赤の国と呪いの薔薇
初作品となります!
至らぬ点が多いと思いますが何卒よろしくお願いいたします。
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ないしょのおはなし。
この魔法の本で、わたしたちは約束をわすれないの。
わすれてはいけないの。
おねえちゃん、わたしこわい。
約束をわすれないかわりに、なにか大切なものをわすれそう。
大丈夫よ。
きっとわすれたりしないわ。
わすれても、思い出すもの。
わたしの、だいじな────
*
世界で1番大きい国・カルトゥ王国、そう呼ばれていたのは随分昔。
多分1000年くらい前のこと。
今となってはカルトゥ王国はかつての王様の手によって4分割され、赤の国、青の国、黄の国、緑の国と名付けられた。
4国はそれぞれ得意分野と言うか、生活環境が全く違う。
赤の国は魔法使いが多く住み、魔術が発展している。
4国の魔法使いが魔法を学ぶ魔術学園もこの国にある。
青の国は軍隊が多く住んでいる、戦闘に特化した国。
…と言われているが、4国のうち1番謎が多い国でもあった。
黄の国は魔法科学と呼ばれる技術が発展し、工場や機械仕掛けの建物が多く建っている。
年寄り魔法使いや、非魔法使いも便利かつ安心して暮らせる国NO.1と言われている。
緑の国は自然に満ち溢れた人も気候も温かい国で、野菜や果物は主に緑の国で生産されている。
──が、この国には王様がいなかった。
それぞれの国には、王様や女王様がいて国を治めていて、平穏な生活を送っている───はずだった。
赤の国は、今、呪いの力が充満している。
1000年前、王様が国を4分割した理由───それは呪いだった。
貴族の1人が呪いの力を使って国を滅ぼそうとし、王様はある道具を使いその呪いを封じ込め、道具はどこかに封印されたらしい。
しかし呪いは完全には封印できなかったため、4分割して呪いを分散させそれぞれの国で、それぞれの魔法使いが呪いを消していった。
呪いの影響が無く、平和な日々が1000年続いていたが、数年前に封印された道具が何者かの手によって見つかり、封印を解いてしまったのだ。
「……だから、今こうして君たちのように若い魔法使い達に呪いを解く魔法を教えてるんだよ〜」
優しい先生の声が教室内に行き渡る。
私───アイス・キャロルは窓際の後ろから2番目の席で、あたたかい陽の光を浴びながらボーッと先生の授業を聞いていた。
ここは私の通う魔術学園。
名前は特に決まっていないらしい。
学園長はこの赤の国の若き女王様。
若いのに女王も学園長もやっているなんて凄いことだ。
私が国を治めてみろ、すぐに衰退しちゃうわ。
赤の国を含めた4国から集った魔法使い達は、日常生活はもちろん、攻撃、防御、サポート等の魔法を教わっている。
制服はシンプルなシャツに、黒のネクタイ、スカートとパンツ。
そして学園の象徴の黒いマント。
それぞれの国がわかるように胸元には4国それぞれの色の石が付いたダイヤ型のピンバッジをつけている。
基本ピンバッジを付けていれば制服は着崩したりアレンジも自由らしい。
「アイス、アイス。今日も出てるね、アレ」
つんつんと、後ろの席のマーチ・リリィが指で背中を押してくる。
黄色に近いオレンジの髪をツインテールにした、深い青の瞳を持つ少女は私の幼なじみで友人だ。
マーチの言うアレとは、国中の建物に絡み付く大きなバラのツル。
この国の呪いの力が強まっているようだ。
私たちは一刻も早く、あの呪いを解かなきゃならない。
「あの呪いって、魔力を無差別に吸い取って成長してるんだよね。私達もいずれ魔力を吸い取られちゃうのかな」
「…絶対に無いとは言えないものね……でもそのための授業よ、マーチ」
「わかってるよぅ。アイスは真面目なんだから!」
既にこの国では何人か魔力を吸い取られて眠っている人もいる。
早くなんとかしなければならないのだ。
この時の私はまだ知らなかった。
国を襲う呪いの力が、私の人生を大きく揺るがす事に。
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