101_作戦会議
「アイさんがこちらにやってきます」
カワウソ達に子供の拉致と無関係な仲間の紹介も兼ねて、ナタリー達に上陸してもらった。
そして現状報告。
漁村は蛭のスタンピードによって全滅した事。
コシュシの町で話が出ていた人族失踪の裏にも蛭のスタンピードが関係していそうな事。
そして、王都からカワウソの子を連れてアイさんがやって来る事。
俺が目的としている米探しは、アイさんも熱望している案件なので、スタンピードの対処をして、安全に米探しに集中できる環境を作っておきたい事。
などなど。
ナタリー達上陸前に、漁村は壊滅していることが分かっているので、遠慮なく桟橋付近を整地してセーフハウスを建築した。
流石にカワウソが入れる大きさではない。大型トラックサイズなので・・・。
カワウソにも会議に参加して欲しいので、セーフハウス前には大型駐車場をイメージできる空間を作っておいた。
これで蛭が万が一ここまでやってきても、隠れる事ができるだろう。
さあ。蛭退治についての作戦会議の始まりだ。
「一般的な蛭ってどうやって駆除するんだろう?」
議題の蛭の対処について意見を聞くことにする。
同時に俺は通訳として、カワウソ達にも伝える。
「塩水を掛けると弱るので駆除が容易になりますよ」
ミカエルが自分の経験を話す。
「どのくらいの濃さ?」
「海の水よりうんと濃いやつですね」
即死効果は無い様なので、あくまで弱体化出来るってだけか。
「私の所だと木酢液ですね。炭を作るときに出来るやつです」
ナンシーの話も弱体化か。魔物相手だとそれほど効果は無いだろうな。
『奴は皮膚から溶解液を分泌するっす。わっちには効かないっすが、普通の人族は溶けるっす』
「まじで?溶解液出すの?」
カワウソ達もそれが分かっているので、逃げの一手らしい。
『あんこ』の話では、熱に弱い事は確からしいので、俺がファイアーボールで爆散させるのは可能だろうとの事。
「いちいち探して殺すのは時間が掛かりすぎるしなぁ」
「おびき寄せてはどうですか?」
おとり?誘引剤か。蛭って何に集まってくるんだ?
「蛭はどうやって獲物を探すんだ?」
「分かりません。ただ人を的確に見つけて集まってきますよね」
「なんだろう?ヘビみたいに熱感知でもできるのかな?」
人が周囲に出している物はなんだろう?
体臭、息、熱。そしてこの世界だとマナかな?
「体臭は関係ないって聞いたことが有ります。事実ヒューマンでもコボルトでもヤマビルに吸血されます」
お。コボルトの水夫からの意見だ。
「となると、人肌程度の温度と息か。匂いは関係ないとすると二酸化炭素かな。纏めて一気に燃やせると良いんだけど」
『主。蛭って言っているのは、ジャイアントスワンプリーチっす。纏めて一気にって、どれだけでっかい火の玉作るっすか?』
うん?どういう事だ?
「ジャイアントスワンプリーチって大きさは?」
『わっちと同じくらいで、長さは倍っすかね』
おぅ。俺が一飲みされる大きさじゃないか。
つまり、纏めて燃やすとなると・・・。この湿地帯が普通に炎上しそうだな。
「ごめん。そんな大きさだとは思わなかった」
素直におびき寄せて各個撃破するしかないのか。
腹をくくるかね。
カワウソ達にも襲ってくるのか確認する。襲ってくるそうなので、手伝ってもらう事にしよう。
『あんこ』達では、この湿地帯において機動力が落ちる。
つまりこの広大な湿地帯の蛭を集めるにしても時間が掛かるわけで。
俺はインベントリで猫鈴の様な物で音が鳴らないチャームを作る。
魔石をそのチャームに組み込み、チャームを手に取り障壁魔法と持続魔法をかける。
消費するマナは魔石から供給する様にした。
「これでどのくらい障壁魔法が持つのか実験だな」
魔石のマナが切れたら魔法の効果が消失する。多分魔石を入れ替えても再発動はしないだろう。
あくまで、俺がチャームに魔法を掛けただけだからだ。
これでカワウソ達の安全を確保して、おとりをやってもらう様お願いする。
そして俺が、やってきた蛭どもを爆散させる。
これが最善策だと思う。大変だけどやり切るしかないだろう。
スタンピードだし何匹いるのやら・・・。
ラッドの時は約四百匹。それに近い数がこの湿地に居るってか?泣けてくるわ。
明日からって事で、チャームの障壁魔法の効果時間を確認しつつ、詳細を詰めていく。
纏めると、カワウソ達がおとりをし。俺が仕留める。あんこは俺の護衛。
以上。
当然一日で回れる湿地帯の部分は限られるので、俺が仕留めるポイントを毎日変えて、湿地全体を回る。そんな感じだ。
蛭は湿地から出ないらしく、この漁村を除く最寄りの人族の集落はコシュシらしいので、この湿地に立ち入らなければ被害が無かったらしい。
あれ?スタンピードなのに被害が一定地域のみにとどまっている?
もしかして、ダンジョンシードによるスタンピード?
ヤバい事に気が付いてしまった気がする。
「俺と対峙した場所辺りに、ダンジョンあったりするの?」
俺は恐る恐るカワウソ達に聞いてみた。
「あるぞ」
衝撃な回答が聞こえる。
以前聞いたダンジョンシードによる。シードダンジョンのスタンピード。
シードダンジョンが飽和状態になると、ダンジョンから魔物が出てダンジョン周囲を荒れ地に変えるスタンピードだ。
ダンジョン周囲の動植物が全て駆逐され、残されるのは広大な荒地。
多分、ジャイアントスワンプリーチはその先遣。動物と魔物を駆逐する。
その後植物がこの地から消える事になる。
さて、どうしたものか。俺が対処しなくてはならない案件ではないのは分かっている。これは国が対処する案件だ。
しかし、この湿地を収める国ホルギュカは遠く。ここから馬車で一カ月。
軍を動かすとなると早くて二カ月。
知ってしまった以上。放置するのは後味が悪くなるよな。
ため息をつき。ナタリー達に事情を説明する。
ダンジョン討伐案件が発生したと。
別に放置することも可能だよと。
しかし、ナタリー達は理解して了承する。
この世界の人達にとってダンジョンシードは宿敵。
人族の生存圏を脅かす敵なのだ。
パレットの念話や俺の念話。あんこの念話などの能力は秘匿する。
こうなると、この国の人々に状況を伝える術がない今。
俺達がやらなきゃ誰がやる状態。
『あんこ』はうきうきし始めるが、俺は真逆で気が滅入って来たよ。




