表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

第9話『緑の少女』

 緑の髪をした少女は、震える体を抱えるように更に縮こまった。

 そりゃあそうだ。

 今目の前で起こった殺人は、少女にとって目を背けたくなるような惨状だろうし、手足が青い義肢の少女など不審なのは間違いない。

 ボロボロではあるが、命に関わるような怪我は無さそうだ。

 念の為に健康状態を確認してみる事にした。


《人間》

『個体名:フィーネ・ブランシェ Lv8

 年齢:12歳

 性別:女』

『栄養失調を引き起こしていますが、大きな怪我はありません』


 七歳か八歳程度に見えたその少女、フィーネは十二歳らしく、今の私の二つ下だ。

 ボロ布から覗く骨の浮き出たその体型と、足に嵌められた枷から、よほど酷い環境にいたのだと推測できる。

 これ以上怯えてしまわないように、死体をアイテムボックスに片付けてから声をかける。


「大丈夫、悪い人達はもういないよ」


 二年ぶりに出した声は掠れていて少し恥ずかしくなったが、言葉はちゃんと伝わったようで、少女は恐る恐る顔を上げた。


「あなたは……」

「私の名前は辺星憂希。憂希が名前ね」

「……ユーキさま」

「あなたの名前は?」

「フィーネ、フィーネです」


 檻と枷を外し少女の状態をみようとしたが、特殊な細工がされているのか、中々枷が外れない。

 手足に残る傷跡から、必死に抵抗したのが読み取れた。

 フィーネの掠れている声を聞き、水すら飲ませていなかったのかと、盗賊達への怒りが少し湧いてきた。

 もう殺してしまったので怒りの向けようはないが。


「村からお水取ってくるから待てる?」


 暗い顔でこくりと頷くフィーネを置いて、廃村の井戸から水を汲みに行く事にした。

 湧き水もあるにはあるが、今の状態で腹を壊すと命に関わりそうなので、なるべく安全な方を飲ませてやりたい。



 水を汲み、廃村から帰ってくると、フィーネは驚いた顔でこちらを見ていた。


「どうしたの?」

「置いていかれると、思って……」


 そう俯きながら話すフィーネは少し涙ぐんでいた。

 もう夕方になってしまったし、少し時間をかけすぎたな。


「小さい子をひとり残して立ち去るほど冷たくはないよ」


 そう言って水を渡す。

 ついでに干し肉なんかもあげればちまちまと食べ始めた。

 小動物の様で可愛らしい。


 その間、手足に付けられた枷を鑑定する。


《隷属の枷》

『使用者に逆らうことができなくなる呪いの枷です。

 使用者は既に死亡していますが、命令された事は破れません。

 黒魔法で上書きしますか?』


 なんて惨いことを。

 死して尚隷属しろと、そういう呪いがかけられた枷らしい。

 逃げるなと命令されれば、死ぬまで逃げられないだろう。

 黒魔法がどういった魔法か分からない以上、リスクになり得る行動は避けたかったが……これを見過ごせるほど冷酷にはなれない。


「? どうかされましたか?」

「いや、何も」


 不思議そうな顔で私を見つめるフィーネに少し笑いかけ、黒魔法による上書きを実行しろ、と魔力に命じる。

 魔力は枷に流れ込み、既にある魔力を食い尽くしていく。

 魔力が逆流してくる感覚が気持ち悪いが、最後のひと押しと言わんばかりに魔力を込めてやる。

 全ての魔力を上書きが完了したようなので、鑑定をしてみる。


《隷属の枷》

『使用者に逆らうことができなくなる呪いの枷です。

 使用者は辺星憂希(ほとぼしゆうき)に移っています。

 呪いを解きますか?』


 それはもちろん。


 パキッ、と小気味よい音を立て、四つの枷は地面へ落ちた。


「枷が……これは、ユーキさまが?」

「そうだよ。これで君は自由だ」

「ありがとう……ございま……」


 キラキラと緑の瞳に涙が滲んでいた。

 声を上げず、静かに泣く少女の慰め方など、私には分からない。

 分からないなりに慰めようと頭を撫でてやると、その目からは溢れんばかりに涙が零れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