表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/31

1章 8話 父との別れ

父は、なぜこのアパートが分かったのだろうか…


気になったから、川野先生に事情を話して聞いてみた。

川野先生からの返答は…


父は、数十年前から生活保護を受けていて…

その時に福祉課が、梓の居所を調べたそうだ。

でも、梓は施設にいたから、父に援助は出来ないと判断した。

そして、父がもう長くないと知った時に

父は福祉課に娘の居所が知りたいと相談した。

福祉課が、施設に問い合わせをして、住所が分かった。

でも施設の方は、父には直接教えないように言っていたのに…

福祉課が、父に伝えてしまったという経緯があったそうだ。


父が、死ぬ前にどうしても梓に会いたいと頼み込んだらしい…


それから1か月くらい経って…

父が入院している病院から、連絡があった。


「お父さんが、どうしても貴女に会いたいと言っています。一度、病院に来て頂けませんか?」


「分かりました…」


とりあえず、そう答えておいた…


昔のことを思えば、絶対に会いたくない…

でも、父は前世の最初の夫の渉で…

前世でも、梓は渉を見送っている。


とりあえず、病院に行って先生と話してみよう。


梓は、病院に向かった…


病院に着いて…

電話をくれた看護士さんを訪ねた…


「来て下さったんですね…まずは医師から説明があります。こちらへどうぞ」


通された部屋には、優しそうな医師がいた…


「お父さんですが、肝臓癌で余命はもう2週間持つかどうか…というところです。病気が分かった時には手の施しようもなくて…」


「そうですか…」


「お父さんは、ずっと娘さんに会いたいと…おっしゃられていたようです。もし良ければ会ってあげて下さい」


「分かりました…」


それから、看護士さんに案内されて…


父に会った…

父は、もう起き上がれないようで…

でも、少しの会話なら出来ると…


父は、梓の姿を見ると…

泣きながら…


「梓、来てくれたんだね…ありがとう…」


「本当に、すまなかった…お前には酷いことをした…」


「お母さんは、お父さんのせいで亡くなったようなもんなんだよ。今更、何言ってんの?」


梓は、つい大きな声を出してしまった…


「ごめん…何もかも俺のせいなのは分かっている…お母さんが死んだのも俺のせいだ。梓を迎えに行きたかったけど…それも出来なかった…すまない…」


「いくら、謝ったって私は許せない…」


「分かってる…許してもらおうとは思ってないよ…こうして死ぬ前に会えただけでも、俺は嬉しい…」


「私がどんな想いで生きてきたか…」


梓は、泣き崩れた…


父は、ずっと謝り続けた…


梓は、この人のことは許せないけど…

母の死も看取ることができなかったし…

父の死は、看取取らないと後悔するような気がした。


それから…

毎日、仕事が終わってから父の病院に通った。

少しずつ父との会話が笑って出来るようになった頃…


父が危篤だと連絡を受けて…

梓は会社を早退させて貰って…病院に駆け付けた。

父は、もう話すことも出来なかったけど…


父の唇の動きで…


「ありがとう」


と言ったのが、分かった…


そう言った後…

父は亡くなった…


梓は、父を見送って…

遺骨は、持って帰った。


また、私は渉を見送ったんだね…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