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108_タスク確認

新たに増えた能力から、品種改良には別の古代米も必要な事が分かってしまった。

つまり、米探しはまだ始まったばかりという事である。

ちょっとアイさんと話をしておこう。

和食を食べたい。そんな共通の認識を持つ。アイさんと課題を整理しておこうと考えたのである。

さてどこにいるかな?

プランターなどインベントリに仕舞って、船の甲板に出る。

外は日暮れ前の、のどかな時間帯。

風も無風に近い穏やかな潮風で心地いい。

海面も凪に近く、船がゆっくり進むことによる風なのだと分かる。

コボルトの水夫達もまばらで、多分夜に向けて仮眠をとっている者が多いのだろう。

そんな甲板の後方に、空を眺めているアイさんが居た。

声を掛けて近づきながら、何を見ているのだろうと、俺も空を見るとパレットが旋回していた。

「パレットは何をしているのですか?」

顔を空に向けたままアイさんは答える。

「見張りでしょうか?小魚の群れが見えるそうですよ」

イワシかな?イワシは普通にこの世界でも買えるからどうでもいいや。

目的である今後のタスクについて話を切りだそう。

「良い事と悪い事どっちから話を聞きたいですか?」

「え?突然なんですか?でしたら悪い方からでお願いします」

話を聞こうとアイさんはちょっと身構える。

「この旅で手に入れた古代米ですが。どんなに頑張ってもあの古代米だけじゃ前の世界のお米の味にはならないんです」

「やっぱりそうなんですね。なんとなくそうなんじゃないかとは思っていました」

「品種改良って知ってます?」

「どうするのかは知りませんが。品種改良をして前の世界の美味しいお米が出来たことは知ってます」

「その品種改良には、元になるお米の種類が複数必要なんです」

「そういう事ですか。美味しいお米が食べられるのがまだまだ先の話という事ですね」

なんだそんな事かと。そんな感じに軽く言葉を返してきてくれた。

「はい。すごく期待していたのでしたら悪い話ですので。次に良い話ですが、俺の能力で食べる分の古代米の量産が、すぐできる事が分かりました」

インベントリから先ほど実験して収穫した籾を器に盛って見せる。

ラーメン丼一杯分ぐらいの量だ。

「わ。すごい量。ちょっと黒いのね」

「黒米みたいです。俺も古代米って赤い物しか知らなかったんで驚きました」

手に取ってマジマジ見ているアイさん。

「籾すりしないと駄目ね」

「籾すり?」

「籾から殻を外す作業の事ね。それが終わると玄米になるわ。その玄米を突いて白米に精米するの」

「詳しいですね」

「おじいちゃんが米農家やってて、昔の機械があったのよ。それを使って見せてくれたの。おじいちゃんからすると、孫と遊んでいたって感じなのかな」

懐かしそうに話をしてくれたが。俺のインベントリは超高性能。精米まで出来てしまうだろう。

過去に麦で製粉している実績があるので、間違いない。

「精米まで出来るのでご心配なく。ただ古代米の調理の方が問題。普通の白米とは違うのかも分かっていないし」

「そこはトライアンドエラーかな。古代米の量産が出来るなら私が頑張るよ」

おー。アイさんが頼もしい。

「了解。種籾とは別に料理研究用に量産しよう。それから俺たちの目的の和食について課題整理しとこうと思ってるんだけど」

「良いわね。盛りだくさんって事だけは明確だけどね」

笑顔が良いね。俺もつられて笑顔になるのが分かる。

「俺が王都に戻ってまず始めるのが、豆麹の発見。そして醤油、味噌の開発。これが優先事項」

「確かに、味噌と醤油は欲しいわね。出来れば日本酒と『みりん』も何とかして欲しい」

「そこまで行くと酢もできるはずだから、調味料の問題は解決出来てるんだ」

「私は鰹節かな。コボルト達が釣り上げた鰹をどうにかしたい」

「確かに出汁も重要だね」

「煮干しはずっと研究してるの。いろんな小魚を干してね」

和の出汁については全くの未着手だった案件。アイさんがやってくれてる様だ。これは助かる。

「出汁と言えば後は、昆布と椎茸。キノコは怖いから昆布を手に入れたいのよ」

「昆布って言うと北海道とか寒いところだよね。しかもこの世界の人は昆布も取らないから流通していない」

「そうなのよ。海辺に打ちあがっている海藻をチェックしているけど見つからないのよね」

昆布と椎茸か。椎茸欲しいな。万能キノコ。和食のキノコと言えば椎茸だし。

昆布は北の海に行けば手に入りそうな気がするから、コボルトの商会長のエンバさんに聞いてみよう。

こんな感じで今後の指針や課題などについて有意義な話が出来た。

その後夕食前にアイさんと船室に戻って、古代米の量産をすることになった。

プランターに泥を入れて、種をまき、インベントリで時間を進めて刈り取り、精米する。

一連の流れを、アイさんに見せて。意見交換を行う。

品種の固定化については地味な作業になるので今は行わず、ただただ量産をする。

スーパーで売っている十キロ袋ぐらいの量が出来た所で夕食の時間になる。

船上では火が使えないので、俺の作り置きの料理がメインとなる。

野菜シチューと肉串と簡単な物での夕食。

それでもコボルトの水夫たちには好評だ。

俺たちの味付けは世間一般より良いらしく、喜んで食べてくれる。

そもそも、暖かい事が特に喜ばれるのだ。

火が使えないので簡単な調理しか出来ないけど、お湯が沸かせる魔道具でも作ってプレゼントするか。

ホットプレートとか、IHコンロみたいな物。

火が付かない温度までの加熱が出来る物だと、魔石も安価な物で行けるだろう。

夕食後に早速取り掛かる。

結果的に作り上げたのがホットプレート。

肉を焼きたいだろうしな。

肉が焼ける温度を低い温度から調整していく。

肉が焼ける温度になったら木片を乗せ、燃えない事を確認する。

この作業時には、船長に横から監視してもらっている。

いくら俺たちが客だとしても、火の扱いについては、船上で自由に出来るわけではない。

そしてこの温度用のサーモスタッド用のバイメタルの作成。

温室を作っていたころの素材が残っているので、バイメタルは直ぐに出来た。

ホットプレートにサーモスタット回路を組み込んで完成である。

多分二百から三百度ぐらいの温度が出る鉄板。と土台。

出来上がった魔道具を船長にプレゼント。

見た目は一般的な炬燵。

コボルト達は身長が低いし、船の上では安定性が重要だろうとこの高さになった。

しばらくは船長の目の前での運用となるだろうが、船員たちは喜んでくれた。

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