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3石 俺がウルオメア!?

3石 俺がウルオメア!?




 意識が急激に浮上した俺はソファーから立ち上がって無言で洗面所に向かう。

 そして鏡に映る自分の姿を見た。


 足元まで伸びる艶のあるサラサラのロングストレートヘアで紫色の髪。

 どこまでも見通しているかのような鋭い金色の瞳。

 人外じみた白く整った顔立ち。

 170センチを軽く超える長身のすらっとした身体。

 そこには間違いなく【ウルオメア・ファゴアット】が立っていた……俺の部屋着を着て。


「マジかぁ……」


 高く澄んだ声が俺の口から出てくる。

 俺は自分がウルオメアになっていたことをどうしよもなく理解させられていた。


 目の前の鏡に映る姿もそうだが、俺の頭の中にはウルオメアの記憶や経験、そして力の使い方が叩き込まれているからだ。

 しかし、だからといって完全なウルオメアなった訳でない。

 中身は諏訪 葵である俺だ。


「はぁ……」


 試しに俺は手の平に魔力を集めて魔法を使ってみる。

 すると、金と銀の球体が生まれた。


「マジかぁ……」


 とりあえず、その球体を消す。


「現実で魔法使えてどうすんだよ……」


 使い道なんてすぐには思い浮かばない。


「というか、これからどうすればいいんだよ!」


 どうやって生活すればいいんだ?


「……ん?」


 よくよく考えたら俺はほとんど家から出ないし、働いてもいない。

 高校を卒業してから友達とも疎遠になっているし、親父も仕事で海外生活だから帰ってこない。

 食事や生活用品はネットで注文するか髪と顔を隠してコンビニでも行けばいい。


「なにも困らないぞ?」


 今の状況を悲観するよりも、むしろ大好きなウルオメアになれたことを喜ぶべきでは?


「……」


 TSなんて些細な問題では?


「ふぉ……」


 俺は今、ウルオメアなんだ!


「フォオオオオオオオオオオオオ!!」


 俺は喜びの感情を爆発させて奇声を上げていた。

 鏡に映るウルオメアは完全にキャラ崩壊している。

 なんか面白い!


 しかし、そこで俺のズボンがずり落ちた。


「あ……」


 ウルオメアには似合わないトランクスが露わになる。

 サイズが合わずにトランクスまでずり落ちそうなったので、紐で無理矢理縛って固定する。


「ダセェ……」


 その姿を見て俺は冷静になった。

 冷静になったところで疑問が浮かぶ。


「どうしてウルオメアになったんだ?」


 考えられる原因はひとつ――タオ手だ。

 だって、『ウルオメア・ファゴアットになりますか?』なんて確認画面が出てきたし、間違いないだろう。


「でも、タオ手をプレイしていて作中のキャラになったなんて話聞いたことないぞ?」


 とりあえず、スマホを確かめてみようと思った俺は洗面所からリビングに移動する。

 ソファーの上にスマホが転がっていた。

 それを手に取って画面を付けてタオ手を起動する。


「なんだこれ?」


 起動したタオ手の画面が前とは大きく変わっていた。

 前あったストーリーやクエストとかシステムなどのいくつかの項目がなくなっている。

 今あるのは編成、所持一覧、強化、ガチャの4つしかない。

 ガチャもウルオメアピックアップガチャではなくて、帝国ピックアップガチャに変わっている。

 期限は無限だ。


「どうなってんだ?」


 試しに所持一覧を開くとウルオメアのアイコンが5個とガチャで出た装備と素材が並んでいる。

 何故かチュートリアルで手に入れたキャラクターや装備は消えていた。


「ウルオメアがちゃんと残っているから良いけど、なんでチュートリアルのやつ消えてんだ?」


 まぁウルオメアがあったところでゲームは出来なさそうだが。

 よく見ると先頭のウルオメアに自身という文字が書いてあった。


「これはこのウルオメアに俺がなっているってことか?」


 編成を開いてみると、メインがウルオメアになっている。

 色々触ってみたがメインは変えられないようだ。

 サブは弄れたが、メインと同じキャラクターは組み込めないのでなにも出来ない。


「やっぱりこのメインのウルオメアが俺なのか」


 ふと疑問に思う。

 ウルオメアに他のウルオメアを重ねたら俺はどうなるのだろう?


「すごい気になる」


 好奇心が疼き、ワクワクしてくる!

 俺は強化画面からメインのウルオメアにウルオメアを重ねてみることにした。


「まず1体」


 ウルオメアを1体重ねた瞬間、なんと俺の力が僅かに増した!


「おお! ちゃんと俺自身が強くなるのか!」


 すげー面白い!

