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 二度目の移動中、魔導具の中は変な感じだった。魔導具内で遺物を挟み二人、二人のカップルのように分かれて乗っている。遺物はかなり大きいので残りの隙間でピッポとサイラはかなり密着した状態になっているだろう、私とリュディガーのように。

 

「狭くないかエメラルド?」

 

 リュディガーは遺物が倒れないように左手でそれをささえ、右手は私を気遣うように体を抱き込み背中に添えられている。

 

「平気だよ」

 

 私はリュディガーの胸に自然な感じで頬をつけ狭くて仕方ないよねって風に彼の腰に手を回す。うへへ……ほんのひと時のご褒美タイムだ。

 ポン!と軽快な音がし魔導具は停止すると私の背後でスルスルと扉が開いたようだ。

 

「あぁーやっと来た!イーロ、そっち持て、ゆっくり倒せよ」

「わかってますよ」

 

 待ち構えていたカイとイーロによって私達とサイラ、ピッポの間にあった遺物がゆっくりと倒され運び出されて行く。リュディガーから離れないまま視線を向こう側へ向けて見る。

 わぁ〜ピッポ顔が赤い。サイラはスンってしてて……あぁニヤリとしたよ。転がされてるなピッポ。どうやらサイラも満更でも無いようなので放っておいても大丈夫だな。後は若いお二人でどうぞ。

 

 運び出された遺物は迷うこと無く私が前回来た時に入った部屋の前に持って行かれる。まぁ、さっき来た時にそこだって教えたからなんだけどね。

 

「エメラルド、早くここを開けろよ」

 

 人にものを頼んでいるわりにちょっと口の効き方が悪いなカイ。

 

「開けるのは良いけど、私の指示なしにそれを勝手に動かさないでよ」

 

 折角私がみつけた空間とリュディガーの箱の夢の共演が見られるかもしれないのに勝手に話を進められては腹が立つ。渋々ながら頷くカイを少し下がらせて扉の前に立つと両脇にオジジと船長が立った。

 

「先ず俺に入らせろ」

「大丈夫だよ船長。昨日も入ったんだから」

 

 心配性な船長が私の背中のシャツをむんずと掴む。気がつけばサイラも腰辺りを掴んでいる。いや私どれだけ暴れん坊だと思われているの!?

 

「そんなに心配しないでよ、わかった、扉開けたらここで待機してるから」

 

 オジジまで私と扉の間に半身を入れて阻止しようとしてくるからもう諦めた。

 

「いいぞ、開けろ」

 

 リュディガーも私の腹に手を回し一歩も動けない様にガッチリ囲まれた状態での扉オープン!

 

 フォン!


 リュディガーの箱を開く時と同様に作動音がすると扉が滑らかに横の壁に吸い込まれて行く。扉の向こうの室内は明るく照らされ昨夜来た時と同じ状態だ。正面のモニターの真ん中に蒼い丸い玉とそれに紐つけるように線が伸びその先に幾つも小さい点が集合した塊が描かれている。


「こ、これは……」


 オジジが一言発したっきり目を見開きヨロヨロと中へ入ろうとするのを船長が素早く引き止める。


「俺が先だって言ってんだろ!」


 文句を言いつつリュディガーが私を捕らえているのと反対の手でオジジを掴んだのを確認し船長が銃を構えつつ室内へ入って行く。中を調べると言っても一目で見渡せる広さだし正面に集約された装置がピコピコと動きを見せている以外はなんの危険要素見当たらないはずだ。キョロキョロと見回す船長。


「良いぞ」


 船長が顎で示すとオジジはリュディガーを振り切りさっと中へ入った。勿論私もすぐ後ろをついて行く。オジジは正面のモニターに釘付けだけど私は横の壁にポッカリと空いている四角い空間へ向かった。計測する道具は手元に無いので両手を使って大体の長さを測る。やっぱりアレがピッタリ入りそうで嬉しくなりカイとイーロに箱を持って来るように言おうと振り返った。


「なんだよ、これ」


 カイは既に箱を持ち込んでいたが正面のモニターに目を奪われ固まっている。イーロもそっと箱を床に置きながらモニターを見ている。まぁ仕方ないよね、私は夢……というか、少しずつだけど記憶が蘇ったせいで初めて見たという衝撃は無い。まことしやかな古代文明が廃れた原因と言い伝えられている彗星衝突の話は、パパとママのやり取りで私の中では裏付けが取れてしまっている。少なくとも彗星がかなり大きく影響を及ぼしての結果が今の私達が住んでいる三つの大陸なのだろう。


「リュディガーそっち持って」


 オジジと船長、男爵だけでなくカイとイーロもかなりモニターに釘付けなので私は私でこっちの空間に箱を入れ込むべく腰を落とし両手で掴むと持ち上げようとした。勿論一人では無理なのでまだ比較的冷静なリュディガーに反対側を頼もうとすると私を押し退けてピッポが箱の一端を掴んだ。使えるぅ、ピッポ!


 一度入るかどうかを確かめようと箱を壁側に寄せて、まるで受け皿のように開いている台の上にそれを置いてもらった。


「う〜ん、反対向きかな?」


 シンプルな箱だけど側面に目印かのように左右非対称な小さな装飾がある。高さの違うそれを壁側の凹凸に合わせるとするとリュディガーとピッポは場所を入れ替わった。この時点でオジジが我に返り私達が何かしようとしている事に気が付き視線を向けてきた。


「まさかそこへ入れ込むのか?」

「そ、イイ感じそうなの」


 改めて箱を台に置くと左右の装飾を確認する。


「やっぱりこれでいけ……」

「ほわぁ!何ということだ!!こんな、こんな……」

「この為にこの箱が存在ししかもこれ持っている人物とこの場所を紐付かせて連れて来るなんて……運命か……」


 男爵とカイがかなりデカ目の声で叫びみんなが顔を顰める。ことにカイはかなり小っ恥ずかしい心の声がダダ漏れで後で冷静になったらきっと落ち込むレベルだろう。

 いつも邪魔な二人だけれどここには気合の入ったオジジがいる。流石にそれを押し退けて割り込んではこれないらしく煩いだけで近付いては来ない。オジジはサラッと箱を撫でると大きく息をつく。


「入れるぞ」

「おいおい待て。なんの安全確認もしないまま実験的な事を進めるんじゃない!お前はいっつもそうだ!」


 船長が凄い剣幕で箱を入れさせまいとオジジ肩を掴んで怒鳴った。


「毎度毎度邪魔をするなモッテン!」


 オジジは顔も向けずに箱を壁に押しこんだ。リュディガーとピッポは二人の争いに口を挟んでいいものか一瞬迷いながらも既に手を離していたので箱はあっさりと壁に吸い込まれて行った。流石オジジ!


「あぁ!てめぇこの野郎!」


 驚いた船長の敗因は掴んだのがオジジの肩で箱自体ではなかった事だろう。吸い込まれた箱を隠すように壁が音もなく閉じるとキュィーンと小さく何かが聞こえる。すると正面のモニターがピコッという音と共に画面が切り替わった。さっきまでの恐らく彗星が大陸に衝突するかもという画面から、何やら設計図のような地図のような物が映し出される。


「な、なんだこれ……は?!」


 映し出された画面を確認しようと皆が凝視した瞬間、突然バンっと赤い光と共に大きく文字が差し込まれた。勿論古代文字である。


「えっと、『魔力の供給不足により稼働できません』とは?」


 皆が理解が追いつかず固まっていると先程閉じられた遺物を吸い込んだ壁が開き差し戻す様に箱が吐き出された。

 

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