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ウワサ話のウラ話  作者: 紺堂
第5話 かけがえのないアナタへ

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双子のウワサ 余話

「「「「「「メリークリスマス!!」」」」」」


 その場の全員がグラスを合わせ、軽やかな音が室内に響いた。


 今私がいるのは須崎さんの実家のリビング。私は須崎家のクリスマスパーティーに招待され、渉と共に参加していた。パーティーと言っても小さなホームパーティーで、参加者も須崎さんとご両親、私たち夫婦、そして須崎さんの姉である麗華さんの6人だけだ。


 テーブルには某大型スーパーで購入してきたという様々なオードブルが所狭しと並べられていて、その中央には須崎さんの母である久美子さん手作りのローストチキンが鎮座しており、アットホームさを感じつつも豪華なディナーといった感じだ。


 乾杯のあと、須崎さんと麗華さんは仲良くテーブル上の料理を取り分け、久美子さんはローストチキンをいそいそとカットしていた。私も何か手伝うか、と思っていると対面で彼女らを愛おしげに眺めていた須崎さんの父・道雄さんから声を掛けられた。


「いやぁ菜瑞さんのお噂はかねがね娘から聞いておりまして、一度お会いしてみたかったのです!

 クリスマスに若いご夫婦をお招きするのは失礼かとも思ったのですが、本日は招待を受けて頂きまして本当にありがとうございます!」


 そう言って右手を差し出されたので、私も右手を差し出し握手に応える。


「お招き頂きありがとうございます。こちらこそ、家族の団らんに部外者がお邪魔して良かったのでしょうか」


 私が遠慮がちに尋ねると、須崎氏はハッハッハと豪快に笑ってみせた。


「いえいえ、お二人がいらっしゃると決まって彩花も喜んでいましたから。麗華さんにも良くして頂いていると聞いておりますし、お二人ならば我が家としても大歓迎です! どうぞ遠慮せず楽しんでいってください!」


 まだワイン1杯しか口にしていないというのに、道雄さんは随分と上機嫌だ。酔いやすい体質なのか、それともこの場の雰囲気に酔っているのか。

 当の須崎さんはといえば気恥ずかしそうに顔を赤くしながら私たちから目を逸らしていて、隣の麗華さんはそんな妹の様子をニヤニヤと笑いながら横目で見ている。そして久美子さんは夫と娘たちの様子を温かく見守っていた。


(いい家族だな)


 温かく微笑ましいその光景を見ていると、家族というのは血の繋がりだけで決められるものではないのだと思い知らされる。お互いがお互いを大切に想い合っていれば、それが家族たり得るのだろう。


(そういえば…)


 互いに想い合うと言えば、彩花さんと麗華さんのことだ。1ヵ月ほど前はショッピングモールで男性と一緒に楽しげに過ごしていた彩花さんを寂しそうな目で見ていた麗華さんだったが、今やすっかり元気を取り戻し彩花さんと楽しそうに食事を共にしている。


(結局は麗華さんの誤解…というか取り越し苦労だったわけだけど)


 そう、あの時の須崎さんは彼氏とのデートを楽しんでいたワケではなく―――


・・・・・・・・・・


「…え? 彼氏じゃない?」

「うん、多分ね」


 件のショッピングモールでのストーキング騒動があった日の夜のこと。少々モヤモヤした気分で帰宅し2人で夕飯の準備をしていると、野菜の下ごしらえをしていた渉が急に「…妹さんと一緒にいた人、彼氏じゃないと思うよ」などと言い出したのだ。


「見えたの?」

「ああ。お互いに恋愛感情の色はなくて、友愛の色が見えていたから…双方とも意識しているってことはないと思う」

「うーん、なら単に友人と遊びに行っていただけなのかしら…」


 人参の皮を包丁でキレイに剥きながら話す渉相手に、私もじゃがいもの皮をピーラーで剥きながら会話を続ける。ちなみに今日の夕飯は私の希望でシチューだ。


「2人が入った店、どんな店だったか覚えてる?」

「え?」


 そう言われて2人が連れ立って入っていった店について思い返してみる。確かシックな木目調の看板の店で、小物入れのようなものがショーケースに飾ってあったのは覚えているのだが…。


