90 楽しい解読5
申し訳ありませんがまた投稿お休みします。
寒くなってきましたが今年ももう少し。
気をつけて頑張りましょう。
カイとランベルティーニ子爵は黙々と手を動かし続けている。私も置いてかれないよう自分のノートに拾い集めた文字を並べていく。
「これは、良しとして、コッチは……これでいいのか?」
自分の作業に没頭すると周りの音は遠く小さくなって消えていく。
ノートに少しずつ抜き出された文字が並び、やがて探さなくてもページを開けば次に書き出さなければならない箇所が光って見える。
金色……余分な文字が金色に見える。気のせいかな?
「ここと、ここ。ここは抜けてる。次はこの文字で……」
ページを捲り指で文章をなぞる。するとやはり余分な文字が金色に光って見える。だけど今はその事は気にせず先ずは進めていくべきだろう。少しずつだけれど文字が集まり次第に文字同士を組み合わせ単語にし文章に仕上げていく。やがて出来上がった文章をなんとなく口に出して読み上げた。
「我コソハ、コノ本の著者コンスタン」
「「えぇーーーーー!!!!」」
突然の大声にビックリして顔をあげる。そこには子爵とカイが目を大きく見開き私を見ている。
「なんなの急に大きな声を出して。ビックリするじゃない」
心臓だってバクバクだよ。
「なんなのじゃない!お前こそ一体なんだ今のはっ!?」
カイが声を震わせながら私を指差す。かなり興奮気味でリュディガーが慌てて私の横に来た。
もう、また庇いに来たの?解読中は白熱してくるとこれくらいの声を荒げることはあるっていい加減学習してくれないかな?
なんて思っていたらリュディガーがグイッと私の肩を掴み顔を覗き込んでくる。
「解読出来たのか!?」
「解読?そりゃ解読してるんだから出来るでしょ?」
ずっと解読作業をしてるんだから解読は出来るでしょ、と不思議に思っていると興奮している二人より少し落ち着いた感じの子爵が咳払いをした。お貴族様の割り込み方って粋だよね。
「エ、エメラルド、うっ、ゴホンッ。さ、さっきの、ケホケホッ、さっきの、言葉はか、解読した、か、解読した文章なのか?」
おぅ、本気で喉に異変を感じていたの?なんだか話し難そう。
「ピッポ、子爵様にお水を……」
「水などいらぬ!だから早く、早く答えてくれ!解読したのか?」
いつも落ち着いた感じだったのに慌しく、なんなら必死過ぎる形相にちょっと引いちゃうけどここは早く答えてあげたほうが良さそうだ。ピッポもお水の用意をしてくれているし。
「はい、まだ一文ですが見ればわかりますよね?この抜き出した記号のようなモノは一つでも使えますがこれだけ並べても意味を成さないので幾つか組み合わせればこうやって文字として使えますからそれを繋げて……」
「く、組み合わせる!?どれとどれをだ?」
またまた興奮したカイが私のノートを奪い取り引きちぎらんばかりに捲っていく。
「やぁ、あぁあぁ、落ち着いてよ。破れちゃうよ!ちょっとリュディガー止めてよ」
リュディガーはカイの腕を掴むとバンッと強めにテーブルの上に叩きつける。
「ちょっといくらなんでも激し過ぎ!手加減してやりなよ」
喧嘩になるんじゃないかと慌ててリュディガーを止めようとする。
「どこだ?どの部分だ!」
今度はリュディガーも加わって二人してページを捲りだす。
おいおい本気でどうかしちゃったんじゃない?
