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幸せな終わり方  作者: 秋野 雅
第2章
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第2章 何気ない日々~焼肉編~

次の日の11時前、電車から降りて改札をくぐるとそこにはいつもと少し雰囲気が違う私服の森崎君が待っていた。

「お待たせ、待った?」

「少しだけな」

「ならよかった」

そこは今来たところと定番の返しをしてほしかったがそっと心の中にとどめておく。

「何を食べに行くか決めてなかったな」

「そうだね、どうしよっか?」

「何か食べたいものはあるか?」

「焼肉!」

そうして私の好きなものランキング1位の焼肉に決定した。

駅から焼肉屋までは少し距離があるため徒歩で向かう。

その最中森崎君はスマホに目を落としていた。

「何見てるの?」

「ん? ああ、焼き肉屋のホームページで順番を事前に取ってるんだよ」

「意外としっかりしてるんだね」

「意外で悪かったな」

「あ、拗ねた?」

「拗ねてねえよ」

そう言いながらも少しすねているように見える。

焼き肉屋につくと長蛇の列ができていた。

「すごい行列だね」

「だな、でも案外早く入れると思うぞ」

森崎君の言葉通り1時間待ちのところを30分程度で入ることができた。これも森崎君が事前に順番を取ってくれたおかげだ。

席に通された私たちはランチの食べ放題コースを頼んだ。

「最初はやっぱり牛タン頼まないとな」

「そうだね、あとサラダも頼もう」

「何サラダにするんだ?」

「んー、シーザーサラダかな」

そんな話をしつつ最初に食べるものを注文していく。

「森崎君って家族でよく食べに来たりするの?」

「家族ではほとんど来ないな、けど友達とはよく来てたな」

「友達いたの!?」

「友達くらいいるわ! まあ他校だし知らねえよな」

「ごめんごめん、学校で誰かといるとこ見ないからさ」

「委員長は焼肉よく来るのか?」

「私は家族とくることが多いかな」

「仲良くていい家族だな」

気のせいかもしれないがそう言って笑った森崎君の笑顔が少し寂しそうに見えた。

しかし、すぐに牛タンが運ばれてきてそんな考えは吹き飛ばされてしまった。

森崎君が牛タンを1枚ずつ並べていく。裏返すころにはもうおいしそうなにおいが漂ってくる。裏返してすぐだが森崎君はもう箸をのばしている。

「まだ早いんじゃない?」

「ほとんど茶色いし大丈夫だろ」

よく焼く派の私と反対に森崎君は大胆派らしい。

「うまっ、委員長も食べてみろよ」

そう言われ私もよく焼いた牛タンに箸をのばす。

「おいしい、やっぱ焼肉に来てよかった」

「うまいよな、次は何頼もうか」

森崎君はメニューを手に取って目を輝かせている。

「ところでさ、なんで屋上で私の話を聞いてくれたの?」

「急だな、そりゃクラスメイトが死のうかとか言ってたら聞くだろ」

「そっか、ありがとね。おかげでおいしい焼肉を食べれてる」

「どういたしまして」

森崎君は照れ隠しか頼むぞーと言ってたくさん肉を頼んでいく。

肉をおなかいっぱいまで詰め込んだ私たちはデザートを物色していた。

「食べ放題のいいところはデザートも好きなだけ食べれるところだよな」

「わかる!森崎君も甘いもの好きなの?」

「ああ、甘いものは結構食べるぞ」

「食の好みが合うね」

デザートを食べた私たちは会計を済ませ店を出る。森崎君が「今日は奢ってやるよ」と言って全額出してくれた。それに、ちょっと意外な森崎君のかわいい一面も知れて今日の焼肉は大満足だ。

店を出た私たちはバッティングセンターに向かった。

「私バッティングセンター初めて」

「じゃあトップバッターで行ってもらおう」

「私が!? ほんとにできるかな?」

「まあ大丈夫だろ」

やったことがなかった私が初めにすることになり一番遅い90キロを選んだ。

コインを入れて打席に立つ。すると1球目が一瞬で私の横を通り過ぎる。思ったより速い球に苦戦し2球目以降も空振りが続く。三振を10回ほど取られたところで終わった。

「委員長って意外と運動はできないんだな」

そう言って笑う森崎君に少しむっとして「じゃあ見本を見せて」と言いながら森崎君を120キロの打席に押し込む。

「まかせろ」と言って森崎君がコインを入れる。森崎君がバットを振ると同時に気持ちいい音が鳴ってボールが飛んでいく。3球目にしてそのボールがホームランのパネルにあたる。その後も全部打ち返していく。

「上手い! なんでなの?」

「昔少年野球をやってたんだ」

「なるほど、それ先に言ってよ!」

見事な見本を見せられてしまった私は素直に感心してしまった。

森崎君が打ったホームランのおかげでアイスが食べられるらしい。

二人で分けるタイプのアイスを選んでくれて二人で食べる。

「懐かしくておいしい」

「うん、おいしいな」

アイスを食べながら私は特別じゃないけど何気ない時間の心地よさを実感した。

「来週も遊びに行かない?」

「いいぞ、どこに行きたい?」

「んー、カラオケ!」

「カラオケは個人的にパス」

「えー、じゃあボウリングは?」

「いいな、ボウリングにしよう」

そんなこんなで来週の予定を決めて私たちは駅へと向かう。

「今度は13時でいいか?」

「うん、そうしよう」

そんな話をしていると駅が見えてきた。「またね」と言って私たちは改札をくぐってそれぞれのホームへ向かった。


学校生活のほうは今まで通り私は本を読んだり委員長としての仕事をしたりしていた。森崎君はというと一人でどこかに行って授業をさぼったりしていた。私は学校でも話したかったが休み時間になると森崎君はどこかへ行ってしまうため挨拶くらいしかできなかった。しかし、放課後に私が屋上で黄昏ているとたまに森崎君がやってきて話すようになった。


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