プロローグ ―存在の裂け目―
この物語は、“自分が誰なのか”を失いながらも世界を歩む、東雲 漣という少年の異世界転移譚です。
「選び直すたびに、自分が消えていく」――そんな代償付きの力と共に、彼は世界の秘密に触れていきます。
“リゼロ”のような要素や、重厚な設定の柱神たち、記憶と選択の物語を詰め込んでいきたいと思っています。
では、第一章に入る前のプロローグ、お楽しみください。
夜はまだ明けきっていなかった。
目覚ましの音も鳴っていない。なのに、東雲 漣は妙な胸騒ぎとともに目を覚ました。
カーテンの隙間から覗く空は、どこか**“黒すぎる”**気がした。
時計を見る。午前六時前。いつもの時間。
それでも、何かが違う気がしてならなかった。
通学路の駅は、普段と変わらず人で混み合っていた。
スマホをいじる者、眠たそうな学生、急ぐサラリーマン。
だが漣だけが、“音が遠く感じた”。まるで、自分だけ現実から少しズレているようだった。
そして――それは、階段を降りようとした時だった。
「あ――」
わずかな段差に足を取られた。
何度も歩いたこの階段で、何故か身体がバランスを崩す。
だが、それはただの転倒ではなかった。
重力の感覚が――消えた。
視界が回る。音が遠のく。
落下するその最中に、漣の目に飛び込んできたのは――裂けた空間だった。
歪んだ鏡のように、現実がねじれている。
そこに、白い手のようなものが伸びてきた。
触れた瞬間、脳裏に響く声。
『存在の確定者へ告ぐ。君は、選ばれなかった世界の可能性だ』
言葉の意味はわからなかった。だが、強烈な光と共に、意識が吹き飛ぶ。
――そして、次に目を覚ました時。
そこは、空に裂け目の走る、廃墟の都市だった。
地面は石畳。空気は乾いていて、けれど鼻に刺さる血の匂いがした。
遠くで吠える、獣のような――人間のような声。
「……ここは、どこだ……?」
誰にともなく呟いた漣の胸には、見たこともない黒い紋章が刻まれていた。
それが、彼が「この世界で選ばれた存在」である証だとも知らずに――。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
プロローグでは、東雲 漣の“転移の瞬間”と、その異質な導入を描きました。
今後は、彼がなぜこの世界に呼ばれたのか、そして「存在再構築」という能力の真の代償を中心に物語が進行していきます。
世界観・登場キャラ・柱の設定も順に解き明かしていくので、ぜひお付き合いください!
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