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第4話『生存』

 さて、私が最後の生存者となったわけだが。

 あの男の最期の言葉、私がやったというのはどういう事だろうか?

 私が何かしらの魔法を使ったのだと、そのような事を言っていた。

 魔法と言えば、あの半透明の文字に書いてあった魔力結晶とやら、あれも魔法の一種なのだろうか。

 朝日に照らされた青い足をじっと見つめてみる。

 今度は目に何か温かいものが循環しているのが分かる。

 

《魔力結晶 Lv6》


 視界に表示された文字は先程と同じ文字。

 触れようとしても青い手はすり抜け、文字は掻き消えた。

 ゲームのような現実的ではない現実に、頭が痛くなる。

 魔法が存在する世界ならば、ただの棒でしかなかったこの青い魔力結晶とやらも私の意思で形を変えたように思える。

 まぁ、今はそんな事よりこの先どうするかを考えなければならないのだが。


 死体を横目に馬車へと這いずるが、今は先程までの気持ち悪さも、自分が殺したという罪悪感もない。

 なぜ馬車へ? 走りっぱなしで喉が渇いたから、という単純な理由だ。

 水くらいあるだろうが……さて、どうやって登ろうか。


 足として立つには切断面が痛すぎるので、何かこう、補助的なものが腰に伸びてくれればと、そう思った所で私はよろけた。


「うわっ!?」


 足元に何かがひっかかり体制を崩したが、私は倒れなかった。

 なぜなら青い腕が腰にガッチリと固定されていたからだ。


「うわキモ」


 流石に本音が零れたが、実にありがたい。

 その青い腕の先には四本の足が繋がっており、六足歩行のような形になっている。

 そう、この形はまるで――


「虫だ」


 虫のようで実に気持ち悪い。

 まぁ、痛いのに変わりはないが、支えがあると言うだけで随分楽だな。


 ガサゴソと荷物を漁っていると、干し肉や水筒らしき物を見つけた。

 盗賊より盗賊らしいなんて思ったが、持ち主も死んでいるわけだし、ありがたく頂こう。




 私は不味い干し肉をもしゃもしゃと齧りながら今後の事を考えていた。

 さて、あっちが東と言っていたが……

 男の指した方向を見ると、獣道に近いが馬車の跡があった。

 馬車といえば馬がいる事を思い出し、ちらりと荷台から顔を覗かせると、二頭の馬が足を折りたたみ寝ていた。

 呑気な馬達だなぁ。

 流石にここに置いていくのも可哀想だし、村まで連れて行ってあげよう。

 いざという時の非常食としても役に立ってくれる事だろう。




 手綱を引きながら東へ向かってゆっくりと歩く。

 隣の馬達が心做しか嬉しそうな気がする。

 ガサガサとほぼ獣道と言っても良い道を進む。

 獣道とはいえ、道があるのだからそう難しい道のりではないだろう。


 休み休み歩いて二時間ほどだろうか? 

 足の痛みと出血による貧血で限界が近付いてきた頃に、村らしきものが見えてきた。

 だが明らかに様子がおかしい。

 というか、騒がしい?


 遠目に見ていると、大きな破裂音と共に火の手が上がった。

 動揺して馬は駆け出してしまった。

 馬から目を離し、村人たちの襲われている様子をじっと見つめていると、またあの文字が見えた。


《レッサーウルフ Lv5》《レッサーウルフ Lv5》《レッサーウルフ Lv8》《レッサーウルフ Lv3》《レッサーウルフ Lv4》《レッサーウルフ Lv6》《レッサーウルフ Lv6》

《レッドウルフ Lv2》《レッドウルフ Lv3》《レッドウルフ Lv8》


「うっ……なんだこれ、情報量が多い……」


 手でその文字達を掻き消すと、少しの間を置いて再度文字が表示された。


《レッサーウルフ 7体》《レッドウルフ 3体》


 おお、ソート機能もあるなんて便利だ。

 しかしレッドウルフ……安直な名前だが、あの爆発はアイツのせいだろう。

 村人らしき人々が食い殺されていく悲鳴と炎を、少しの申し訳なさと共に見つめていた。


 暫くすると、狼の群れは私のいる森とは反対方向の森へと進み出した。

 見殺しにした事は申し訳ないと思うが、私にあの村を助けられるような力もないわけだし……

 誰に言うでもない言い訳をしつつ、気持ちを切り替え村の探索を始めた。


 あれほど残虐な行為があったとは思えないほど静かだ。

 血なまぐさいが骨すら残っておらず、既に狼達が平らげてしまったのだろう。

 私は、生活の痕跡の残る家々を見て回る。


 目に止まったのは一つのメモ。

『おいしいごはんのつくりかた』と書かれたメモである。

 なぜこのメモが目に入ったかは分からないが、ふとした違和感があった。

 この文字は日本語ではない。


 他のメモや本も全て、全て、私に読めるはずがないのに読める。

 中でも私の目を引いたのは『かんたん魔法のはじめ方』という一つの本。


「本当に、ここは私のいた世界とは違うんだな」


 ポツリと、言葉が零れた。


 もう家に帰れるかどうかも分からないこの状況で、その現実を受け入れるための準備など私には出来ていなかった。

 だが、それを悲観して泣きわめけるだけの心もなく、目の熱さを感じながら淡々と役に立ちそうな本を集めるのだった。


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