31石 20万人記念配信 前半
次回、謎のシルエットの正体が判明。
フィクションです。
31石 20万人記念配信 前半
由亞の家で遊んで、由亞やその友達に元気をもらった余は帰宅した。
家ではレイラとエルミナが何時ものように迎えてくれ、余も何時ものように返事を返す。
そして3人で夕食を食べてから、余は配信部屋に移動する。
あと30分で20万人記念配信開始だ。
何時もの衣装に着替えて余は準備万端。
エルミナもパソコンの前で待機中。
「あとはレイラか」
「すぐ来ると思うよぉ」
「うむ」
そうしているとレイラが部屋に入ってくる。
「レイラ、準備出来たか……って」
そこでレイラが何時も着ているメイド服とは違うメイド服を着ていることに気が付く。
「そのメイド服は……」
レイラが着ていたメイド服には見覚えがあった。
というか、よく知っている。
「はい。帝室メイド隊のメイド服です。私の衣装といったらやはりこれだと思ったので、作ってみました。といっても見た目だけですが……どうでしょうか?」
そう、レイラが着ていたメイド服は帝室メイド隊のメイド服だった。
帝国に居た頃はずっとレイラが身に纏っていた服。
「よく似合っている。なんだか懐かしいな」
「本当にねぇ。師匠のその姿は久し振りに見たよぉ」
「ありがとうございます。そうですね。私もなんだか懐かしい気分です」
そう言ってレイラは微笑む。
やはりレイラにとって帝室メイド隊のメイド服は特別なのだろう。
「これでレイラも揃ったし準備万端か」
「うん」
「問題ありません」
「よし、ならば配信開始まで待機だ」
余はパソコンの前に座る。
エルミナも大きい方のパソコンの前に座り、その隣にレイラが待機。
目の前のモニターを見て配信ページのコメントをチェックする。
『待機〜』『ワクワクが止まらん』『待機中』『もう20万人かぁ。早いなぁ』『待機でーす』『さけるイカ:待機してますよ!』『試しに覗いてみたらもう5000人待機してて草』『お前らはえーんだよ!』
確かに早い。
まだ30分あるのに5000人も待機しているし、当然のようにさけるイカが混じっている。
文香の奴、一体何時から待機していたのやら……まさか本当に昨日からってことはないよな?
流石にそれはないだろうと思いつつ再びコメントを見る。
『まじで重大発表ってなんなんだ?』『超気になるよな』『配信3回目で重大発表とは』『まさか活動停止だったりして……』『さけるイカ:フフフ……』『違うだろ』
さけるイカは重大発表の内容を察しているだろうから優越感にでも浸っているのだろうな。
『引退とかはないと思う。サムネにシルエットが載っているし』『あのsilhouette』『いや待て、あのsilhouetteは……?』『ヤツ……?』『ヤツ?』『その流れやめろw』『幻聴が聞こえている人が居ますねぇ』
なんかどっかでこの流れ見たことあるような……まぁいいか。
「しかし、本当にサムネのシルエットはなんなんだろうな』『ゲストか。はたまた新メンバーか』『楽しみだなー』
リスナーたちは重大発表やサムネのシルエットが気になっているようだ。
作戦は上手くいっているな。
そうしているうちに時間が経ち、配信開始が迫ってくる。
「そろそろだな」
『来るぞぉぉぉぉぉ!』『はよはよ!』
視聴者数は既に1万5000人を超えて、前回と同じように多くの高評価がされている。
相変わらず早い。
そして時間がくる。
「配信開始だ!」
「はぁい!」
「はい」
21時になると同時に配信が開始し、前回前々回と同じように配信画面にファゴアット帝国の国旗が表示され、フリーBGMが流れ始める。
