ナカナカの脅威!
みんないい人だけど、どこかがおかしい?
着ぐるみを着たモンスターも現れて・・・?
鍛冶屋は陽気な男のようだ。
「僕はどうせ、“何もできない”んですよ」
今でも上司から植え付けられた、“無能社員”の烙印は消えていない。
「何…? 兄ちゃん、何もできない・・・?」
鍛冶屋は槌を少し止めて、
「ワッハハ! こんな豪胆な奴は初めてだぜ!? “なにもできない”と自分で言うたあ、なかなかキモが座ってるじゃねえか! ガッハハハ!」
鍛冶屋は何故かおかしそうだ。
「はあ・・・?」
「そうなんです、ボンさんはなんだかおかしな冗談を言って面白いんですよ!」
ククレアもそれに続く。
「いえ・・・僕は冗談は・・・」
「鍛冶屋さんは何をしてるんですか?」
「いや、この『聖剣ボルニア』を叩き壊して、普通の“てつのつるぎ”として売りに出そうかと思ってな」
見れば、鍛冶屋が叩き壊しているのは、見事な装飾品のついた豪華な剣だ。
「『聖剣ボルニア』・・・? なんとなく、名前からすると立派な剣なのでは・・・?」
ボンは恐る恐る聞くが、
「おうよ、『世界七大剣』の一つで、このままじゃ軽く振るうだけで大地を切り裂いちまう!」
「そんな強そうな剣を・・・?」
ボンは訝るが、
「それでは強すぎます、鍛冶屋さん! もっと弱めにしなければ・・・」
ククレアは慌てている。
「ああ、なんとしても“てつのつるぎ”かできれば“木のつるぎ”にまで弱めたいとこだ。このままじゃ売り物にもならんぜ」
ボンには訳が分からず、
「弱くていいんですか? それだったら、誰でも成れるじゃないですか」
と言った。
現世では学校生活からして、ひたすら「努力して鍛えて強くなれ」で会社に入っても「結果を出せ」というだけだった。
すると、鍛冶屋は高笑いし始め、
「ガッハハ! 弱いなら、誰でも成れるって? そんな豪胆な奴は初めてだぜ。あんた、ひょっとして・・・“伝説の臆者”になれるんじゃないのかい!?」
鍛冶屋は豪快に笑った。
ククレアは、
「まあ、鍛冶屋さん・・・ボンさんが、あの『風で枝が揺れただけで、全てを投げ捨てて逃げ出す』とまで称えられた臆病者の“臆者”に・・・?」
???
本当に、どういうことだろうか?
ククレアさんたちは、時折ヘンなことを言う。
「けれど、ボンさんなら、ひょっとして成れるのかもしれません・・・ボンさんは、一見するとどうしようもなさそうに見えて・・・実はとんでもなく弱くて臆病な人です・・・ひょっとすると、この世界の光の全てをどん底に突き落とすという、臆者に・・・」
「酷い言われようだね・・・アハハ」
しかし、そこに魔物が現れた!
それは、狼の着ぐるみをかぶった恐るべきモンスターであった!
「ナカナカだー!!」
「ナカナカが出たぞー、みんな逃げろー!!」
「最弱六皇とされるナカナカが!! もう終わりだあ!!」
町人たちは逃げ惑っていた。
ククレアは、毅然として、
「さあ、ボンさんは逃げてください!」
「ええ? あんなの、強そうに見えないけど?」
いかにも温厚そうな着ぐるみを着た少年である。
「ここは、神官である私が! 生まれた瞬間から、才能によってS級神官となってしまった私です・・・恐らく、奴を瞬殺してしまいますが、ボンさんまで奴らを倒す必要はない・・・!」
「瞬殺できるんでしょ・・・?」
「そうなれば町は終わりです! さあ、逃げて!」
しかし、恩人のククレアを放っていいのか・・・?
狼のような着ぐるみを着た魔物は、その顔や腕はどう見ても人間だが、この世界ではモンスターということらしい。
「ワッハハ! このナカナカはその辺の小学生でも倒せる絶妙な弱さ! この街はいただいたぜ!!」
魔物のナカナカは、『鼻息を子供にかける』というような悪逆を尽くしていた。
さらに、通りがかりの子供が美味しそうにキャンディーを舐めていると、
「おお、旨そうだなあ。おらあっ」
べろん、と信じがたいことにキャンディーを横から舐めてしまった!
「ウワーン、僕のキャンディーが、べちょべちょに! ウワーン!」
泣き叫ぶ子供!
「グッハハハハ、うめえうめえ! キャンディーの横舐めは最高だぜえ? こんなうめえキャンディーが舐めれるなら、いくらでもズタボロに負けてやるぜ? ガッハハハハハ!」
ナカナカは哄笑していた。
ククレアは肩を震わせながら、
「なんという非道! よりによって、子供のキャンディーを横から舐めるとは!」
と憤っている。
「くっ、私が超天才でなければ・・・あんな最弱のナカナカなんてすぐに負けてやるのに・・・! S級神官の私では、軽く触れただけでヤツは失神KO・・・」
ククレアは悔しそうだ。
「ガッハハハ! おお、武器屋があるぞ? おい、親父よ、この『聖剣ボルニア』はいくらだ?」
と聞いた。
鍛冶屋は、
「くっ、これは一万円で売りに出している所だ・・・」
と言うが、
ナカナカは、
「へっ、じゃあこれだけだ。おら、払ってやるぜ!」
と、千円札を九枚、五百円玉を取り出した。
「おらあっ、受け取れ! 鍛冶屋!」
鍛冶屋は頭を抱えてうずくまり、
「なあ!? 一万円の『聖剣ボルニア』を、九千五百円だけ!? これでは、商売あがったり! 店は終わりだ!」
鍛冶屋は悔しそうに呻いていた。
ククレアは、
「なんて残虐なモンスターなの!? い、一万円の『聖剣ボルニア』を・・・たったの九千五百円の支払い・・・? おお、神よ! 哀れみたまえ! この残酷無慈悲なモンスターを! どうすれば、このような行為ができるのでしょうか!?」
ククレアは大袈裟に空中で印を切った。
「グッハハ、神は死んだ! 神はロック音楽と一緒に死んだんだ!」
「いいえ、神もロックも死んでいません! おお、神よ! 哀れみたまえ!」
「ガーッハハハハ! このナカナカ様こそ、世界最弱の一人! 俺様は誰でも倒せる! 俺相手に負けるザコなんぞ、いねえ! つまり、この国は俺のものだ!」
それは、阿鼻叫喚の地獄絵図であった!!
それ以外の何物でもなかった!!
「・・・・待ちなさい、魔物よ!」
そこには怒りに燃えるククレアがいた。
さあさあ、どんどん駄目になるため
★★★★★をつけていきましょう!