蛇足『痛み』
とある夜、私は酷い腹痛と吐き気で目が覚めた。
理由? 検討はついている。
十中八九、山で飲んだ水が原因だろう。
日本生まれ日本育ちの私に、衛生的でない水は合わなかったらしい。
グルグルと腹を刺すような痛みに耐え、嘔吐し、体感では二時間ほど経った頃に痛みが落ち着いた。
地面の吐瀉物を片付ける元気もなく、私は泥のように眠りにつくのだった。
そんな夜、再び異常な痛みで目が覚めた。
まだ日は登っていない。
「っ……うぐ」
はっ、はっと浅い呼吸を繰り返す。
鈍く、鋭く、熱い痛みが四肢を包み込む。
あるはずのない足が、腕が酷く痛む。
義肢となった魔力結晶を外してみると、見るに堪えないほどに膿んでしまっていた。
一日に二度も痛みで起こされるなんて、今日はそういう日なのだろう。
圧迫された状態で歩き続け、傷の消毒もしないまま二、三日が経っていたのだ。
無理もない。
ぐちゃぐちゃになった断面を見る度に、あの切断された時の痛みを思い出すが、私にはどうすることもできない。
昼のうちに井戸を見つけていたので、そこまで這いずりながら向かう。
まずは傷口を洗わなければ。
「いぎっ……ぁああ!」
水にさらされる事で末端の神経から、体の中心の神経まで痛みが走る。
あるはずの無い腕を、足を抱えようとして空振る腕を見つめていた。
熱かった患部が落ち着くまで洗い続け、痛みに慣れた頃にようやく膿を全て洗い流す事が出来た。
叫びすぎて喉は枯れ、痛みにより脳がチカチカしたが、痛みはだいぶ収まった。
今後、何度も痛みに起こされる事になるのだが、そんな事は知らぬまま気絶したのだった。