「えーと、なんだか雑貨屋さんっぽかったわよね。ちゃんと覚えてないけど…」


 私が唸りながら記憶を捻りだしていると、渉はポケットから自分のスマートフォンを取り出して私の眼前に差し出してきた。


「特徴的な店名だったんでさっき調べてみたんだ。そうしたら、これ」


 そこに映っていたのは、温かみのある色合いの木材で作られたオルゴールのようだった。写真の下には商品のキャッチコピーが大きく表示されており


「『思い出の写真を、思い出の音楽と共に―――』…メモリアルオルゴール?」

「そう。思い出の写真と音楽で世界に一つだけのオルゴールを作ろう…ってコンセプトのお店らしいね。きっと妹さん、お姉さんに贈り物をするためにあの男性に相談をしていたんじゃないかな」

「え? どうしてお姉さんだと思うの? 両親ではなく?」


 私の疑問に渉は「ああ」と頷く。


「最近、妹さんからお姉さんへの連絡の頻度が減っていたと言っていただろう? 話を聞く限り、妹さんの性格なら両親への贈り物の相談なんて真っ先にお姉さんを頼るはずなのに、むしろ連絡の頻度は減った…。ということは、ボロがでないようお姉さんへの連絡を意図的に避けていたんじゃないかと思って。まぁ、あくまで推測の域を出ないけど」

「ははぁ…なるほどね…」


 確かに、本人には悪いが須崎さんは隠し事があまり得意ではないタイプのような気がする。麗華さんとの会話中に何かのきっかけでポロっと何か余計なことを言ってしまう恐れがあるなら、いっそ連絡を絶った方が安全なのかもしれない。


「とりあえず、お姉さんには今話したことは黙っていた方がいい。妹さんが黙っているってことはサプライズでプレゼントをしたいんだろうし、お姉さんには気の毒かもだけどしばらくは黙って2人を見守るべきじゃないかな」


 諭すような渉の言葉に、私も大きく頷く。


「そうね、渉の言う通りだわ」




 それからしばらくして、麗華さんと食事に行った際にある報告を受けた。

 どうやらストーキングの際に彩花さんと一緒にいた男性は大学の同級生で、あくまで友人同士だと彩花さんから知らされたこと。そしてあの日2人が最後に入った店がオリジナルのオルゴールを制作できる店で、再会して半年を記念して彩花さんが作ったオルゴールをプレゼントされたことを伝えられた。話をする麗華さんの顔は先日のような寂寥感など微塵も感じさせない幸せそうな笑顔に彩られていた。


・・・・・・・・・・


「ありがとね、菜瑞さん」

「はい?」


 楽しかったクリスマスパーティーの帰り道。須崎家を後にした私と渉、そして麗華さんは帰りの電車に並んで腰かけていた。私達と麗華さんは家同士が比較的近いので、最寄り駅も一緒だからだ。


「ええっと、何のことかしら」


 突然の理由も分からないお礼に戸惑いながらそう聞き返すと、彼女は赤みが差した顔で微笑みながら答えた。


「彩花を尾行してた日、菜瑞さん言ったでしょ。私が彩花に対して過保護過ぎるって。最近自覚したんだけど、あれって多分私が精神的に彩花に依存してたのが原因だと思うのよね。雄一さんとの別れ話の時に荒れてた私がすぐに立ち直れたのも多分彩花の存在が支えになっていたからで、その彩花が自分から離れていってしまうのが耐えられなくてあんな突飛なことをしたんだと思う。

 そういう自分の弱さを自覚出来たのも、あの時の菜瑞さんの言葉があってこそだと思うから。だから、ありがとう」


 余程酔っぱらっているのか麗華さんは爽やかな笑顔で得意気に語っているが、聞いている私としては何だか複雑な気分だ。友人のそういうカミングアウトって、どういう顔で聞けばいいのだろうか。

