69 エルドレッド国へ2
魔物討伐船でイーロが不審な行動を取っているとサイラ達が話していたことを思い出した。その事を踏まえてもイーロがどうして私の特級ケースを探し出してくれたのかがわからない。
カイがリュディガーとピッポの二人と一緒に私を探してくれている間に残された船員達とサイラとミラはどれくらい待てば助けが来るのかわからず怪我人を手当したり、簡単な食事をしたりしていたらしい。
その時にニコラスと二人の船員、そしてイーロがキングクラーケンの生死を確認し取れる素材を回収し、ついでに私の特級ケースを見つけてくれたらしい。
あの時、ダキラ船長は私とカイが逃げて来るギリギリまで待って魔導砲を出力を絞って撃ったそうだ。どのみち船が斜めに傾き正常に撃てるかどうかもわからなかったし、近距離で撃つのだから威力を弱めなければ洞窟にいた全ての生き物が生きてはいられなかっただろうから、ということらしい。
「イーロにお礼言わなきゃね?」
口にはしたものの何となく腑に落ちず疑問形になってしまう。
「そう、ですね」
サイラも同じように考えているのか歯切れが悪い。
どちらにしてももう少し体を休めてからでいいかなという事になった。
「それと、確認なのですが」
「ミラ駄目よ」
ミラが私に何か聞こうとしたのをサイラが遮る。
「そこは踏み込みすぎよ」
「だけどお二人の関係性によっては私達の動きも変わるわ」
「そこは私達が汲み取ればいいのよ」
「でも間違いがあってエメラルド様のお気持ちと違えることになったら」
「ちょ、ちょっと待って、二人とも落ち着いて」
急な言い合いに驚いて止めた。二人はハッとして申し訳ないと謝罪する。
「別に謝らなくてもいいけど、私に何か聞きたいなら言ってよ。そんなに気を遣わなくていいよ、別に私はお嬢様じゃないんだから」
私的にはちょっと面倒をみてくれれば彼女達が個室の件で負担に思わなくて済むかなと思ったことだ。
だけど何故か二人は私が"お嬢様"という言葉を言った時にグッと顔に力が入った気がした。
「では、お聞かせください。エメラルド様とリュディガー様のことです」
「リュディガー?アイツが何かしたの?」
「いえ、リュディガー様がではないんですけど」
なんか含んだ言い方って好きじゃないなぁ。ハッキリ言ってくれないとちょっとイラついちゃう。
それでも二人がもじもじするのを辛抱強く待った。
「あの、エメラルド様とリュディガー様は好きあっておられるのですか?」
「はぁ?急になに!?」
二人はわたわたとしながらすみませんだの、申し訳ありませんだの謝ってくる。
「いや、別にいいけど。どうしてそんな事が気になったか教えてよ」
「は、はい。実はこの船の持ち主であるオリエッタ商会のお嬢様、ベルナデッタ様がリュディガー様に言い寄ってらっしゃいます」
わお、言い切った。そんなにわかりやすく言い寄ってんだ。
「あぁなるほどね。それでリュディガーが私を探そうと無茶した事が気に入らないとか?」
「そのような感じなのです。エメラルド様が臥せっておられる間、リュディガー様が医務室の前にずっといらしたのですが何度もそこの来ておられました」
「ふぅ~ん、それをリュディガーが軽くあしらってたと」
「そ、それが微妙な感じで対応されてらっしゃいました。オリエッタ商会のお嬢様ですから」
わかるわ~、取引相手だから無下に出来ないし、でも私が絡んだときのリュディガーって結構ポンコツだからなぁ。多分ピッポが上手く助けてくれたんだろう。いつもはもっと冷静に事にあたるんだけどね。
「言いたいことはわかった。あなた達は気にしなくてもいいよ。適当にするから」
そんな事をいちいち身構えてちゃ回収船でやってけないんだから。なるようになるでしょう。
サイラ達の心配をよそにオリエッタ商会の船に滞在している間は何事もなく、航海は順調に進みもうすぐエルドレッド国につく。体力が戻らなかったせいもあり部屋から出られなかった私はお嬢様に会うこともなくちょっと拍子抜けな感じだ。
下船準備をしろと言われたが準備も何も荷物なんて特級ケースだけだ。他の物は貴族の高速艇と共に海に沈んだし、魔物討伐船でも借り物の服を着るしかなかったのでほぼ着のみ着のままで過ごしたが特に不便はなかった。
陸に着けば港町に沢山の店がありそこで旅支度を整えるのが慣例らしい。
リビングの窓から外を見ていると間近に陸が迫っていた。一応初めての地面は例の小島だけれど、あの時の心境とは全く違うし、見えている光景も全く違う。
何度か遠くから見ることはあったが港に入るのは初めてだ。
いつも沖から眺めるだけの港町は坂にへばりつくように建物が並んでいる。小さい建物がひしめき合うように並び路地が縫うように家々の間を走っている。上に行くほど大きな建物が増えていき遠く小高い場所に一際目立つ立派な城が見えた。
「あれは領主の城だ。準備が整えば挨拶に向かう」
いつの間にか隣にリュディガーが立ち説明してくれる。
「リュディガーは会った事あるんでしょう?」
「あぁ、仕事でな。だが挨拶で軽く顔をあわせただけだ」
メルチェーデ号は大きな成果をあげている回収船だからそれなりに融通を利かせてくれるらしく、それなりに大人の事情も絡んでるらしい。
直接の取引相手はオリエッタ商会だけど領主様にも税以外の旨味があるのだろう。
「エメラルド様、まもなく上陸出来るそうです」
サイラが呼びに来てくれ通路でピッポとカイと合流し下船するため船外へ向かう。
謝ってくれて以来会っていなかったカイが何故かよそよそしく距離がある。私としては前のように関わっていきたいがどうもリュディガーが何か言ったみたいだ。もしかしたら手が出たのかも知れない。まぁ話は船を降りてからでいいか。持ち手が取れてしまった特級ケースはサイラ達が布で包み紐をつけて斜め掛けに下げられるようにしてくれている。
リュディガーと並んで歩きタラップの設置されているところまで来ると一緒に救助された人達が順次下船していた。
「あっ、ニコラス」
すっかり忘れていたがニコラスとダキラ船長がいて自分の船員達が降りていくのを確認していた。
「お、もう大丈夫なのかぁ?」
「えぇ平気よ。ありがとうニコラス」
ニコラスの横にいるダキラ船長が何故か苦い顔で私を……じゃなくてリュディガーを見てる。
「何かあった?」
「うるせぇ、そいつ頭おかしいぞ」
ダキラ船長怒ってる?もしかして……
「リュディガー何か言ったの?」
「言って当然の事を言っただけだ」
「当然ってなんだ!それなら俺だってそいつを助けてやったんだから感謝して当然だろう」
「巻き込まれれば死ぬ可能性があるとわかってて魔導砲を撃ったんだから賠償請求は当然だ。実際エメラルドは死にかけた」
「ゔゔゔ、ムカつく奴だ」
私の知らないところでリュディガーはカイから魔導砲を撃った経緯を聞き出しダキラ船長に苦情を言ったようだ。
「リュディガーやめなよ。あの時は船が壊れて身動き取れなくて逃げようがなかったのよ。キングクラーケンを撃たなきゃみんな死ぬかもしれなかったんだから」
「だからってお前だけが死にかけたのは納得がいかない」
確かにそれは納得できない気もするけれど船長という立場的にはその他の船員が無事で犠牲が一人だけっていうのは善処したほうなんじゃないかなとも思う。あ、初っ端に一人キングクラーケンに投げ飛ばされて死んでたっけ?
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