 でも、俺の中にあるウルオメアの記憶が今の俺の力を弱いと判断した。

 どうやら人間だった頃のウルオメアの全盛期よりも今の俺は弱いらしい。

 まぁレベル1だしなぁ。

 もしかしてLRにしてレベルも上げれば人間のウルオメアに届くか?


「やってみよう」


 そう思った俺はどんどんウルオメアを重ねていく。

 すると、力がどんどん増していき――5体目を重ねた瞬間、今までと明らかに力の強さが変わっていた。


「すごい力だ!」


 流石はLRだ。

 今のステータスを確認してみよう。


名:創滅女帝ウルオメア・ファゴアット

Rare:LR

Lv:1/100

HP:7500 MP:12500

属性:【創】【滅】

【筋力:S】【敏捷:S】【器用:S+】

【耐久:A+】【魔力:S+】【幸運:S+】 


「おお!」


 ちゃんとLRになってる!

 名前まで変わってるよ!

 イラストも変化してる!

 カッコいいなぁ。

 てか、ステータスつよッ!

 S+って……これ神化したらEXいくんじゃないか?


「レベル上げるか」


 俺はガチャで出た装備を消費して、一気にレベル最大まで上げた。


「力が高まる……溢れる……!」


 今の俺は間違いなく人間だった頃のウルオメアの全盛期と同じ力を持っている。

 ステータスを見てみよう。


名:創滅女帝ウルオメア・ファゴアット

Rare:LR

Lv:100/100

HP:22350 MP:37250

属性:【創】【滅】

【筋力:S】【敏捷:S】【器用:S+】

【耐久:A+】【魔力:S+】【幸運:S+】 


 見て分かる数値はHPとMPだが、上がりすぎだろ。

 こりゃ確かに1期のラスボスになるだけあるわ。


「さて、次は神化だ!」


 俺の予想では神化すれば2期の神になったウルオメアと同じになると思う。

 つまり――


「俺は神になるのか」


 なんか実感ないなぁ。

 でも、神になった記憶が俺の中にあるんだよなぁ。


「とりあえず、やってみよう」


 俺はガチャから出た素材を消費してウルオメアを神化させる。

 その瞬間、力の質も強さも変わった。

 前とは比較にならない。


「というか、なんか身体が光ってる!?」


 スマホを持ったまま、再び洗面所に向かう。

 1秒もかからずに洗面所に移動した。

 そして鏡を見る。


「やっぱり光ってる!」


 全身からオーラのような光が溢れ出ている。

 特に紫の髪と金色の瞳が強く輝いていた。

 しかも背中に金と銀の光の翼が生えている。


「うおぉぉ! カッコいい……けど、生活に困るぞこれ」


 そう思うと頭の中に神の力の抑え方が浮かんでくる。

 その通りにすると光は消えた。


「オンオフ可能なのか。良かった」


 それにしても、さっきの力はすごい。

 ウルオメアの記憶にある全盛期と同じ力があった。


「そうだ。ステータスを見てみよう」


 スマホを操作してステータスを表示する。


名:創滅神ウルオメア・ファゴアット

Rare:LR

Lv:100/110

HP:29800 MP:44700

属性:【創】【滅】

【筋力:S+】【敏捷:S+】【器用:EX】

【耐久:S】【魔力:EX】【幸運:EX】 


「強ぇ!」


 イラストもカッコいいし、とうとう器用と魔力と幸運がEXに到達している!


「これマジで超越神化したらどうなっちゃうんだ?」


 ウルオメアの記憶にもこれ以上の力を持った覚えはない。

 マジで未知の領域だ。

 ……だが、俺はワクワクしている。

 力に酔っている……訳ではないと思う。

 なんていうか……俺はウルオメアがどこまで強くなれるのか知るのが楽しみなんだ。


「だから俺に見せてくれ。君の可能性を」


 俺は装備を消費してレベルを上げてから、素材を消費してウルオメアを超越神化させた。

 強制的に力が解放される。

 先ほどよりも強力な力が内から溢れ出し、全身が輝き、背中から4枚2対の金と銀の光の翼が広がった。


「これは……美しい」


 俺は自然と涙を流していた。

 喜びや感動といった感情がごちゃ混ぜになって心の中に渦巻く。

 それを抑え込んで涙を拭ってから超越神化状態を解除する。


「……流石はウルオメアだ……って、もう俺がウルオメアなんだよなぁ」


 とりあえずステータスを見よう。


名:創滅超越神ウルオメア・ファゴアット

Rare:LR

Lv:110/120

HP:39750 MP:47700

属性:【創】【滅】

【筋力:EX】【敏捷:EX】【器用:EX】

【耐久:S+】【魔力:EX】【幸運:EX】 


「うわぁ……」


 耐久以外のすべてがEXになっている。

 まさにチートキャラって感じだ。

 もう俺ひとりで世界征服出来そう……しないけど。


次回は再びガチャです。

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