ミレイ「なぜ家にあるお金をつかわないの…キッチンの中に食材だってあるって説明したのに…」
さて、どうしようかな。
ミレイと別れ、チートハウスに下りてきた。
家の内装は、ミレイと過ごした場所に作ってくれていたミレイお手製のお部屋と同じなので特に迷うことはない。
衣食住の住は確保出来ているわけだから、次は衣、食の充実を図るべきだろう。
しかし、考えてみたらお金がない。
「あれ、どうしよう」
なんかそういうのミレイに聞くの忘れてた。チートに心浮かれてたのもあるだろうか。
とりあえず、お金を稼ぐ方法を考えてみよう。うん。
さすがに下りた初っ端からミレイを呼びつけるのはためらわれた。
まずこの世界に慣れるまではできるだけ家から出ないほうが無難な気がする。
以前いた世界よりも明らかに危険であるとこは鏡でのぞき見た経験から知っている。
だからこそ、自らの貧弱スペックが不安だったわけだし。
となると家から出ずに出来る仕事を探す必要があるが、なにかいいものはないだろうか?
部屋の中を見渡してみるも、あるのは大きなベッドとテーブルと椅子そして窓際に大きめのソファ。
部屋数は2つで平屋建て。奥の部屋にキッチンとお風呂場があるはずだ。
2つの部屋はとても広いがそれだけで、特に何があるわけでもない。
ご飯屋さんとか?いやそもそも食材を買うお金がないし、料理も得意とは言えない。
物を作って売るにしても同様だ。
占いとか、なにか家でも発揮できる特技があればよかったが、そんな物もなかった。
本格的に頭を抱え始めた私にふと名案が思い浮かんだ。
そうだ。宿をやろう。それがいい。
家から出る必要もなく、私に害意を抱かない客しか入ってこれない。
そして、素泊まりならばベッドさえあれば問題ないしそれならばそこにある。
もし宿経営が軌道に乗れば料理を提供してもいいかもしれない。問題は部屋が一部屋しかないことだが、本格的に困ったら、最終手段としてミレイを頼ってしまおう。この世界最強の味方がついていると思えば、必要以上の不安を抱く必要はなかった。
よし、そうと決まれば。
私は元いた世界から持ってきた日記代わりのノートと筆記用具を取り出す。こちらの世界に持ってきたものは多くない。たくさんの思い出の写真と宝物。日記は毎日書いていたわけではないけれど、なにかの節目には必ず書いていた。何冊かあるそれも持ってきていた。ここに来るまでのことも書いておきたいと思う。
ノートから一枚紙を破り取り、そこにこちらの世界の言葉で「宿」とマジックで大きく書き記した。
店の名前はまだ思いつかないし、ちゃんとした看板を作るまではこれでいいだろう。
少しだけ緊張しながら外に出る。外は既に暗い。私は家の扉に「宿」と書いた紙を取り付けた。
茶色いレンガ造りの私の家は大きいわけではないが、欧風の美しい街並みに似合う家だろう。私の家の両隣には私の家とそう変わりない住宅が並んでいた。ここは住宅街なのだろうか。そうここは大国の王都。できるだけ治安の良い場所に送るとミレイはいってた。お隣さんへの挨拶は明日しよう。
そそくさと家の中に戻った私はふうと息を吐いた。
お腹はさほど減っていない。お金もないし今日はもう休もうかな。ベッドは商売道具ではあるが今はお客さんもいないしとノソノソとベッドに潜り込もうとした。
その時だった。家の扉を叩く音が聞こえてきたのは。