第2話『不運体質』
目が覚めたら、森にいた。
謎の鳴き声と木々のざわめき、赤い夕日の木漏れ日が心地いい場所だ。
自分でも何を言っているか分からないし、記憶を遡っても学校に向かう途中、謎の吐き気に襲われたとかそれくらいの事しか覚えていない。
ここがどこか調べようにもスマホの表示を見ると圏外、圏外という事はここは少なくとも私の住んでいた場所からは遠い場所なのだろうか。
ぼんやりとした頭で考えるのは、誘拐されたのか、はたまた夢でも見ているのか。
不意に違和感を感じ、手をぐっと握ったりしてみる。
手足が少し小さい、というか体が小さくなっている?十二歳か十三歳ぐらいだろうか? 私は成長期が遅かったからなぁ。
現実的ではない状況に、夢だろうか? 巷で話題の異世界転生とやらだろうか? 等と考える。
それにしては黒子の位置から傷痕まで何一つ変わっていないし、引き摺る服も制服のままだ。
明らかにおかしな状況と、こんな状況に少しワクワクしてしまっている自分に少しイラつきを覚えたが……
「ぁ……?」
足元には、大きな影が――
「はっ、はっ、はっ」
私は全力で逃げている。
何から? 何からだろう。
「キュアアアアア!!」
ドスドスと走る大きな亀、だろうか。
亀ってこんなに早いのか、こんな鳴き声なのか、というかこんなにデカイものか!?
いや、そんな事はどうでもよくて、いやよくはないが!!
なんだコイツは 明らかに現実じゃない! こんなもの現代日本に生息してたまるか! そんな心の叫びも足の痛みと息苦しさに掻き消される。
この走る足の痛みは本物で、肺は痛くなるほど息が切れている。
これは紛れもなく現実だ。
私と同じくらいの速さか、私の方が少し速いか、けれどもいつもより小さな体、更には足元も暗くてよく見えない。
バランスもまともに取れない体で振り切れるわけも無く、そろそろ体力は限界どういう所で――
浮遊感。
ふわりと、体が浮いた。
この感覚は、明らかに、落ちている。
「ひっ……」
人間って、本当に驚いた時は声も出ないんだ。
まだ震える体を抱きしめながらキュッと目を瞑り、心と体を落ち着けようとする。
なぜ助かったのか?
瞼を開けて上を見上げると、沢山の葉の生い茂った木がクッションになってくれたようだった。
あの大きな亀は追ってきていないようで、一安心した所で傷の確認をする。
擦り傷を撫でながら子供の頃はやんちゃしてたなぁ、などと思いを馳せている場合ではないのだ。
私はいつだって不運だ。
だってほら、目の前を見て。
目の前にゾロゾロと姿を現したのは、下卑た笑みを浮かべた男たち。