完全にドン引きしてしまった私は子爵にグラスを手渡すピッポを見て呆れ顔をしてみせた。
「仕方ないな。ひょっとすると世紀の大発見だもんな」
ピッポはグラスを持つ手が震えてなかなか水を飲めない子爵を手助けしながら普通な感じで話す。
「世紀の大発見なんて大袈裟な。まだ一文解読しただけだよ。それもこんなやっべー奴の発言みたいなのだよ。我コソハ、なんて本当に偉い人が本に残す言葉か?」
「確かにな。なんか拗らせちゃってる奴のセリフに聞こえる。でもそれすらこれまで誰も読み解けなかった隠された文だったんだろ?なら世紀の大発見で間違いなくないか?」
子爵を支えていたピッポがやっと水を飲んだ事を確認しグラスを下げる為に控えていたサイラに渡した。
「そう、かな?」
「そうだな」
念を押すようにピッポが大きく頷いてみせる。
「そうなんだ。なんだか実感無いなぁ、えへへ」
私が世紀の大発見とか照れ臭い。これまでずっと誰かが解明してきた古代文字を手本に解読をしてきたが、それは誰かの作った道筋を跡を追っているような気持ちだ。でも今回はまだ現代の人は誰も知らない古代文字の暗号という新たな道を発見し一歩踏み出したような気持ちになる。
改めてそう思うと嬉しさと楽しさでドキドキが止まらなくなってきた。
「エメラルド早く来い!!どうやったんだ?早く教えろ」
もう〜人がせっかく感慨深く感じていたのに台無しだよ。
カイが目を血走らせて叫んでいる。いや怖いって。
「うるさいな、わかったからノート返してよ。あぁもう!クシャクシャじゃない。最悪」
手荒に扱われた私のノートはシワが寄り端っこが少し破れているところもある。ないわ〜。
「悪い、後でいくらでもまた新しいの買ってやるから」
リュディガーが私の隣に座り優しく声をかけてくるが、その手はノートの端を押さえて説明を催促するように人差し指をイライラと動かしている。これ以上「待て」は出来なさそうな男達にため息をつき、私はゆっくりとペンで示しながら口を開いた。
「いい?先ずこれね。最初抜けているところは合図かもって思ってたから取り合えず抜け文字と、その後に出る余分な文字を抜き出した。ここまではいいでしょ?」
「あぁ、それは俺も子爵様もやってた」
カイが子爵と目を合わせお互いに確認しあって頷き合う。解読を始めてから本当にこの二人は仲良しだな。
「でね、それって見ていると単体で文字として成立する物もあれば成立しない物もあるでしょう。だからそれは書き損じか書き手のクセによるただのミスかもと思ったの。でもそれにしても余分な文字の中の半分くらいがそんな感じだからこれって一つじゃ駄目かもって思って……」
「なぜそこで組み合わせるなどという発想になったのだ?」
ランベルティーニ子爵が急に放った言葉に反射的に答えてしまう。
「なんとなく?」
リュディガーが息を吐き出しながら手で目を押さえ顔を天井に向けた。
「なんとなくって、なんだよ……」
カイが歯を食いしばり何かに耐えるように唸る。子爵も固まってしまいどうしたものかと考えていると昼時になっていたのか静かに食事が運ばれて来た。
いつもなら解読しながら食べるところだが、何故か皆がグッタリとして一旦『ヴィーラント法』から離れて落ち着こうということになった。
窓の外ではしとしとと雨が降り続いていて今日も橋を渡れないことは決定のようだ。私は念の為『ヴィーラント法』を肩からさげている特級ケースに片付けてから食事をとりはじめる。せっかく良い感じで解読が進んでいたのに作業が続けられないことにちょっとムカつく。こういうのはノッている勢いのままに進めるほうが作業が捗るのに皆わかってない。
「リュディガーよ、ゼバルド殿はいつもどのような感じで解読をしておるのだ?」
不意にランベルティーニ子爵が弱々しい感じで問いかける。
「祖父は俺の記憶の中では解読にはエメラルドと一緒に行っているということが殆どでした。というか、エメラルドに合わせて解読を行っていたようにも思います」
「エメラルドに合わせてとはどういう事だ?」
私抜きで私のことを話しているみたいだけど、私もそんなのわかっていなかった。オジジってば私と一緒に出来るときにしか解読を進めてなかったの?なんで?
読んで頂いてありがとうございます。
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