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触れてはいけない人

ストワルさんと共にご飯を食べて、また連絡することをお互い約束して別れた。

1人きりになって私はオレンジ色の石のついた首飾りを取り出して、それに触れて目を閉じる。

そして、ジュードとの通信を願った。

スキルには、通信(範囲最大)と書かれていたけれど、今ジュードがどこにいるかはわからない。そんな状態でもジュードと通信なんて出来るのだろうか?


(ジュード。ジュード。魔王様)


心の中で何度も何度も呼びかける。もしかしてと思い、今度は声に出して何度も何度もジュードの名を呼んだ。


「ジュード。ジュード。魔王様。聞こえていたら答えてください。お願いします」


けれど、一向にジュードからの反応は返ってこない。方法が間違っているのだろうか。なんだか、声をかけてもかけても何かに塞がれているような、ジジっという不快な音が返ってくるばかり。ストワルさんに聞いておけば良かったと後悔し始める。


「ジュード…。じゅーどぉ。ジュードっ」

『うるっせぇ!!誰だ俺様の名前を連呼しやがって!って…、んあっ!?」

「ジュード!!」

『おっま、御零かよっ!お前、まじ、危ねぇだろうが!!通信繋げたいなら先に言っとけよ。危うく殺しちまうとこだったろうが…』

「へっ?」


なんだか酷く物騒な言葉が聞こえてきて体が固まる。とりあえず、通信が繋がって良かったけど、なんかジュード怒ってる?


『へ?じゃねぇ。通信なんてもん、誰でもかんでも受け入れてるわけねぇだろ』

「そ、うなの?」

『今だってあんまりウゼエから通信繋げたけどよぉ。通信の魔法使える奴なら、知らねー奴からの通信なんてシャットアウトしてんのが普通だろ』

「そんなことできるんだ」

『お前、そんなことも知らずにどうやって通信の魔法使ってんだ?』

「創造神からもらったアイテムで」

『あー、そうかよ。とにかく、お前からの通信はこれからはすぐに開くから。怒鳴りつけて悪かったな』

「いや、こっちこそ…急にごめんね…」


あまりに出会った時と変わらないジュードにつられてしまったが、これからは言いにくい話をしなきゃいけないと思うと、少し声のトーンが落ちる。


『…なんだよ?なんか、困ってんのか?』

「困ってる、っていうか…。うん。そうなんだ」

『待ってろ。今、そっち行くわ。お前、あの家の中にいるか?』

「えっ!?そんなの悪いよっ」


ジュードの顔を見て、それこそ、どんな顔をしていいのかわからない。慌てて断ろうとする。


『…俺に会うのも、嫌かよ』

「そんなわけない、けど…」

『けど、なんだよ。…チッ。俺が言ったこと気にしてんだろ』

「うん。ちゃんと、返事しなきゃと、思ってる…」

『んなもん、今じゃなくていい。むしろ、どうせ断られんだろ?なら、まだ聞きたくねぇ。お前が困ってるってんなら、それ俺に助けさせてくれよ』

「っ!甘えちゃうよ…?」

『俺が良いってんだから、良いんだよ。お前、今家だな?すぐ行くから』


通信が切れて、アワアワとしているうちに、家の扉が叩かれた。タイミング的にどう考えてもジュードだ。


「おい、俺だ」


外から聞こえてきた声に確信して扉を開ける。そこには、顔を赤痣と青痣だらけにしたジュードが立っていた。


「ひっ!」

「…その反応、地味に傷つくからやめろ」

「だって、あんまり痛そうだし…」

「ったく」


ジュードが短くなんらかの言葉を呟いた。聞き取れなかったそれが治癒魔法の呪文だと気付くのに時間はかからなかった。ジュードの顔面の痣や腫れが消えていったからだ。


「す、すごいね」

「あー?まぁ、このくらいはな」


言葉とは裏腹に嬉しげな表情を見せるジュードに安心する。ジュードとの再会は、私が想像していたよりもあまりにあっさりと果たされてしまった。

それにしても、治癒魔法って、使える人少ないんだよね?私の周り、気軽に使ってる人ばかりなんだけど…。


「ふーん。それが創造神のくれたアイテムかよ」


ジュードの真紅の瞳がオレンジ色の首飾りを見下ろして、その長い指で軽く持ち上げる。思わずビクッと震えた体に自分自身で驚く。


「なんも、しねぇよ。お前の体に許可なく触れたりはしねぇ」

「うん。わかってるんだけど…」

「やっぱ、来ねえ方が良かったか?」


仏頂面は変わらないのに真紅の瞳に映る悲しみに私は胸を締め付けられた。顔を見るのが気まずかったのは確かだけれど、それでも、ジュードが助けてくれようとしてくれるのが嬉しかったのも本当なのだ。


「そんなこと、ないよ。嬉しい。ほんとだから、ここにいて」


ジュードには不用意に触れてはいけない。それくらいはわかるから、思わず伸ばしそうになった手を握りしめて下ろす。


「あぁ。わかった…」

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