 そんな私の心境などつゆ知らず、麗華さんは尚も上機嫌で語り続ける。


「いやー、菜瑞さんの言葉がなかったら私自暴自棄になって寂しさを埋めるためにマッチングアプリとかで適当に男漁りとかしてたかもしれないし、それで変な男引っかけてまた自己嫌悪して立ち直れなくなってたかもしれないわよね。ホント、菜瑞さんが居てくれて良かったわー」


 わっはっはとテンション高めに笑う麗華さんだが、内容が割とシャレになっていない。私は顔を引きつらせながら控えめにツッコミを入れた。


「それは…ちょっと極端過ぎるんじゃない?」

「そういう女なのよ、私って。…はー、やっぱり恋愛自体向いてないのかなー」


 それまでの明るさから一転して、麗華さんは寂しそうに肩を落とし落ち込んでいる。かと思えば、今度は頭を傾けて私の肩に預けてきた。


「ちょ、ちょっと」

「…ゴメン、少しだけこうさせて」


 驚くほど弱弱しい彼女の声に、それ以上何も言えなくなってしまう。女同士だし、肩を貸すくらい別にいいか…と考え、それから数分の間黙ってその態勢のまま電車に揺られていた。だが…


「…次、降りるよ」


 渉の言葉にハッと電光掲示板を見ると、確かに私達の降りる駅が間近に迫っていることが分かる。私は慌てて麗華さんに「ほら、次で降りるわよー」と呼びかけるが


「…すぅ…すぅ…」

「…え、ちょ、ちょっと、麗華さん…!」


 なんと、気づかない内に彼女はスヤスヤと寝息を立てながら眠っているではないか。慌てた私は彼女の肩を揺すり起きるよう何度も促すが、当の本人は身じろぎしながら「んぅ…」と小さく反応するだけで起きる気配がない。

 どうしようどうしようとプチパニックを起こす私だったが、それを見かねた渉はやれやれといった感じで困り笑いをしながら立ち上がった。


「…仕方ないな」


 そう言うと、渉は眠っている麗華さんの手を取り―――


・・・・・・・・・・


 ―――夢を見ていた。

 それは、遠い子どもの頃の記憶。

 小さい私は父におんぶされて、夕焼けの中帰路についていた。


 幼い頃、一度だけ父と2人で遊園地へ行ったことがある。その時の私は初めての遊園地に大興奮で、目をキラキラさせながら父の手を引いて、これに乗りたいとかあれが食べたいとか父にこれでもかと言うくらいワガママを言いまくっていた気がする。普段無口で無表情な父も、あの時はずっと困ったようで嬉しそうな顔をしていたっけ。

 一日中遊び回ったからか帰る頃には瞼が重くなって足元もフラフラしていた私を見かねて、父は帰り道で私をおんぶして運んでくれた。多分これは、その時の記憶なのだろう。


 父の背は広くて温かくて包まれるような安心感があった。そのせいかおんぶされてからすぐに私は眠りに落ちてしまったのだが、意識が途切れる直前に目に映った、優しい表情を浮かべる父の横顔は今でも覚えている。寡黙な父だったが、きっと心の中では私を大切に想ってくれていたのだろう。


(今の私を見たら、父さんは何て言うかしら…)


 立派に育ったと褒めてくれるのだろうか。未熟な娘と落胆するのだろうか。無理をし過ぎだと諫められるのだろうか。それとも…大変な思いをさせてすまない、と謝るのだろうか。


(それとも…)


 再会した彩花と2人で笑い合って過ごす姿を見て「良かった」と思ってくれるのだろうか…。


 答えはもう分からない。

 でも、私から父へは自信を持って言える事がある。


「父さん、私…私達、今すごく幸せだよ…」

これにて5話完結となります!

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました!

本来はもっと前に書き上げていた話だったのですが、話の順番の都合で後回しの公開となってしまっていたので無事公開まで漕ぎ着けられて一安心です。


<追記>

番外編も始めました! 

最初は今回のエピソードの後日談的な内容を載せています!

以下のURLよりどうぞ!


『ウワサ話のこぼれ話』

https://ncode.syosetu.com/n5578lq/


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よろしくお願いします!


ではまた次回!

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