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090_大草原の中心

大草原の中央。東への道が伸びている分岐路にたどり着いた。

ここだけは二件の建物が立っている。

根性で宿を開いている。猛者の男たち。

宿と言っても、俺から言わせると、キャンプサイトを管理している管理小屋と物置なんだが。

まぁ緊急時の物資を販売しているし、大草原のガイド。治安維持?っぽ事もやっているらしいので、需要はあるのだろう。

どうせだからと、ここで一泊することにした。

とは言え、何もない事には変わりがない。

だだっ広いとの平原で、唯一人が集まれる場所と言う認識でしかない。

待ち合わせ場所的な感じだ。

ここでは他の客と固まっての夕食となる。

長旅で人と接触する機会がほぼ無いので、殆どの人が、話をするのか恋しいと感じるのだろうと推測する。

それに、食事だ。割高だが町で食べるような料理が食べられる。

ここの住人の男料理なので、武骨料理なのはご愛敬。

旅には携帯しやすい食料と制限が掛かるため、干し肉、乾燥野菜。そんなものばっかり食べる事になる。

しかしここでは、定期的に長期保存が可能な根菜や塩漬け肉。リンゴなどの果物も食べる事ができる。

肉に関しては、ここに住んでいる猛者が、たまにガゼルやインパラを狩ってくるらしく、生肉を調理して食べる事ができる。

しかしだ。俺からすると味がなぁ。

獣臭いのよね。常食するにはちょっと。たまになら良いのよ。

そんな料理を囲みながら、見知らぬ相手と雑談を交わす。

俺はホルギュカの王都カラッスから来たと男と話が弾んだ。

なんでもここで妖精を見たことが有り。また出会えないかと行商のついでに足を運んだらしい。

その妖精はシルフ。風の妖精である。

数年前ここから南西の石の町ハスラードからの帰り道。御者席で食事を摂りながら移動中。絡まれたらしい。お菓子は無いのかと。

菓子など食べる裕福な生活はしていない男は。少しでも甘いものとリンゴを分けてあげ、しばし会話を楽しんだ。

そうして、リンゴを食べ終えたシルフが去り際にお礼として、ちょっとした魔法を掛けてくれた。

魔よけの魔法。シルフはそう言っていた。事実今日まで魔物に襲われた事や近づかれた事もないらしい。

こっそりエール奢るついでに接触評価してみると『妖精の残り香』という特殊技能が付いていた。

魔法ではなく、これが魔物を寄せ付けない原因だろう。

多分なのだが、妖精についてはいたずら好きで、うっとおしいので近づかない。

魔物全般の見解なのだろうと俺は考えに至った。

人の口伝とかでも、いたずら関連の情報しかないんだよ。妖精については。

この男にとっては運よく、いたずらされなくて、シルフの見た目が可愛かったから良い印象しかないんだろうな。

他にも興味深い話が聞けた。これから向かう予定の『アデルシアン湿地帯』についてだ。

なんでも、今は立ち入るべきではないと忠告と共に。

立ち入る人族が全て行方不明となっており、ハンターギルドで調査してはいるが原因不明。そろそろ国が大掛かりの調査を実施するのでは?と。

神様。イベント発生ですか?選択権があるうちに考えておこう。逃げるか否かを!

しばらくして、ここで生活している男が話しかけてきた。

余っていて、売却可能な物資は無いかと。

話を聞くと、本格的な冬の前に備蓄したいからと。

こんな不憫なところに住まなければ、物資に困る事は無いのでは?と聞いてみたら、自由を満喫できるここが良いと。

日常的に貴族におびえて暮らすのは性に合わないってさ。

ここにも貴族は来るんじゃ?と聞いてみたら。笑ってこう答えた。

こんな辺鄙なところに、わざわざやって来る貴族は、まともな貴族だってさ。

ヤバいのは、不自由してまで大草原を見に来ない。

そういう理屈らしい。たしかに分からんでもない。

ちょっと気に入ったので。無料でいくらでも手に入る『薪』を売る事にした。

インベントリには現在大木がそのままの姿で、十数本収納されている。

既に加工済みの薪を、大樽二つぐらいの量だ。

男には、念のために馬車に積んである、予備の薪と言っておいた。

やはり、薪はあればあるほど良いらしく、喜んでくれた。

ここでの調理は基本。魔道具による加熱調理らしい。

暖房も魔道具。

しかし薪の需要は、それでも無くなる事は無いとの事。

ついでにシルフについて聞いてみた。

たまに見かけるらしい。

しかし、シルフも男たちに近づくことは無く。うまく共存できている?のだそうな。

見かけ次第。追いかけまらしていたら、近づかなくなったんだってさ。

それって、シルフから敬遠されてるだけなんじゃ?うざいってさ。


お茶を飲みつつ、焚火でカイロ用の丸石を焼く作業を淡々と繰り返す。

焚火や竈に火をつけた時など、よくやっている作業だ。

魔法でどうにでもできるけど、時間をつぶすには丁度いいのだ。

現在ここは安全とばかりに『あんこ』とブラックウルフ達はお出かけ中。

残っているのは人族とレイジングホース。馬二頭。

「ねえ。いい加減に名前つけない?」

ん?ナタリーが丸石を焼いている俺の横で声を掛けてきた。

「名前?」

「そう。ブラックウルフとレイジングホースの名前」

「あれ?俺が決めるの?」

「飼い主が決めなくてどうするの!」

こちらの世界の常識。名前は飼い主や親が決める。

主従関係が発生した場合も同様。

これには驚いた。俺はミカエルとナンシー二人の改名ができたらしい。

やらないけどさ面倒くさいし。

名前を決めなくてはいけないのは七頭。

ブラックウルフ六頭。レイジングホース一頭の合計七頭。

俺一人じゃ無理だ。よって全員に名前を募集することにする。

もちろん俺も考えるけどと、言い訳しながらお願いすることにした。

ヘルミナもやってきて、こっそりとアイさんお手製のクッキーを食べてお茶を飲んだり。まったりとした時間を過ごす。

夜が更け、頃合いになったころ。俺は寝床に潜り込み意識を手放す。

もちろん女性陣と別。キャンプサイトの野外タープの下でだ。

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