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99 ナワシクルン遺跡7

すみません。また投稿お休みします。

 部屋全体が遺跡だと言われた中を残った三人でうろうろと歩き回る。カイは自分の大物遺物を手に色々な壁や床、机や棚のような物に押し当て難しい顔をしている。リュディガーは隅々に目を配りながら眉間に皺を寄せて何かを考えているようだ。

 子爵はほぼ原形を留めていると言っていたが流石に数百年から数千年と言われている遺跡であるため所々ひび割れ崩れているところが見られる。天井には大きなタイルが張り巡らされているがそれが一部落下し地中であることが示されるように土が見えている。床も壁も動揺で何の素材かわからないタイルが剥がれ土が見えている。先程私が足を取られた場所もタイルが剥がれて窪んでいたせいだった。

 

「大規模な補修はしていない、しないのか?秘密裏に保護しているとはいえ安全面が心配だな」

 

 リュディガーがボソボソと何かを口にしていたが、私は側を離れると大きな額縁がある壁際へ向かった。


 額縁を見上げて大きく息を吐く。なんだかここは夢で見たあの場所に似ている気がする。ママがいてパパがいて。巨大なモニターにメルチェーデ号の操舵室にあったような魔導具が沢山並んでいた部屋。ママと、仲良しのララが難しい顔で何かするって言ってた。計算がどうとか、誰かに頼むとか。もっと詳しく知りたかったけどパパにそこから連れ出されて……

 

「……ラルド、エメラルド!」

 

 リュディガーの声にハッとして振り返った。

 

「一度休もう、向こうの部屋へ行くぞ」

 

 気が付けば小一時間ほど経っていただろうか?カイも先に向こうの部屋に行ったらしくリュディガーと二人だった。

 

「うん、ねぇリュディガー。私って大物遺物に入れられて捨てられてたんだよね?」

 

 急な質問にリュディガーは一瞬戸惑った顔をした。

 

「あぁ、まぁそうだがそれがどうした?」

「本当にただ捨てられたのかな?だって大物遺物なんて恐らく当時でもかなり高価な物だよね?子どもを捨てるのにそんなにお金をかけるかな?」

 

 ずっと不思議に感じていた事を思い切って口にした。オジジに可愛がってもらっていることはわかっていたからあまり過去の事について聞くのも良くないかと遠慮していたが、最近よく見る夢のせいで何か違うのではないかと思い始めていた。あれは夢ではなく過去に起こった事実なんじゃないかと。パパとママは私を可愛いいって抱きしめてくれていた。あれが現実なら捨てるとは思えない。

 

「そうか、お前もそう感じてたか。実は俺達もそれは考えていた」

 

 どうやらオジジとリュディガーの中ではずっと違和感があったらしい。

 

「だがここでは話せない。後で良いか?」

 

 確かに不用意に話せる事では無いだろう。私も夢について何かを掴んだ訳じゃない。もどかしく思いながらもさっきの部屋に入って行くと大きなテーブルにお茶や軽食、お菓子が並べられていた。

