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 イヤだわ、ピッポのあんな顔はじめましてなんだけど。やだやだそうなの?!そんな事がわき起こっていたの?!幼馴染のピッポはこれまで全く色恋沙汰がなかった、とわけではない。年上女性への淡い初恋、とか、年上女性とのそれなりの……まぁ、船上という特殊な環境上、普通に同じ年頃の娘なんてものが存在自体少なくて年上ばっかりだった気がするが。それにしてもあんなちょっと健気そうに頬を染めるとか

 ……サイラは確か二つ年上か。うん、無問題。

 

 私がピッポを見てそんな脳内妄想を繰り広げているとリュディガーが顔を覗き込んできた。

 

「なにニヤついてるんだ?」

「だってアレ」

「あぁ、アレな」

 

 どうやらリュディガーも気づいていたらしく同じ様にニヤついた。

 

「まぁそっとしておいてやろうや」

「そだね。サイラに無体を働かない限りはね」

 

 ピッポはいい奴だからそんな心配は全く無いけれどサイラにその気が無いなら諦めさせてやるのも幼馴染の役目だろう。(余計なお世話ともいう)

 ピッポのおかげかそこからリュディガーとのやり取りが以前のように戻り、過保護過ぎる制限からいくらか解放された。

 

「ねぇ、何か反応ない?」

 

 扉の周りを今度はコンコンと軽くノックするように調べながらリュディガーに顔を向ける。

 

「俺に聞くなよ。お前の魔力にしか反応しないんだろ?」

 

 リュディガーも無駄かと思いつつも同じ様に扉の周辺を叩いたり押したりしているようだ。暫くそこらを調べ尽くしため息をついた。

 

「仕方ない。次へ行こう」

 

 ここはどうやら私の魔力を持ってしてもなんの反応もしないらしい。遺跡は広く調べる所はまだまだあると気持ちを切り替え左右の廊下を見比べ気持ちの赴くまま右へと進んだ。直ぐに次の扉らしき場所に来たが一通り魔力を込めて触れても反応がないとわかると次へ進んだ。

 ペタペタペタペタペタペタ、はい、次。という感じで三つの扉を過ぎ最後に廊下の突き当りにある扉の前に来た。これまでと同じ様な扉を前に今度こそはという思いで触れるとそれは呆気なく横にスライドした。

 

「開いた!!」

 

 私の叫びに反応した足音がドタドタと背後に近付いてくる。すぐさまリュディガー過保護機能が作動し私の体は後ろへ引っ張られる。

 

「下がってろ!」

「ちょ、ちょ、ちょっと!?」

「待っていろエメラルド。先ずはワシが行ってくる」

「馬鹿かオレが先だ!」

 

 真っ先に突っ込んで行くオジジのすぐ後ろに船長がついて行く。いつの間にやら手には銃を握り締めているのが見えた。きっと前回の調査で開かなかった部屋へ初めて足を踏み入れるのだから警戒してということなのだろうけどオジジは全くかまってない感じだ。私だって入りたいとリュディガーに抗議したがまるっきりの無視だ。クソっ。カイも素早く横を通って行くしピッポに腰紐を掴まれている男爵でさえ両手の拘束を解かれて入って行く。流石にジーナは安全を確認するまで私と一緒に部屋の外に待機させられている。無論サイラは私の側にいる。イーロは入口付近から中を照らすように灯りを持っていて、いざという時の出口を確保するかのように扉が消えた所を背にして廊下と部屋をまたいで立っている。中では灯りを持っているオジジとカイが動き回っているが全体的に薄暗く、ここからじゃよく見えない。

 

「リュディガーもういいでしょう?私が入らなきゃ部屋の灯りがつかないかも知れないじゃない」

 

 ピッポも男爵も自分の足元を照らす位の小さい灯りは持っているがきっとまどろっこしい思いをしているだろう。

 

「うわっ……これは……」

「もがもが、もが!」


 カイと男爵らしい声が聞こえて余計に待ち切れない気持ちになる。もうっ!


「オジジ!まだなの!!」


 何度か叫ぶと船長の入って来いという声が聞こえ前を行くリュディガーを後ろから全力で押しながらその部屋へと入って行った。


「押すなって」

「あ……」


 入った瞬間にパッと部屋全体が明るくなった。天井全てが光り広い空間を照らしている。私達が入った入口は部屋の右後方にあり、そこから緩やかに下っている造りで部屋全体が見渡せた。真正面には巨大なモニターらしき物が二つ並んで備え付けられその前には船で使っている様な小さなモニターや何かの操作盤が設置された長机のようなものがズラリと並んでいる。

 あぁ……あの部屋に似てる。パパに抱っこされて、ママとそれから確かララって人が難しそうな顔で話してた。あの時は勿論全てのモニターや装置が作動し沢山の人がこの部屋に居た。

 今は真っ暗なモニターに視線を向けながら足を進めた。何も話さない私を不審に思ったのかオジジが側に来てくれる。


「何か覚えているのか?」


 巨大なモニターの前まで来ると私はそれを見上げコクリと頷いた。


「『スイセイが接近している』って……言ってた」


 私の言葉でオジジが息を呑んだのがわかった。


「なるほどな。やはりエメラルドは古代人の生き残りで間違いなかろう。スイセイ、つまりそれは簡単に言えば空にある星のことじゃ」

「え?空の星?」


 ふむ、とオジジは頷き手近にある腰を下ろすのに良さげな何かに座った。流石に動き回って疲れたのかな。


「古代文明を研究している者なら誰しもが思う事じゃ。何故古代文明は滅んだのかと」


 カイや男爵が鼻息も荒く頷いている。勿論私だってその問を持った事は何度もある。遺物の発掘や『ヴィーラント法』なんかの研究をしていると現代よりもずっと発達していた過去があるという矛盾にどうしても行き当たる。人は今よりもっと豊かな生活を望むものだ。便利な魔導具を製作し産業を発展させて行く。なのに過去の遺物が現代よりも進んだ技術を持っていたなんてあり得ないはず。だけど実際は違う。


「その疑問にはいくつかの説が挙げられとるがその一つが星が落ちて来たという彗星衝突説じゃ」


 研究者の間ではそこそこ有名な説らしいが今ひとつ信憑性にかけると言われる少数意見らしい。そもそも空の星が落ちて来るなんて意味がわからない。大多数の意見は火山爆発により陸地が大きく変動したのだと言われている。火山だってそんな一気に爆発しないんじゃないか?なんて言われているが兎も角真実はわからない。


「んぅぅぼぇ、それは歴史上時折現れたとされる古代人からの情報という説ですよね?」


 突然気持ちの悪いぬちゃついた音がしたかと思うと真面目仕様の男爵の声がした。どうやらちゃんとするからとジーナ目で訴えたらしい。話し始めの音は口に入れられた詰め物を取った音か。キモ過ぎ、うへぇ。


「あぁ、じゃがそれも百年以上前の話じゃから信憑性が薄いと言われておる」

「最後の古代人とされる方の話ですよね?何故証言が正しく残されなかったんでしょうか?」


 カイもその説を知っているらしく口を挟む。歴史の隙間にまことしやかに現れる古代人。人類が魔導具を開発する上で必要な知識を授けてくれると伝説のように言われている。けれど正式な書物としては残されていない。人類にとって重要な案件であるはずなのにおかしなくらい無い。


「言い伝えでは古代人その人がその正体を公式に残す事を拒否していたとされておる。理由は不明じゃがな」


 あくまで伝説として、事実か迷信か曖昧な形で残しておきたかったのだろうか?




 

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