「きたぞぉぉぉきたぞぉぉぉぉぉぉ!』『きちゃああああああああ』『さけるイカ:フォオオオオオオオオオオ!!』『何時もの国旗』『そして何時ものBGM』『始まりだッ!!』『ミッションスタート!』
少ししてBGMの音量が小さくなり、ファゴアット帝国の国旗が消えて配信画面に余の姿が映った。
「皆の者、ウルオメア・ファゴアットだ。今日も来てくれて嬉しいぞ」
『こんばんはー』『こんばんわ!』『こん!』『当然来るぜ!』『毎回来るわ』『ワイはウルオメア様を拝めて満足や』『俺も会えて嬉しい!』『相変わらずお美しい』
コメントが爆速で流れ続けて視聴者数が跳ね上がる。
もう3万人を超えた。
それでもなお増え続けている。
前回よりも視聴者数の増える速度が速い。
良い感じだ。
流れ通りにいこう。
「今回も画面下に表示されている配信タグの#ファゴアット帝国放送局でツブートしてくれると助かる」
『おk』『俺に任せとけぇぇ!』『今日もトレンドいけるやろ』『実はもう日本のトレンド20位に入っているぞい』
「む? もうトレンド入っているのか」
『マジだ』『はえ〜すっごい』『はやすぎィ!』
エルミナからもメッセージが飛んできてトレンドに載っていることが確認出来た。
「どうやら本当にトレンドになっているようだ。皆の者、ありがとう」
『すげ!』『いえいえ』『当然よ!』『もっと上げるゾ』『やりますねぇ!』
「うむ。では、皆も気になっていることについて話すぞ」
『おぉ!』『いきなり重大発表くるか?』
『今日は事前に告知していたように重大発表がある……しかもふたつ」
『なにぃ!?』『ダニィ!?』『二つ??』『1つだけじゃないのか!』
やはり驚くよな。
「まずひとつ目を発表する」
『……』『いきなりか!』『なんだ?』『シルエット?』『最初からクライマックスか?』『シルエットの人くる?』『正体をはやく見せるんだよぉ!』
「なんと……来週のタオ手公式生放送出演が決定した!」
『え?』『えぇ?』『マジ?』『どゆこと?』
「マジだ。タオ手のRD社から正式に出演依頼が来たのだ』
そう余が言うと――
『うおおおおおおおおおおお!!』『すげええええええ!』『マジで!?』『やりおった!』
コメントが爆発する。
「まさか余も公式生放送に呼ばれるとは思ってなかった」
『だろうなぁ』『個人で公式生放送出演ってすげぇ』『まだ配信3回目の初心者やぞ』『初心者(元皇帝』『やりますねぇ!』『やりますメェ!』『流石に公式もウルオメア様を放っておく訳はなかったか』
そこで気になるコメントが流れる。
『……これってもしかしてウルオメア様が個人じゃなくて公式に所属するってこと?』『個人じゃなくなるのか』『元から公式だったんじゃ?』
これはちゃんと言っておいた方がいいだろう。
「いや、そんなことはない。余は個人勢だし、これからも特に理由がなければ個人勢としてやっていくぞ」
『そうか』『結局個人なのね』『公式になったとしても俺は応援するけどな』『ワイもや』『さけるイカ:僕も!』
「うむ。さて、何故余がタオ手の公式生放送に出演することになったのかの経緯を話そう」
『ほほー』『公式からただ連絡がきた訳じゃないのか』『なんだゾ?』
「実は余は配信を開始するにあたってひとつの不安要素があった」
『不安要素?』
「それは収益化に関することだ」
『あーなるほど』『確かになぁ』『どゆこと?』『おせーてくだせい』『権利問題だ』
「うむ、その通り。余の権利はタオ手の公式であるRD社が持っていると言われている」
『つまり権利を持っているRD社に許可をもらわないと収益化が出来ないかもしれないということですね』
「そういうことだ」
