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ウワサ話のウラ話  作者: 紺堂
第2話 アナタしか見えない

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彼のウワサ 5

 三島(みしま)雄正(ゆうせい)と知り合ったのは昨年の春。知り合ったというか、ある日の講義後に突然呼び止められ校舎裏で告白されたというのが正しいのだが。


 私はそれまで彼とほとんど面識は無かったが、彼は何度か私を学内で見かけ気になっていたのだという。いくつか講義も一緒でそこで私の名前を知ったらしいが、大講堂での講義だったというのもあり私は彼が同じ講義を受けていたなんてそれまで全く気が付かなかった。

 見た目は真面目そうで顔も悪くないし、大学生になったからには恋の一つもしておくのもいいかも…なんて軽い気持ちでOKして交際が始まり、現在に至る。


 付き合い始めはプールやら遊園地やら2人で色々と行ったものだ。それなりに楽しかったしドキドキもした。昨年末のクリスマスや今年の正月も一緒に過ごしたし、仲は良い方だと思う。

 中高と男子校だったという雄正は最初の頃こそ初心で手を繋ぐことさえ恥ずかしがっていて「そんなところも可愛いなー」なんて私も楽しんでいた。付き合って半年経つ頃にはそんな様子も見せなくなっていたが、逆に色々と気遣って私の欲しいものや行きたい場所を優先してくれたりして、頼もしいなと思うところもあった。

 しかし、最近はどうも…一緒にいると息が詰まるというか、やりづらいというか。ぶっちゃけて言えば、私達はあまり相性が良くないのかもと思うことが多くなってきた。


・・・・・・・・・・


「今日の映画どうだった? ネットで今話題になってる作品で、女子人気も高いからなっちゃんも楽しんでくれるかなと思ったんだ!」


 ニコニコと雄正が笑顔を向けてくるが、私はそれに曖昧な微笑みを返すのみだ。

 今日は2人で大学から数駅先の大型ショッピングモールに来ている。雄正から数日前に誘われて、先ほどまでモール内の映画館で最近公開されたばかりの映画を見てきたところだ。

 肝心の映画の内容だが、両親を早くに亡くした女性と両親に冷たく扱われてきた男性が互いの傷を癒しながら惹かれ合っていく―――というヒューマンドラマ色の強い恋愛映画だった。テレビやネットでの評判も高く今話題の作品であることには変わりないのだが…


(つまらなかった…)


 私には数ある恋愛映画の焼き増しにしか思えず、途中からあくびを我慢するのに必死だった。ヒューマンドラマ系の作品が好きな雄正はスクリーンに釘付けだったようだが、クライマックスのシーンになっても私の心はあまり動くことはなかった。


 私はどちらかと言えばアクション…というかスペクタクル映画が好きで、困難を共に乗り越えることで家族や恋人、仲間同士が絆を深めるといったコンセプトの作品を面白いと感じる。そのことは雄正にも話したことはあったし、逆にヒューマンドラマ系の作品は苦手という話もしたはずだった。それだけに今日の「映画を見に行こう」というお誘いは驚きだった。しかも私の苦手と言ったジャンルである。

 私も映画のタイトルを聞いて最初は断ろうとも思ったが、雄正が「一緒に見るの楽しみだったんだ!」と満面の笑みで言うものだから、断り切れずに今に至る。


 その後はモール内の店を2人で一緒に見て回ったのだが、アパレルショップでは


「このワンピース、清楚な感じでなっちゃんに似合いそうだよね!」

(ワンピースあんまり好きじゃないんだけどな…)


 また雑貨屋では


「薔薇の香りの石鹸だって。なっちゃんも女の子だしこういう香りは好き?」

(ウッディ系の香りの方が好きだな…)


 また休憩で入ったカフェでは


「なっちゃん女の子だしショートケーキとか好き? 頼もうか?」

(生クリーム苦手なんだけどな…)


 と行く先々で私の好みを聞かず、雄正のイメージ先行で色々と試着や購入を勧められた。プレゼントしようかとも言ってきたが、そこは丁重にお断りした。

 少し前までの雄正は、私へのプレゼントならちゃんと私の好みを確認した上で送ってくれていた。しかし最近は、口には出さないものの過度に私に『女の子らしさ』を求めているような気がして、デートコースやプレゼントにもそれが滲み出ていた。何故そんなことになっているのかは皆目見当が付かなかったが、そんな雄正の態度に最近は違和感を覚えるようになっていた。




「今日も楽しかったよ。じゃあ、帰ったらまた連絡するから」

「うん、またね」


 帰りの電車が違うため、駅前で雄正と分かれた。雄正は私の姿が見えなくなるまで笑顔のまま改札の向こうで手を振っていた。

 ホームに降り数分待つと、目当ての電車がホームへと滑り込んでくる。座席に着いて動き出した電車の窓から外を見上げると、遠くの山陵からは夕暮れの残照が覗き、その上に広がる夜空は紺色に染まり幾つか星が輝いていた。瞬く星々を眺めていると思わずため息が出てしまう。


「このままでいいのかな…」


 思わず零れた一言は雄正についてだ。

 彼のことは決して嫌いではなかった。雄正は私に対してはかなり一途で、毎日朝夕にメールを送ってきたり、1分1秒でも一緒に居たいのか講義の合間にも会えないかと連絡してきたり、クリスマスや誕生日には結構いい値段のするプレゼントをくれたりしていた。私は彼ほどマメなタイプではないので、その点では雄正のことを尊敬していたし、私のことを考えてあれこれしてくれるのは素直に嬉しかった。


 しかし最近ではメッセージの返信を強要するようなことを言ってきたり、デートの誘いを断るとしつこく理由を聞いてきたり、2人で過ごす以外の時間は何をしているのかと何度も訪ねてきたりするのだ。更に私が適当に答えると感情を剥き出しにして問い詰めてきたりするので、私も彼の相手をするのに少し疲れていた。


 加えて今日のような『女の子らしさの強要』である。以前は雄正も私の好みを知ろうと色々聞いてきたり気を回してくれていたのに、最近はデートの行き先もプレゼントも全て雄正が決定してから私が合わせる形になっている。中には私の好みとは正反対のプレゼント等もあり、合わせるのも苦痛に思う時が増えてきていて、彼が本当に私のことを考えてくれているのか疑問に思う事もある。


(どうすればいいのかな…?)


 もちろん別れるのも一つの手段だし、そうでなくてもしばらく距離を置くという方法も考えられる。しかし、そんな提案を雄正にしたところで揉め事になるのは火を見るよりも明らかだ。そうした面倒事を避けてずるずると関係を続けてきたが、こんな状態で交際を続けるのはお互いに良くないという事も理解していた。


(私は、本当はどうしたいんだろう…)


 彼のことは嫌いではない。

 けれど、私自身が彼のことを好きかどうかはよく分からなくなっていた。

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