が残っていると。

野生の熊に襲われた所を救われたとか。

集落へ続く一本道が土砂で埋まった時、土砂を避けてくれたとか。

子供が川で水遊びをしていた時、溺れたのを助けてくれたとか。

畑で暴れる猪を追い払ってくれたとか。

木の実を取るのを手伝ってくれたとか・・・。

災害?じゃないよな。道が土砂で埋まった件ぐらいだよな。伝承するほどの事か?

余計なことは言わないでおこう。


あんこは出された食事を喜んでぱくついてる。コボルトたちはそんな『あんこ』を微笑ましく見ている。

しかし、コボルトかわいいな。

そう、かわいい系の顔立ちの二足歩行の犬。身長は1メートルぐらい。

種類はてんでバラバラで、たれ耳だったり。ノーズが短かったり。

見ていて飽きない。

『いや良いんですがね。一匹ぐらいもらっていきます?』

何を思ったのか『あんこ』が念話してきた。

手振りで『イヤイヤ』拒否の返事をしておく。


エンバさんは『あんこ』が従者をしている理由を聞いてきた。

気が付いたら横にいて。『あんこ』の体を借りて神様?がお話をしてきた事。その神様?が、『あんこ』は俺の従者だと伝えてきた事。その後、神様?は『あんこ』から去り、今の『あんこ』が残った事を大まかに説明。

ガキガキ言ってたコボルトを見ると。神様?の下りを聞いてばつが悪そうにしてたが。良くある理由も聞かずに一方的に思い込みを爆発させるタイプなんだろう。ほっとくのが吉だ。敵視されなければいいさ。

エンバさんは子供のころ、ふらっと現れたフェンリルと角ウサギを追い掛け回して遊んだことがあるらしい。

「あんこ?」

『ひと違いっす』

「あんこじゃないですって」

ちょっと残念そうな感じで笑った。

「そのくらい前の話なんですか?そうですね二十年ぐらい前になります」

その頃の両親は一台の馬車を使い、村や町を行きかう行商人で、当時は頻繁にエンバさんを残して近隣に行商に出かけていたらしい。

村に一人残しても大丈夫で、かといって行商に連れていくには少し早い。そんな年齢だった。

いつもなら村の仕事を手伝ったりするのだが、その日は理由を覚えていないが、近所の森に一人入っていた。

まるまる太った角ウサギを見つけ。どうしようかと悩んでいた。片手には小さなナイフしかなく。逃げることは出来るが、子供の体では到底仕留めることは出来ない。

そんな時に現れたのが白いフェンリル。

念話で話しかけてきた。『手伝ってやるから仕留めましょう』と

エンバさんは角ウサギに立ち向かい。見事仕留めたらしい。

角ウサギを仕留めて、有頂天のエンバさんを村の入り口まで角ウサギを咥えて送り届け、去っていったらしい。

当時の村は、日照りなどで食べ物が少なかった事もあり大変喜ばれた。

エンバの両親は、村のための食料を買い求めに出ていた。

角ウサギの肉は、村人で分けられ。飢えをしのぐ助けになった。

少し経って、狩の立ち回りが分かる様になってから、フェンリルがエンバさんに攻撃先が向かわない様に、立ち回ってくれていた事に気が付いた。

そんな優しいフェンリルに、いつかまた出会いたいと、思っていたらしい。

もうこんな歳になっちゃいましたがねと。

コボルトの寿命は四十年ぐらい。あと数年で仕事も引退し村へ帰る。

そんなところに現れた、別のフェンリル。

今度はエンバさんがお礼返しがしたいのだそうな。

こっちの方こそ、伝承に残す内容な気がするんだが。

どうもコボルトの感性がわからん。

狩りを遊ぶと認識するのは、狩猟本能のなせる業なんだろうな。遊んだ話じゃなかったよ。


俺は今後精神的に多大な影響をおよぼすであろう食べ物と食材について質問しまくった。

カレー、てんぷら、唐揚げ。どれも知らないらしい。そもそも油で揚げる調理方法を知らなかった。

調味料については、ギドン商会が食料メインの商会とのことで、商会長のエンバさんは、なかなか詳しい。醤油、味噌について聞いたことは無い。カレーのスパイスについてはレッドペッパー(唐辛子)の存在確認。商会で少量取り扱っているらしい。後でプレゼントしてくれるとのこと。

あとは商会では現在扱っていないが『ワインビネガー』が入手可能らしい。ワインビネガー、果実酢。つまり穀物酢も作り出せる可能性があるわけだ。酢酸菌が存在する。なかなかうれしい情報である。

麹菌が確認できればなぁ。味噌、醤油、日本酒とか見つけられる可能性もあるんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