『fmfm』『そういうことね』『さけるイカ:RD社許さない!』『理解した』
いや、さけるイカはRD社側の人間だろうが。
しかも、権利者本人だし。
「そこで余は配信を開始する前に事前にRD社に連絡をしておいたのだ」
『えらい』『まぁウルオメア様として活動するなら当然か』『いいゾ〜』
「そんな訳でRD社からの連絡を待っていると、前回の配信が終わった後にRD社から返事が返ってきた」
『おぉ』『動き早いな』『RD社としてもウルオメア様の存在は無視出来なかったんだと思う』『だな』『普通は個人にそんな早く返事返ってこないだろ』
「RD社からの連絡の内容は簡単に説明すると、余の活動の許可を前向きに検討しているからRD社に来てくれといった感じだ」
『ファッ!?』『いきなり?』『前向きに検討ってマジかよ』『検討しているだけだゾ』『政治家みたいな』『いきなり会社に呼ぶってすごいな』『RD社ってフットワーク軽いのかも』
「そんな訳で余は秘書とともにほいほいRD社に足を運んだ」
『秘書?』『ホイホイ♂』『ウルオメア様、秘書なんていたのか』『ウルオメア様レベルの人間なら当然よ!』『ホイホイチャーハン』『マジで何者なんだよ……』『ウルオメア様はなにでRD社に行ったんだ?』
「電車で向かったぞ。タクシーで行くほど余裕はないのでな」
『マ?』『【速報】ウルオメア様、電車に乗る』『秘書が居るのにタクシー乗る余裕無いのか(困惑』『てか、RD社の最寄り駅ってあそこだよな? 俺、毎朝通勤してるんだけど』『俺も』『じゃあ、もしかしてウルオメア様にリアルで会えた可能性があったってこと?』『マジかよ』『なんか興奮してきたな……ワイ関西やけど』『なんでだよ!』
まぁ昼過ぎのことだから朝通勤の人間とは会わないと思うが。
そうだ。
あのナンパ男の話でもしておくか。
「そういえば電車を降りて駅を出たら知らない男に声を掛けられてな」
『……は?』『は?』『はあ?』『さけるイカ:は?』『kwsk』
「なんでも飲み物を奢ってくれるらしく、予定の時間までまだあったから余と秘書の分のタピオカドリンクを奢ってもらって3人で立ち話をしたぞ」
『コロス!』『ゆるさん』『ゆ゛る゛さ゛ん゛!』『殺す』『はっ倒す!』『はい、綿流しの刑』『さけるイカ:死死死死死死死死死死死死死死』『ワイもお話ししたい』『邪剣夜を抜く時がきましたねぇ!』
嫉妬と怨嗟のコメントが多く流れる。
てか、さけるイカとは実際に会って会話したんだから良いだろう。
そこでエルミナからのメッセージが表示される。
どうやら配信タグがツブヤイターの日本トレンド1位になったようだ。
しかも、余の名前やタオ手公式生放送までトレンドになっているらしい。
そのお陰で視聴者数が爆上がりしている。
配信開始時は3万人ほどだったのが、今は倍の6万人になっていた。
半端ない速度だ。
「皆の者、どうやら配信タグがツブヤイターの日本トレンド1位になったようだ。ありがとう」
『うおぉぉ!』『やっぱりいったか!』『当然だな』『毎回狙っていこうぜ!』『さけるイカ:これもウルオメア様の力です!』
「それだけではなく、しかも余の名前やタオ手公式生放送までトレンドになっているらしい。そこから多くの人がこの配信に流れ込んでいるようだ」
『うわっマジじゃん!』『6万人超えてる!』『もう伝説だろ』『公式生放送のタグから来ました』『トレンドからきますた』『初見なんですけど、状況掴めない。なんでウルオメアが居るの? VTuber?』『ネットにまとめられてるから初見はそっち見ながら見ろ』『日本ってこんなに人居たんだなぁ』『ワイが古参やぞ!』『いいゾ〜これ』『さけるイカ:僕が最古参だよ!』『俺なんだよなぁ』『もう古参面してて草』
