1章 6話 ごめんなさい…
佐藤さんの想いにずっと甘えていた…
このままじゃいけない…
私には元と愛し合うという強い気持ちがあった…
「佐藤さん、ごめんなさい。どうしても、そんな目で見れない…ごめんなさい」
「そうか…俺じゃダメか…。でもこれからも頼れるお兄さんでいさせてくれないかな?」
「ごめんなさい。気持ちがないのに佐藤さんに甘えるわけにはいかない…佐藤さんには、きっと良い人が現れると思う…」
「俺は、それでも梓ちゃんの傍にいたいよ…」
「ごめんなさい…」
佐藤は、納得できない様子だったけど…
その日は、そのまま別れた…
翌日、会社で近藤さんに…
「佐藤から聞いたよ。ま、仕方ないよ…」
それからも、佐藤さんは時々メールをくれたけど
梓は、そっけない返事しかしなかった。
そしたら、いつの間にかメールは来なくなった…
近藤さんは、彼女と結婚した。
結婚式で、佐藤さんと再会した…
「久しぶり…」
「お久しぶりです」
「元気?」
「元気です…」
それ以上、会話が続かなかった…
梓は、時々…施設に遊びに行っていた。
川野先生とも、時々連絡を取っている。
ある日…
川野先生から、急に電話があった。
「もしもし」
「梓ちゃん?園長先生が亡くなったの…」
「えっ?なんで…」
「交通事故でね…。今日お通夜だから…一緒に行く?」
「うん…行く」
「仕事が終わったら、連絡して。迎えに行くから…」
「お願いします」
川野先生と一緒に園長先生の家に行った…
園長先生は、変わり果てた姿になっていた。
梓は、泣き崩れた…
―――お父さん…今度はお父さんが先に亡くなったんだ…
翌日の葬儀も、有給休暇を貰って行った。
―――お父さんは、私の傍でいつも私を支えてくれた。
―――もっと、施設に遊びに行ってお父さんと沢山会えば良かった…
―――ごめんなさい…今までありがとう。
園長先生を見送りながら…
梓は、前世のお母さんとはもっと連絡を取ろうと決意した。
それから、月日が流れていき…
梓が就職してから10年が経ち…
梓は28歳になった。
仕事も、どんどん色々なことを任されるようになり…
給料は少ないなりに安定している。
梓は、なんとか1人で生きていけている。
でも、毎日…
会社と家を行ったり来たり…
他にも趣味もない。
川野先生とは、連絡を取り合って…
時々、会った…
「梓ちゃん、いい人はいないの?」
「いないよ…」
「結婚は、早くした方がいいと思うよ。私みたいになっちゃうから…」
川野先生は、独身だった。
施設にいると、婚期を逃すことが多い。
施設内で恋愛する以外、出会いがないらしい…
川野先生も、ずいぶん歳を取った…
「先生は、私が面倒みてあげるから心配しないで」
「申し訳ないわよ…」
「いいのいいの…先生は、私のお母さんみたいな人なんだから…」
「じゃ、任せようかな?」
「はい。お任せください」
2人は笑いあった…
そんな会話が、気持ち良かった…
それから、近藤に2人目の子どもが生まれたと聞いて…近藤の家に遊びに行った。
近藤の奥さんとも仲良くしていて、よく家に遊びに行っている。
そして、近藤の子どもを見て驚いた…
それは、前世の梓の長男だった…
―――やっと会えたね…
今度は、お兄ちゃんの子どもとして生まれたんだ…