014_港町ビメリュス
港町ビメリュス。王都に最も近い中規模の漁港である。
近くには大規模の貿易港があるが、このビメリュスは魚の水揚げや食料の運搬に使用されている。
王都に近いこともあり、憲兵も巡回しており治安はかなり良い。
元々は小さな漁港であったが、漁港の若者が遺跡を発見し、地主の商人が調査を行ったところ。ダンジョン化しており、ダンジョン産の魔石で成り上がったのは有名で、その商人が熱心な教会信者だったこともあり、教会を建て奉献したことも有名。
そのダンジョンの元になったマナスポットは枯れ、魔物が発生しなくなり。今では観光地化している。
教会の方は、王都から近いこともあり、信者が途絶えることのない巡礼地となっている。
「あれがビメリュスか」
俺たちは現在道から少し外れ、町が見渡せる丘の上に立ち町の全貌を眺めていた。
町の中心に大きな教会らしき建物と、大きな港が見える。
城壁で囲まれた区画もあり、恐らくは貴族とか金持ちが住まう場所なのだろう。
俺たちとが来た道と別の、町から西に向けて伸びる道には、商隊らしい荷馬車の群れが並んで出ていく。恐らく王都へも向けての車列だろうか。
町の全体像を確認してから道に戻り、町の入り口に向かう。
町の入り口には屋根のない門があり、すぐ横には詰め所らしき建物が見える。門には憲兵が立っており、こちらを見ている。
俺はあんこに騎乗しゆっくり近づく。
「狼?それともでかい犬?坊主の従魔か?」
「はい。種類はわかりませんが。昔からの友達です」
「ふむ。町で暴れたら、飼い主のお前の責任だから注意しろ。それと従魔であることが分かる様に首輪なり目印を着ける様に」
「町の中では、鞍を付けたままにしますが、それで大丈夫ですか?」
「鞍か。良いだろう。お前一人か?」
「孤児なんです。親はいません」
憲兵はそれ以上話はせずに、手で入って良し的な合図をし木の椅子に座る。
こっちの道からやってくる人は少ないのだろう。一日中立ってることはない様だ。
門をくぐり、町中に入る。道はいきなりT字路になり、町が入り組んでいる感じがはんぱない。
都市計画とかそんなものは無いのだろう。とにかく港を目指して進むとしよう。
あんこにゆっくり歩くように伝え、道なりに進む。
しばらくして荷下ろし場と倉庫が並ぶ場所に迷い込んだ。
トイプからの流通の道を道なりに進んだら、そりゃ荷下ろし場に着くよな。
ならば港も近いだろうし先に港を見てみるか。
「あんこ。魚はいける口?」
『食いでがあるでかい魚はいいですね。川魚は小さいのが多くてあんまり好きではないっす』
「でかけりゃいいのか?」
『魚はあんまり食ったことないんすよ』
「そゆことね」
俺たちは他愛のない話をしながら倉庫街を進む。
ちらちら建物の隙間から海が見えてきて、まもなく港じゃなかろうかとなった時。いきなり目の前に土下座する子供ぐらいの毛むくじゃらが3匹現れた。
「ふぇ。フェンリル様で間違いないでしょうか?」
「私共はコボルトの者です。フェンリル様が顕現なされていたとはつゆ知らず。ご挨拶が遅れて申し訳ございません」
なんか始まった。確かにあんこはフェンリルだ。アリシアさんは子供って言ってたが。
子供かどうかは今は関係ない。なんでフェンリルって分かったんだ?
今まで『あんこ』は犬とか狼とか言われてたはず。
近い種族だと分かることがあるのだろうか。コボルトは犬系の種族だったはず。
このまま道のど真ん中で羞恥プレイは勘弁したい。
「場所変えない?こんな道の真ん中で土下座されても困るんだが」
「貴様はフェンリル様から早く降りろ!」
「人間ごときがフェンリル様にまたがるなど、ふざけたことを」
えぇ?攻撃してくる気配は無いが怒っているので、とりあえず素直に降りとくか。あんこから降りてコボルトを見る。
立ち上がり、俺を非難している服を着た2足歩行の犬だ。
この世界に来て異種族初めて見たよ。この後どんな異種族を見る機会があるのか楽しみではある。
とにかく状況が分からないので、せめて道のど真ん中じゃなく端によって話しをしたいんだが。
「あんこ。道端によろうか。彼らも付いてくるだろ」
『そうっすね。良くわからんすが、とりあえず移動しますか』
あんこと道端に移動すると、コボルトたちはわめきながらついてる。
「いきなりああだこうだ言われても、どうしたらいいのかわからんので、とりあえず自己紹介でもしてみない?俺はジャン。こっちはあんこ。君たちが言っていた通り『あんこ』はフェンリルで、詳しくは言えないけど俺の従者だ」
あんこがフェンリルとわかる時点で、ある程度の誤魔化しは効かないだろうと神様の指示で従者になったことは伝えずに、あんこが従者になっていることだけ伝える。
コボルトたちは目を大きく見開きあんこと俺を交互に見て、小声で相談し始める。
単純に様付けしている相手が従者?。その主?って感じかな。
「す、すみません。ジャン様ですか。ご無礼をお許しください」
「俺もいまいち理解が追い付いていないので、どこか落ち着いて話ができるところないかな?」
「ご案内します」