 子爵は優雅にピッポが淹れたらしいお茶の入ったカップを手に視線を向けて来た。


「どうであった?」


 遺跡を見た感想が聞きたいのか、それともこれ程の遺跡を保護していることを讃えられたいのか。ちょっと自慢気に見えることにちょっとイラつく。


「凄いですね。どういう経緯で発見されたんですか?」

「発見には携わっておらぬのでな、詳しくは……」


 子爵が話している途中で突然さっきまで居た遺跡部屋から急に見知らぬ二人の男が入って来た。


「なっ!?誰?」


 咄嗟に声をあげたがその後はバタバタと騒がしくなったかと思ったが気が付けば床にねじ伏せられている男達がいた。


「いいい痛い痛い痛い!!待て待て話せばわかる!」

「ひぎぃぃ〜ごめんなさいごめんなさい許して下さい!」


 泣き叫ぶ男達を押さえているのはリュディガーとピッポで、その素早さに子爵とカイが呆然としている。


「誰だ、何故ここにいる?」


 リュディガーが押さえている男の腕をねじ上げながら尋ねる。


「ひぃ~痛い痛い、私はミルコ、ミルコ・エスポージト男爵だ。ここで発掘をしている。あっちはジーナ、私の助手だ、あぁ見えて女性だ、離してやってくれ」

「てめぇら離しやがれ!この野郎どこから入り込みやがった!!」


 どこからどう見てもガラの悪い男にしか見えないが、声をよく聞くと確かに女性のようだ。


「リュディガー、ピッポも、離してやってくれ。そやつらはこの遺跡を調べている仲間だ。害は無い」


 子爵が困ったような顔でそう告げる。


「仲間?『古代遺跡保存の会』のですか?」


 見ているだけだったカイが確認すると子爵はふむと頷いた。小汚い格好をしているが男爵といえば下位だが貴族だ。リュディガーは訝しげに思っている様子だがエスポージト男爵を解放すると手を貸して立たせた。ピッポも自分が抑え込んでいたのが女性だと聞いてギョッとして力を抜くと手を貸す間もなくジーナはサッと立ち上がりエスポージト男爵の側へ行く。


「ランベルティーニ子爵、こいつらは何ですか?こんなところまで何の連絡もなく連れて来るなんて。まさか裏切ったんじゃ無いでしょうね?」


 ジーナが貴族に対しているとは思えない態度で子爵を睨みつける。


「ジーナそんなこと思っていても言うんじゃないよ。機嫌を損ねたら少ない寄付金だって減らされちゃうよ」


 若干空気を読めない雰囲気のエスポージト男爵がぽやぽやした話し方でジーナの汚れてしまった服をポンポンと払いながら微笑んでいる。若干じゃないか。

 二人の様子にリュディガーも警戒を解いたのか私のそばに来るとカイが交代するように子爵の方へ向かった。もしかしてカイって私を守る為についてくれていたのかな?何もしてないって思って申し訳ない。


「もう、服はいいですってば。それより子爵様に話を聞かなきゃ駄目ですよ」

「あぁそうだね。ボナ、どうなってるんだ?」

「ミルコ、私の名を縮めるなと言っているであろ」

「あぁ、悪いね。それでボナ、この人たちはまさか新しい支援者かい?」


 貴族二人のやり取りがまどろっこしく思ったのかジーナが私達に顔を向ける。


「私はジーナ、あんたら誰なの?」

「私はエメラルド、こっちはリュディガー、ピッポ、それからカイ。遺物回収船から来たのよ」


 女性が相手なら私が話す方が良いだろうと思い話しかける。


「エメラルド?随分大層な名前ね、まさか貴族?」

「勿論違うわよ」

「それは良かったわね。それで支援者なの?」

「わかんない。急に連れて来られたって感じだから」

「チッ!」


 ジーナは盛大に舌打ちしまだのんびりと話している貴族達に向き直る。


「子爵様、早く説明して下さい」

「おぉそうだったな。この者達は遺物発見者で私が王都までの案内人だ。このリュディガーはゼバルド・ガーランドの孫でな、エメラルドは養い子で愛弟子というところか」

「それで勝手に連れてきたんですか?」

「ちょうど川で足止めされてな。しかもだ、このエメラルドは『ヴィーラント法』を解読したのだ」


 解読という言葉にさっきのぽやぽやした男爵が急に割り込んで来た。


「なんだって?『ヴィーラント法』??」

「そうだミルコ。『ヴィーラント法』の暗号の解読に成功したのだ」

「あ、暗号……解読」

「そうだ、解読したのだ。それを是非お前にも見せてやりたいと思ってな」

「それ、わたし、見る」


 子爵の言葉に動揺しまくっているのか、エスポージト男爵は何故か片言になっている。


 

 

読んで頂いてありがとうございます。

面白いと思って頂けましたら、ブクマ、評価、宜しくお願いします。


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