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創造神の眷属

サクサクと土を踏みしめながら歩く。木々に阻まれた視界。人の通る道等はなく生い茂る草木に邪魔されたその歩みは遅い。

地図で見つけて何とはなしに来た森。名前も知らなければ、もちろん中の様子なんて知るはずもない。我が身を脅かすような脅威があるとも知れない。まぁ、転移のスキルがあるから逃げるのは簡単だろうけれど。


それにしても、生き物になかなか会わないなぁ。


森であるし生き物が豊富なのではと思ったのだが、そうでもないのだろうか。まぁ、生き物がいたとして怪我をしてたらいいなんて酷いことを思ってる訳で、だから近寄って来ないなんてことはあるのかもしれない。手負いの獣なんてそれこそ警戒心も高そうだ。


草木をかき分けながら進んでいると、ふと視線の先に光輝く水面を見つけた。そのまま進むとほんの少し開けた場所に出る。大きくとても綺麗な澄んだ泉があった。思わず水面に手を伸ばしひんやりとした水に触れる。

パシャン、と水が跳ねる音がして顔をあげる。泉の反対側にそれはいた。白馬、のようだが、その額には煌めくクリスタルの角が生えている。驚きに目を見開く。その白馬の毛並みは淡く白金に輝き、その瞳は静かな湖面のように知的な光を湛えていた。

白馬は恭しく、私に向かって頭を下げた。不思議に思うほどに、その光景は自然で私も合わせるように頭をペコリと下げた。

私と白馬は惹かれ合うように互いの距離を詰め、そして私は気付く。

クリスタルの角が不自然に削り取られたような痕があることに、そしてそのまばゆいばかりに輝く毛並みの所々が血に汚れ、痛々しい傷痕があることに。その理由は分からないけれど、私はここへ来た目的を思い出す。


「あなたに触れても良い?」


白馬に手を伸ばす。その手が拒まれることはなく、私は腕輪に願った。どうかこの白馬の傷が癒えるように、と。しかし、白馬の傷は治らなかった。やはりというべきか、想像してた通り、私以外には治癒の力は発揮されないらしい。私はわずかに困ったようにこちらを見つめる白馬に、にっこりと笑いかけた。


「ごめんね。あんまり美味しくはないみたいなんだけど、このお薬を飲んだら傷が治るからね」


そして持ってきていた回復薬の瓶の蓋を開け、それを自らの手に出し零れぬように白馬の前に差し出した。白馬は私の手からその回復薬を舐めとってくれた。


「ふふ。これ、ミレイのお手製だから、きっとあなたにはとってもよく効くから」


白馬はまた恭しく頭を下げた。それに私もペコリと頭を下げる。白馬の周囲はミレイの力が濃く感じる。たぶん、ミレイと近しい存在なのだろう。だから、この白馬は私を警戒しない。そして、私も警戒すべきだと感じなかった。

白馬の傷はあっという間に癒え、そのクリスタルの角までも綺麗な円錐の形になった。キラキラという白馬の輝きは先程までよりも圧倒的に強く、クリスタルの角は虹色の輝きを内包しているかのようだ。


「治ってよかった」


私はその白金に輝く毛並みを撫でて、血に汚れた毛並みを泉の水で濡らしたハンカチで拭ってやる。せっかく傷が治ったのにこの綺麗な毛並みが血で汚れたままなのはもったいない気がした。

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