109_ビメリュスにて
海上での生活が終わりを告げた。
ビメリュスに無事寄港したのである。
結局『かご罠』を使う様な船が止まる事が無かったので、どうしようかと考え中。
学園の休み明けまでは後十日と言ったところか。
ナタリー達に相談することにした。何事も情報共有は重要だ。
些細な事だからこそ、話しておくことが重要なのだ。
と俺は思っている。女性は自分が知らない事。つまり隠し事と判断する人が多かった。
俺の女性経験はそういう人ばかりだったので、特に注意している。
もちろん。そう言った考えじゃない人も居るだろうけど、話したからと言って何も不利益にならないしね。
家族はビメリュスに二日ぐらい滞在は問題なし。
アイさんは先に王都に戻る事になった。
お店をいつまでも休んでは入れれないと。俺に借金返済しなきゃと。
正直お金はどうでも良いんだけどね。
と言うわけで、早速ギドン商会のエンバさんに面会だ。
『あんこ』と共に応接室に通される。
「この度はお世話になりました」
「いえいえ。こちらこそありがとうございます。『あんこ』様のご本尊を目に出来た集落からの感謝の言葉が途絶えません」
「いやいや、いろいろと面倒な事をお願いしましたし。こちらこそお礼をさせてください」
「いえいえ。ジャン様が集落にもたらした多大なる知識は、我々コボルトの生活をさらに豊かにさせてくれる知識でした。今後もお付き合いのほどよろしくお願いいたします」
「いやいや。大したことはしておりません。蟹にしろ牛にしろ。自分が欲したことで、それにブラックウルフの搬送までお願いしちゃって、申し訳ありません」
・・・
終わる事がない感謝の言い合い。
そこに通されたのがコボルトにお願いしていた、ブラックウルフ達だ。
『主様。お久しぶりです。このコボルト達には手厚く接待されここまで送り届けられました。人族が多く群れているこの場で、どの様なご命令が待っているのか期待しております』
パパウルフが俺に頭をたれて、挨拶してきた。
『あー。うん。これからよろしくな。それとあの後、従魔が増えたので後で紹介するよ』
『了解いたしました。我々は別室にて待機いたします』
パパウルフ。ママウルフ。サーディとスエが俺に頭を下げて退出した。
本当に大家族になった事を実感するが、今は時間が惜しいので用件をエンバさんに伝える。
まずはホルスタイン達について。
もう少し輸送は待って欲しいと伝える。
こちら側で牧畜出来る環境が無いので、王都に戻ってからの手配となるためだ。
この件についてはエンバさんとも相談しながら詰めないといけない。
コボルトとしても新事業として参加したいと言ってきたので、願ったりかなったり。
それなりに大きな土地を開墾して牧場を作る事になる。
早く新鮮な冷えた牛乳が飲みたいところだ。
次が、俺たちが乗っていた船に設置したトローリング設備について。
基本譲渡で問題はないが、いくばくか魚が欲しい時に優先的に譲って欲しいので、それを条件にしての譲渡契約を結ぶ。
こちらは何の問題もなく。むしろ感謝と別の船にも設置できないかの相談された。
樽型リールは魔道具なので、利権問題が発生するため、即答が出来ない。
学園に戻り次第、魔道工学講師のアルザード・ヘッケルサン男爵に相談し設置する方向で進めようと思う。
最後に『かご罠』についてだ。
試験的な内容を近海で行いたいので、漁船を手配できないかお願いしてみた。
すんなり了承され、その場で使いのコボルトが部屋を出て行った。
漁船の手配が終わるまで、エンバさんと雑談をする。
俺が探していた米について。
黒米だけど実物を見せて説明する。
こんな形の穂から籾が獲れる事。色違いで見かけたら入手のお願いとか。
昆布についても忘れずに伝える。
多分もっと北の海に生える海藻である事。嵐の後に良く浜辺にうち上がるだろうとの推測も含め入手のお願いをする。
もちろん干物の様に乾燥させて持ってきてほしいと。
生だと腐るからな。
最後に『にくうし』の一頭買いだ。今回の旅で『あんこ』が好んで食べていた事から、今回は三頭ストックしておくことにした。
こちらは明日には準備できるとのことだ。
重要な要件はこんなところ。
後はブラックウルフ達とエンバさんの前でおしゃべり。
俺がブラックウルフと話せることは内緒とエンバさんに口止めして、コボルトの集落での暮らしについて各々が経験したことを伝えあった。。
しばらくして、漁船の準備が出来た様なので、早速設置に向かう。
ブラックウルフ達は、俺がビメリュスを出発するまで、このままギドン商会のお世話になってもらう。
俺はエンバさんに挨拶をして、コボルトの使いの後を追う。
桟橋に着くと、『あんこ』が乗船しても問題ない大きさの漁船が用意されていた。
この船の船員らしき人に声を掛ける。
「こんにちは。ギドン商会の紹介でやってきたジャンと言います。船長にあいさつしたいのですが」
「俺が船長だ。金を払ってくれるならとやかく言わんが。今から何をするんだ?なんか実験とか言っていたんだが」
「はい。ちょっとした実験です。潮の流れが緩い場所に案内願います」
俺はビメリュスに上陸してすぐ、胸に魔道学園の胸章を付けておいた。
魔よけの如く、トラブルのエンカウント率がかなり下がるので重宝している。
その胸章を見た船長は何も言わず、乗船する様に言ってくる。
俺は素早く乗船し、船長の案内で、潮の流れが緩やかな海域に案内される。
先ずは水深を測り『かご罠』のロープの長さを決める。
一つ一つの籠の間隔は五メートルぐらいにして、数珠つなぎにする。
最後に浮き樽を作って結び付けて『かご罠』を海に沈めた。
もちろん。餌も忘れずにしっかり入れておいた。
血肉滴る内臓をたんまりと。
ステップドラゴンが未解体でたんまりインベントリに入っているので、そこから頂戴した。
浮き樽には『魔道学園在席のジャンによる実験中』とナイフで文字をしっかり刻み込み。盗難防止としてみた。
見張りを付けておくほどの事じゃないしな。
文字が読めるなら盗みはしないだろう。
船長曰く、文字は読めないが、文字が書けるやつが何かしている。と言うだけで、警戒するから大丈夫だろうとの事だ。
この世界は識字率が低いので、文字が使えるのは金持ちか、お偉いさん。
つまり、文字が書かれている訳の分からない物には近づかないのが一般的になるわけだ。
船長に今日は引き上げて、明日同じ時間にこの場所に来ることを伝える。
船長は、今日と同じ料金で了承してくれた。
何をしているのか聞きたそうだったけど、坊主だったら恥ずかしいし、明日の結果をお楽しみにしてもらおう。




