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ウワサ話のウラ話  作者: 紺堂
第4話 ワタシにとってのアナタは

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親友のウワサ 2

 私・水野(みずの)菜瑞(なつみ)は、高校に入学してすぐに春岡(はるおか)瑛理(えり)と知り合い、友人となった。


 きっかけは入学直後にひょんなことから私がアニメ好きのオタクだと瑛理にバレたことから。当時どこからどう見てもイケイケのギャルだった瑛理にバレたことで「あー私の高校生活終わったわ」とその時は思ったものだ。これから3年間ずっとオタクのレッテルを貼られ馬鹿にされ続けるんだーと被害妄想を膨らませて絶望していたのだが、話してみると瑛理もアニメ大好きらしく話が盛り上がり、そこから不思議と意気投合してしまった。その日以来、私と瑛理は同じ趣味を持つ友人同士となった。


 見た目はギャルっぽさ満点な彼女だったがアニメが好きだというのは本当らしく、私たちは放映中のアニメについてどれが良かったとかどこが良かったとかいう話を頻繁にしていた。見た目の割に随分熱心だなと当初は驚いていたが、どうやら彼女は食事の合間や家事をしながら暇つぶしに見始めたアニメにハマってしまったらしく、今では気になる作品を定期的にチェックし録画しては暇な時間で見ているということだった。




 見た目通りギャルっぽい瑛理は、そのイメージ通りメイクやファッションに詳しかった。母親に言われて嫌々基礎化粧品でのケアしかしてこなかった私にメイクの基礎や安価でオススメの化粧品なんかを教えてくれたのも彼女だったし、制服の着崩し方や自分の体形や顔に似合う服の系統なんかをネットの記事を見せながら色々と教えてくれたのも彼女だった。

 

 そして意外なことに、瑛理はギャルっぽい見た目とは裏腹に家事全般も得意だった。親が仕事で遅くまで帰ってこないからと料理や洗濯は全て自分でこなしているとのことで、更には昼食のお弁当も毎日自分で作っているというから驚きだ。本人は「前の日の夕飯の残り物詰めてるだけだしー」と言っていたが、それでも私がやってもこうは作れまいと言い切れるほどには綺麗なお弁当だった。何度かお弁当を分けて貰ったこともあったが、見た目だけでなく味も抜群で「瑛理を嫁に貰える男は幸せだなー」というのが私の口癖だった。




 しかし、ギャルっぽい見た目の割に…と言っていいものかわからないが、瑛理は友達付き合いがあまり良くなかった。

 学校で休み時間に私と2人でアニメの話をすることは多かったし、別のギャルめな友達とコスメやファッションの話をする様子もよく見られた。だが、私や他の友人が放課後や休日に遊びの予定を提案してみても、決まって彼女は


「ごめーん、今日バイトあるんだ」


 とほとんどの誘いを断っていた。


 もちろんそれだけで私や他の友人たちが彼女を悪く言うことはなかったが、それを邪推した人間が彼女についてあることないことウワサすることも多かった。曰く「パパ活でかなりのお金を稼いでいる」だの「不良グループとの付き合いがある」だの「男をとっかえひっかえして遊びまくっている」だの、事実無根のウワサばかりだ。もちろん彼女の人となりを良く知る私を含めた瑛理の友人たちは、そんな荒唐無稽なウワサなど信じなかった。


 しかし、実際彼女が何のためにバイトに日々明け暮れているのかと問うてみれば


「うーん…将来の夢のための貯金、かな?」


 と曖昧な答えが返ってくるばかりだった。将来の夢とやらについて詳しく聞いてみても「今はまだナイショ♡」といつもはぐらかされていた。




 そんな瑛理の将来の夢を知ったのは、高校1年の冬。

 ある冬の日の放課後、夕陽で赤く染まった教室で彼女は


「私ね、児童福祉司っていうのになりたいんだ。公務員なんだけど、なるには資格が必要で、そのために教育学部のある大学に進学しようと思ってる」


 と真剣な目で語っていた。特に目標もなく適当に進学すればいいやと考えていた私にとって、その時の瑛理はとても眩しく見えたものだ。

 どうして?と私が更に踏み込んだ質問をすると、彼女は親に虐げられ未来が閉ざされようとしている子どもを救うための仕事をしたいと話した。


「世の中、ヒドい親がいっぱいいるでしょ? 子どもに暴力を振るうとか、あとはご飯をあげなかったり、ケガとかビョーキしてても病院に連れていかないとか」

「私はそういう境遇にいる子どもたちを助けたいの。子は親を選べないってよく言うけど、だからって親がダメならその子に未来は無いの? 違うでしょ?」

「自分の未来は自分で選んでいいんだって、親に縛られてばかりいてはダメだって、私はそういうことを子どもたちに教えてあげたいの」


 そう熱く語る瑛理の姿はとてもカッコ良くて


「凄いね、瑛理は。そんな風に考えて行動できるなんて」


 私は本心からそう言ったのだが、しかし瑛理は何故か寂しそうな表情で


「…凄くなんてないわ。自分にそう言い聞かせてるだけよ」


 そう呟いた。




 それからも私と瑛理は何事もなく、それまでと変わらない日々を過ごしていた。1年生から2年生に進級してちょっとずつ進路について意識するようになりつつも、以前と同様にアニメの話で盛り上がったり、コスメやファッションについて教えてもらったり、毎日お昼ご飯を一緒に食べたり、学校行事で笑い合ったり、放課後の教室で日直の日誌を書きながらくだらない話をしたり…。

 そんな代わり映えのない私たちの日常が大きく変わってしまったのは、3年生への進級を目前にした冬休み明けの始業式の日。




 瑛理が、突然退学届を提出したと先生から告げられたのだ。

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