「うむ。皆の者、改めてありがとう。初見の者には悪いが話を続けさせてもらうぞ」
『了解!』『りょ!』『まとめ教えてくれた人ありがとう』『あい』『どうぞどうぞ』
「さて、時間になったので余は秘書とRD社に向かった訳だが、余は驚いた。RD社のビルはあんなにもデカイのだな。もっと小さいビルを予想していた」
『あーね』『あれね』『わかるわ』『俺も初めて見た時驚いたわ』『マジデカイよな』『存在感ハンパない』
「RD社のビルに驚きつつも余は入り口から中に入ろうとしたのだが、警備員に止められてしまった。まぁ少し怪しい姿をしていたのでな」
『ウルオメア様の怪しい姿』『どんなのだ?』『さけるイカ:警備員の名前分かりますか?』
警備員を特定しようとするな。
もし特定出来たとしてどうする気なんだ。
「すぐに受付の人間が警備員の誤解を解いてくれたので問題なかったぞ。そのまま受付の人間に案内されて余と秘書は応接室に通された。そこでRD社側の人間を待っていたのだ」
『受付有能』『グッド受付』『ナイス受付』
「待っていると扉がノックされてふたりの人間が入ってきた。ひとりはRD社の代表の門谷。もうひとりは美馬」
『えぇ!?』『RD社の代表かよ!』『いやいやいや、代表なんかより美馬の方がヤバイだろ!』『あの一切表に出てこない美馬が出てくるなんて』『美馬って誰?』『美馬はタオス関連のシナリオライター兼キャラクターデザイナーだゾ』『つまりウルオメア様の生みの親』『さけるイカ:生みの親……』『普通に考えてどっちもヤバイだろ』『ただの個人に出てくる人間じゃない』『そこはウルオメア様だから』『流石はウルオメア様』
「余も最初は驚いたが話を聞いて納得した。どうやら美馬が余の初回放送を見てファンになってくれたようでな。色々動いてくれていたらしい」
『美馬がファン』『美馬、ウルオメア様のファンなのか』『生みの親すら魅了するウルオメア様は流石やでぇ』
さけるイカの姿を想像して、生みの親って表現をするのはヤバイのだが。
「その結果、RD社としては余が今後タオス関連のイベントに出演してくれるなら、余の活動を許可してくれるらしい」
『はー』『なるほど!』『交換条件ね』『美馬有能すぎる』『それで活動の許可をくれるRD社の懐がデカイな』『まあウルオメア様を公式のイベントに呼べるなら十分なリターンだろ』『さけるイカ:ドヤッ』『それで公式生放送にウルオメア様が出演することになったのね』
まぁ交換条件は表向きの理由なのだが。
あと、さけるイカはドヤるな。
正体バレるぞ?
「うむ。そんな訳で活動の許可を手に入れて、早速来週のタオ手の公式生放送に出演することになったのだ」
『おめでとう!』『おめでとうございます!』『すげー』『公式相手に個人で交渉するとは』『ワイのウルオメア様なら当然の結果や!』『お前のではない』
「皆の者、ありがとう」
『てことは、じゃあ収益化出来るのでは』『あ、そっかぁ』『もしかしてウルオメア様に投げ銭出来る?』
「うむ。次回の配信に間に合うかは分からないが、現在収益化の申請中だ」
『おおおおおお!!』『とうとう俺の財宝を解放する時がきたか!』『ワイの金でウルオメア様を潤わせるわ』『ちょっと銀行行ってくる』『ちょっと銀行襲ってくる』『さけるイカ:僕のお金でウルオメア様をサポートするよ!』『イカはやばそう』
どうやら活動資金集めは問題なさそうだな。
早く収益化をして、3人での息抜きをしたり配信設備を整えたりガチャをしたいものだ。
まぁ公式生放送の出演料の方が先にもらえそうだが。




