表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

6

あの夜から数日経った。あれからフェルナンドとは一度も顔を合わせていない。同じ屋敷で暮らしているのに、彼の気配すら感じない。変な感じだ。


だが、正直安堵する自分がいる。今彼と顔を合わせても、どんな顔をすれば良いのか分からない。


「ロゼッタ様、おはようございます。旦那様から伝言がございます。今夜ラングハイン伯爵様のお屋敷にて夜会が開かれるとの事です。それに伴い準備なさるようにと。夕刻にはロゼッタ様を迎えに、屋敷に一度お戻りになるそうです」


ロゼッタはため息を吐く。こういう時だけ、夫婦だという事をひしひしと実感する。夜会などへの出席は、余程の事情がない限り必ず夫婦で参加せざるを得ない。


また、女性達から妬み嫉みを向けられる……。


そんなに欲しいなら貰って欲しいくらいだ。箱に詰めて、なんなら綺麗に包装までしてあげてもいい。


いっその事催し事の景品として……。


きっと大人気間違いなし!だろう。

考えていたら愉しくなってきた。だが現実はそんな事は出来ない。ロゼッタは直ぐに現実に引き戻される。


諦めて準備しよう……。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ようやく挨拶も回りきり、ひと息を吐く。広間を見渡すと、いつもの様に女性達からの視線を痛いくらい浴びている。


今フェルナンドはいない。一通り挨拶が終わるや否や、姿を消した……いつもの事だ。

別に一緒にいたい訳ではないが、この状況で一人にさせられるのは正直辛い。


遠巻きにこちらを見ている者達はいいが、我の強い者になると直接ロゼッタを攻撃してくる……この前の平手打ちの様に……あれは地味に痛かった……。



「あら、ロゼッタ様。お一人ですか」


あー……出た。また、この女性だ。例の平手打ち女だ。


「はい、まあ……」


見れば分かりますよね?寧ろ一人の時を狙って話しかけてますよね?と思うが口を噤む。


「どうかしら?フェルナンド様と別れる気には、なりまして?」


「……」


凄い顔だ……悪魔の形相とでも例えようか……ロゼッタは笑顔が引き攣る。


今直ぐにでも離縁してあげたい気持ちは山々だが、何分政略結婚なので。しかも両親達ごり押しの。そんな易々別れる事などできる訳がない。


どうしよう……このままだと、また平手打ちを喰らうかも知れない。


ロゼッタが戸惑っていた時だった。ツカツカとこちらへ歩いてくる新手が見えた。見るからに美女は、ロゼッタの前で立ち止まると、これまた悪魔の形相で睨んでくる。


「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」


これは、絶対平手打ちが来る‼︎


反射的に目を瞑った。だが……。


「っ⁉︎」


冷たいっ‼︎


次の瞬間きた衝撃は痛みでは無く、冷たさだった。目を開けると目前には、空のワイングラスを持った見知らぬ美女が、いやらしい笑みを浮かべていた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