表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伏魔団地  作者: 真暗森
【第0号棟  悪泥啜る混沌の住民】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/101

第007号室 魔鏡



 陰鬱と薄暗いマンションの中程、カタカタと整備不良の換気扇が音を立てて回転し、寿命間近の蛍光灯が乾いた放電音と共に点滅しながら、青白い光で共用のランドリールームを照らし出す。そんな中、スクール水着にランドセルな小夜(さや)は、着替えが欲しいと勝手に洗濯物をひっくり返していた。


 洗濯機に溜まっていた水で身体に付着したガソリンと赤錆を(そそ)ぎ、バスタオルで拭い取る。送風機の前に座り込んで髪を乾かして、白地のヨレヨレになった大きめのパーカーを羽織り、革靴(ローファー)と紺色のソックスを脱ぎ、水玉状に穴の開いた偽ブランドのゴムサンダルに素足で履き替えた。


 流し台の鏡に姿を写し、髪型が決まらないと毛先に指を絡めて(ねじ)る。ガソリンに錆水を被ったのだから、これは一度トリートメントしなきゃ駄目ねと、団地内サークルの草野球チームのロゴが入った、黒いベースボールキャップを深く被り、取り敢えず(つくろ)った。


 帽子の角度や着こなしの微調整をしていると、突然鏡との同期が途切れ、鏡の中の自分が睨み付けてくる。血涙を流し、顔面の皮膚が断裂するまで口を広げた鏡の中の(さかさ)小夜が、絶叫しながら鏡を突き破り両手を(すなお)小夜の首に廻す。


 順小夜がフフンと鼻を鳴らしながら一歩踏み出すと、首を狙った逆小夜の両手が打点をズラされ順小夜の背面で交差する。殴りつけるように順小夜が鏡から出てきた逆小夜の襟元を両手で掴むと巴投げ、自分はランドセルで受け身を取りつつ、鏡から引き摺り出した逆小夜の脳天をランドリールームの床に叩き付ける。


「ぱんぱかパ~ン………☆」


 ずっと鏡の中に居られれば、どうしようもなかったのだが、相手から出て来てくれるのなら話は別で、海老反りで跳ね上がる逆小夜の首を小脇に抱え、ジャンピング・ネックブレーカー・ドロップ、首を圧し折る。


 なお立ち上がる逆小夜の鳩尾(みぞおち)へ前蹴りから透かさずタックル、両足を抱え上げお尻からドラム洗濯機に押し込む。


 ドラムからはみ出した足首を掴んで投げ込み、這い出そうと抵抗しドラムの縁に掛けられた逆小夜の指が、勢いよく閉められたガラス扉に挟まれて(ひしゃ)げる。それでも足掻(あが)く逆小夜へタックルするように扉の開閉を繰り返し、完全に逆小夜を洗濯機へ閉じ込めると、洗濯機の電源を入れ適当にモードを選択、洗濯を開始する。


 金切り声を上げる逆小夜が収まった洗濯機の扉にロックが掛かりドラムが回転を始める。徐々に加速する洗濯ドラム、暴れる逆小夜も直ぐに遠心力で押し付けられ指一本動かせない様子、それにしても回り過ぎでしょうと、洗濯機のモード表示を見て驚愕する。


団地脱出速度乾燥(きょうせいたいきょ)


「ウソ………!?ここから出られるってこと………っ?」


 一瞬都合良く解釈し、期待に胸が高鳴ったが、際限なく加速を続ける洗濯機と、その中で何処までも薄く引き伸ばされていく逆小夜を見て、これは使えないでしょうと冷めきってしまう。


「フフン、これはない………」


 辺りの空気がざわつき途端に膨らみ始める洗濯機、ドラムの中が輝きミラーボール状態へ、プラズマやレーザー光が眩しく弾けたので、ちょっとこれは離れた方が良さそうと、少しだけ行く末が気になりながらも(きびす)を返しサイドステップ。直後ドラムの中心がスーパーノヴァしてガンマバースト、マイクロブラックホールが誕生と同時に消滅して暗転………


「あら………?」


 ………ランドリールームの一画が直径4(メートル)の球状に刳り抜かれ、重力波が団地中を駆け巡った。


「ぎゃ!!!」


 幽霊や悪魔、怪物に異形だけではなく、人知を超えた意味不明、理解不能な家電や雑貨、衣服に食べ物と、人々を(おとし)めること妥協無しと、この団地は生意気かます少女へ言葉無く示したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