第10話『旅』
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「落ち着いた?」
「はい、お騒がせしました」
少し恥ずかしげに顔を俯かせる少女、フィーネは水の入った水筒を抱きしめながらもじもじとしている。
「フィーネちゃんはこの先どうしたい?」
辛いだろうが、いつまでもここにいる訳にもいかないだろうし、保護してくれる人がいるならばその人に預けた方が良いだろう。
そんな私の心境を察したのか、フィーネはポツポツと身の上を話してくれた。
フィーネはいわゆる貴族だったらしい。
それなりに力のある貴族だったらしいが、父親が流行病で他界してから家はどんどん衰退していき、最後には戦争で領地さえも奪われてしまったとか。
その後、遠い親戚の領地へ逃げる最中に盗賊に母を殺され、奴隷として売り飛ばされそうになっていたというわけだ。
節々に現れる育ちの良さから予想はしていたが、まさか貴族だったとはね。
「ご迷惑でしたよね……でも両親も死んでしまい、行くあてもなくて……」
そう言ってまた涙目になるフィーネの頭を撫でてやると嬉しそうにはにかんだ。
庇護欲を掻き立てられるその仕草は、警戒心がなさすぎて心配になるほどに可愛らしい。
「そうだ、ユーキさまはどうされるんですか?」
「私? 私は……」
そうだ、私はどうしよう。
このまま森で暮らすのも悪くはないが、黒魔法について知る必要があるのと、そろそろ手足の傷をなんとかしたい。
このまま二十歳まで生きられないと知っておきながら、何もせず死ぬというのは嫌だ。
黒魔法どころか魔法についても未だによく分かっていないし、それを知る為、旅に出るのも良いかもしれない。
「私は旅をしてみようと思うよ」
「旅、ですか?」
「うん、魔法について知りたくてね……行く宛てがないのなら、一緒に来てみる?」
旅という言葉にキラキラと目を輝かせるフィーネに、思わず私はそう言ってしまった。
少し軽率だっただろうか。
「ああ、いや、別に無理にとは――」
「行きます! 迷惑にならないように頑張ります、私!」
少しだけ足をぱたぱたとさせて喜ぶ姿は、年相応に見えた。
「私、旅なんて初めてで……はしゃいじゃってごめんなさい」
「私も旅なんて初めてだから楽しみだよ」
これも何かの縁だ。
それに、自堕落に森で暮らすよりかはマシだろう。
こうして、私とフィーネは旅に出ることになったのだった。




