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012_角ウサギ

市場での買い物を終え、俺たちは急ぎトイプの町を後にした。

あんこに騎乗し一路南の港町ビメリュスに向け、馬より速い速度での移動だ。

馬車で2日とのことなので、このペースなら明日の夕暮れ前には間違いなく到着するんではなかろうか。

途中、路上から確認できたラッドを無視して先に進む。

畑、草地、森と周囲は変化し、昼頃に道端で休憩の傍ら昨日購入した肉串をぱくつく。

焼き立てアツアツのままだった。やっぱりインベントリ内は状態保存もしくは時間経過しないのかな?

肉串を食べ終えるころ。あんこがにじり寄る角の生えた巨大なウサギに気が付き、念話で教えてくれた。

ウサギならストーンバレットあたりで行けるかな?

教えてくれた方向に気取られないように目だけを動かし、ウサギを視界に捉え、ストーンバレットを起動する。

パッ。空気が割けるとこんな感じ?といった音と共にウサギが跳ね飛んだ。うまく当てることが出来たようだ。

確認しに行くと頭がかち割れた角が生えたウサギが横たわっていた。

「あんこ。これただのウサギじゃないよな」

『ホーンラビット。通称『角ウサギ』っす。ウサギで間違いないっす』

「アルミラージか?俺の知ってるウサギじゃないな。角があってデカいよこれ」

そう異世界だから角ぐらいあるんだろう。だが子豚サイズのウサギって前世でも居たのかもしれないが、違和感ありまくりだ。

さくっとインベントリに回収し、ホーンラビットを肉、毛皮、魔石、ついでに角に解体する。

角と毛皮はあんこの鞍に括り付けた、命名『討伐証明ズタ袋』に収納しなおし、とれたて魔石(極小)はベルトポーチに入れる。

あんこに休憩終了を伝え、港町ビメリュスに向け移動を開始する。

途中、荷馬車とすれ違うが。気にせずあんこを走らせる。木々の切れ間から日が傾いていることが確認でき、そろそろ野宿場所を探そうかと考えだしたころ、道端に空き地が広がっている場所にたどり着く。

広場には竈跡もあったので再利用しよう。

「丁度良さげな場所だし。ここで野宿するか」

『了解っす。晩御飯は角ウサギっすか?』

「市場で買った肉もあるけど、角ウサギ食ってみるか。ウサギの調理方法わからんが」

『あっちは、そのままかぶりつくので問題ないっす』

ナイフでもも肉だけ切り分け。残りをあんこ専用ごはん鍋に入れ差し出す。

調理をする前に竈に薪を入れ、魔法で火をつける。

とりあえず、生肉はぶっ叩いて筋切り?が基本のはず。

というわけで、まな板を取り出しナイフのブレードバックで叩いてみるが、全然叩けない。なにか他にぶっ叩けるものは無いだろうか?インベントリを検索するが、見当たらないので作ることにする。

周囲の棍棒を作るのに適したサイズの木を収納し、インベントリ内で棍棒を作成する。取り出すと、見事なまでのThe棍棒の出来上がりである。

棍棒を肉に振り落とし、面積が倍になるぐらいまんべんなく叩き潰し、塩、乾燥ハーブを適当にまぶす。

市場で買った玉ねぎを、くし切りにする。輪切りでもいいのだが、鉄串が太いので、刺さりにくいのでは?と、くし切りをチョイス。

ちょうどいいサイズに肉を切り分け、鉄串に肉、玉ねぎを交互にぶっさす。これでシシカバブーの下準備の完了である。

ほどよく熾火になる部分が出来たので、まだ燃えている薪を寄せ、熾火の部分にシシカバブーをセットする。

あんこは肉を食べ終えていたので、ごはん鍋を濯ぎ、水を入れてやった。

さらに薬缶を取り出し、お茶を沸かすことにする。

焼き上がりを待ちながらしばらくすると、南から馬車がやってきて、俺たちの前に停車した。

馬車からは御者の男と、乗客の男2人と女一人が降りてきた。御者の男が声を掛けてくる。

「坊主。俺たちも竈使っていいか?」

「良いよ。もうすぐ肉串焼きあがるんで」

「助かるよ」

御者の男は、馬車の中から鍋やら箱やらを降ろし始めた。

他の乗客は各々体をほぐしたりしている。俺は焼きあがったシシカバブーと薬缶を回収すると、竈から少し離れ、新たにやってきた4人に場所を譲る。

彼らはやがて竈の周りに腰を下ろし、御者は調理を始め、他の者は談笑を始める。

焼きあがったシシカバブーは、食べることは出来るが、旨いというほどのものではなかった。そういえば肉って熟成期間って必要だった気がするが、ウサギ肉はどうなんだろ?そもそも食ったことないからなぁ。

食べ終えた後。お茶を木のコップに注ぎ、インベントリから道端で拾い集めた枯れ木を持って、彼らの話に参加することにする。

「焚き木は足りてる?話に参加してもいい?」

「うん?おお、坊主ありがとうな」

竈横に焚き木を置いて、空いているスペースに座る。

「あの、でかい犬は坊主の連か?」

「うん。あんこっていいます」

「犬より狼って感じだが、魔獣なのか?」

「よくわからない。小さい時から一緒なので」

「ふ~ん。大人しそうだし、気にする必要もないか」

あんこは食事後、伏せて目を閉じ身動きをしていない。

「ちょっとお聞きしたいのですが。皆さんは、ビメリュスから来たんですよね」

「ええそうよ。私たちは親族の法事を終えてトイプへの帰り。君は?」

「仕事を探しにトイプに行ったんですが、魔物を狩る仕事がしたくて。引き返しています」

「あー。トイプじゃラッドしか出ないからな。でも坊主にゃちょうどいいんじゃないか?」

「あんこが居ますので。それに強くなりたいのに、ラッド相手じゃ」

「ラッド駆除してくれると助かるんだがな」

「そうね。私たち農民の敵ですし」

「畑が奴らに荒らて困るが、俺らでも相手できるしなぁ」

「すみません。ビメリュスでは何か変わったことありました?」

「何もないな。平和なもんさ」

「ビメリュスじゃないが、ラグニッシュの南にダンジョンが見つかったって話を聞いたな」

「ああ、聞いた聞いた。でもあの辺りならすぐ討伐されるだろ」

「ダンジョンですか?」

「魔物が狩りたいならダンジョンにも興味あるか。俺は興味がないから聞き流したんだよ。ビメリュスのハンターギルドででも聞いてみな」

異世界名物ダンジョンか。どんな感じなんだろ?人工感丸出しで石造りの壁で迷路が出来ているとか。鍾乳洞っぽく天然の迷宮。はたや、その場所がダンジョン認定されているだけで魔物が異常に多く闊歩しているとか。

だがしかし、あくまでついでだな。食の充実が最優先。せめて味噌か醤油を見つけないと・・・。

世間話を終えあんこのそばで毛布にくるまって眠りにつく。

あんこは眠っていても周りの異常に気がつけるとのことなので、気にせず就寝する。

あんこ様様だ。

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