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伏魔団地  作者: 真暗森
【第1号棟  名状しがたい水底の怪影】

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15/101

第015号室 テレビ



 (ほこり)の積もったブラウン管テレビを食い入るように見詰める小夜。瞬き無く、充血し、濁り切った瞳で食い入るようにノイズの混じった画面を覗く。


 今日は団地放送局の独占配信、女児向けアニメ番組、モア・トリッパー!の再放送。団地の平和を目指すアイドル達が織りなす群雄割拠の大立ち回り、可愛らしく歌って踊って殴り合う。


 クール担当なお姉さまアイドルのスワロフスキーでデコレーションされたカタナ♡がハートの刃文をキラめかせ、悪役を血飛沫(しぶ)く噴水へ変えたなら、キュートなツンデレアイドルの五芒星の銃口から放たれるシューティング☆スターが、相手を撃ち抜きポップアップ!夜空にキラめく星屑へ変える。


 頭のネジをお母さんの子宮に忘れてきたご機嫌なハツラツアイドルの主人公が小夜特別のお気に入り。魔法少女準拠のマジカル♪ロッドを常に持ち歩いてはいるが小夜の知る限り使われた事は一度もなく、バレエやフィギュアスケートを彷彿とさせるキレッキレの足技で、キラめくエフェクト過多な必殺技を画面狭しとブッパなす。


 時々テレビから、不意を突くように流れ弾が飛び出して来るので、巻き添えを食らわないよう爆弾処理用のライオット♰シールド越しに観ていないとミンチになるが、面白いので観るしかなかった。


 エンディングが始まると音声が途切れ途切れになり、ゆっくりと画面が暗くなっていく。


「ちょっと、ちゃんと()いで」

「え~も~、終わったでしょ?」


 小夜の叱責に自転車を改造して(こしら)えた発電機を漕いで、テレビに電力を供給していたボブが小さく肩を竦める。


「まだまだ、まだ、終わってないから!」

「いいや、おしまい!疲れたよも~」


 機能していないハンドルから手を離し、息も絶え絶えとワザとらしく厚い胸板を上下させるボブ。


「ウソつき!30分自転車、漕いだくらいでその筋肉が疲れるわけないでしょう?」

「買い被りだぞ~、おっと!」


 盾から身を乗り出し詰め寄ろうとした小夜の胸倉をボブが乱暴に掴むと、テレビの中から突き出された日本刀がキスマークを小夜の身体へ刻む前に引き寄せた。


「チッ………「「まった、ミってね~~!!!」」」


 今のは危なかったと肝を冷やした二人、いそいそとテレビの上に暗幕を被せて麻縄でグルグル巻きに封印した。


「さて、そろそろ行こうよ!」

「そうね」


 金属バットを構えたボブを先頭に安アパートの一室から繰り出す。早速、逃げ場のない通路を突進するゾンビ水牛に出くわすとホームランスイング、バットがひん曲がるほどの衝撃は相手の首を砕き跳ね返す。四肢をピンと伸ばし仰向けに倒れたゾンビ水牛を飛び越えて進む。


「貯水池を探すんだったっけ?」

「ええ、大体見当は付いているのだけどサメとかワニとか、ヒトガタとかが潜んでるから、まず装備を整えないとね」


 手当たり次第に部屋へ上がり込んでは箒で掃くように悪霊を払って、目ぼしい物がないか物色する。半日も繰り返せばウエットスーツに足ヒレ、酸素ボンベと必要そうな物は粗方そろえる事が出来た。



挿絵(By みてみん)



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