013_探知魔法
翌朝。目が覚めるとともに周囲を確認する。うっすらと霧が立ち込め、ほんのり肌寒さを感じる。
まだ誰も起きてはいない様だ。
夜は何事もなくぐっすり眠れた。熊とか狼とかいないんだろうか?いまさらながらあんこに聞いてみる。
『鹿っぽい気配はあったっすよ。すぐ逃げて行ったっすが』
「肉食の獣ってわかるの?」
『なんとなくですが、気配が違うっす』
小声で雑談をした後、竈に薪を入れ火をつける。やがて火が大きくなり安定したところで薬缶を取り出しお茶の準備をする。
あんこも動き出す。トイレ?周囲を確認するのだろうか森に入っていった。
あんこ専用ごはん鍋に水を入れて、竈前に腰を下ろす。
お茶が出来上がり、あんこも戻ってきたころ。他の眠っていた者も起きだす。
「おはよう。坊主早いな」
「おはようございます。いつもこんな感じなので」
御者をしていた男は朝食の準備を始めるのだろうか。水の入った鍋を竈にのせる。
俺は朝飯は出されたら食べるが、基本は食べないのでお茶だけである。
お茶を飲み干し、竈に集まっていた人に先に出立することを伝える。
「朝飯はいいのか?少し分けてやるぞ」
「朝は食べないんですよ」
「そんなんじゃ、昼までもたないだろ」
「慣れですかね平気なんですよ。それじゃお先です」
おたがい軽い挨拶を交わし、あんこに騎乗してその場を後にする。
野営地を出てまもなく、あんこが立ち止まる。
『主。ちょっと先に猪かな?が居るんすが、狩ってきていいっすか?』
「猪?いいけど」
「すぐ戻りますんで」
俺があんこを降りると。あんこは道を外れ森の中に飛び込んだ。
待っている間に攻撃魔法のバリエーションを考えてみる。
火と土系は試したし、水系を試してみよう。アイスボールとかやってみるか。
ファイヤーボールの氷版である。ベルトポーチの魔石を意識しながらイメージ。氷の弾が少し離れた場所に着弾し周囲が凍り付く。木の幹は霜が付いたように凍り付いた。
どのくらい冷えているのか分からなのでちょっと怖い。動物実験が必要だな。
次にエアブレードは木の枝を切り落とすことが出来た。
照明魔法とかも難なく使用でき、魔法をかけた草が光っている。
後は試しておきたい治療系の魔法。傷を治すヒーリングとか、病気や毒を治すキュア系。どちらも早めに実験しておきたいところ。とは言え自傷や自ら毒を摂取するのもねぇ。
それじゃ探知魔法とかできるのかな?レーダーとかソナーみたいに、音波とか電波とか、跳ね返ってきた物とかを感じ取れれば良いはずで。波長を変え、戻り時間を合わせれば立体的に分かるようになるんだろうけど、これも宿題かな。
しばらくすると、でかい猪を咥えて戻ってきた。
『後2匹いるんで持ってくるっす』
「でっか!待ってるよ」
その後あんこが持ってきた猪をインベントリで肉と皮に解体する。魔石は無かったので、魔獣ではない様だ。
「今食べる?」
『昼食でいいっすよ』
「OK」
肉と皮以外は森の中に投棄した。昨日狩ったホーンラビットの不燃物と共に。
そして再びあんこでの移動開始。
「そういえば、あんこはどうして鹿とか猪の気配ってわかったの?」
『なんとなくマナの流れというか、違いが判るっす。猪はこんな感じとか』
「マナを感じ取る?」
『そこの木の上に居る栗鼠も、周囲のマナとは違いがあるんすよ』
あんこが立ち止まり、木の上に居る栗鼠を眺める。
俺も葉の陰からチラッと動いたのをやっと見つけた。
『目で見るんじゃないんすよ。気配を感じるんす』
んなこと言われてもな。そもそもマナがわからんし。
『主は魔法使えるし、マナの違いも分かるはずっす。とりあえず目をつぶって栗鼠を感じるっす』
言われるがまま目をつぶる。マナって何ぞや?とか考えながら、栗鼠が居たあたりに意識を集中する。
なんかもやもやしてきた。サーモグラフィー画像っぽい栗鼠の輪郭が!しかもズームしている感じ。
分かったのか?これは・・・。
「なんとなく気配感知出来るようになったのかも?」
『それじゃ、移動中訓練していきましょ。わっちが動物見つけたら、止まりますんで何が居るか当てるっすよ』
「了解」
その後何度か立ち止まり、動物当てクイズを実施。ネズミ、栗鼠、ホーンラビットなどが分かる様になり。昼前にはビメリュスに到着した。もちろん見つけたホーンラビットはインベントリで肉になった。