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突拍子のない思考

私は自らのスキルを眺めながら考えていた。


華奢な白銀の腕輪の効果、完全治癒。

緑色の石のついた指輪の効果、浄化。


私が目指す方向性にとって、非常に重要な気がする効果のため、早めに試しておく必要があると思う。


私の目指す方向性、それは「聖女」だ。


もちろん本物の聖女になんてなれないことはわかってる。

私は臆病だ。ユリアさんみたいに戦場に身を置くなんて出来ないし、そもそも、全ての人のためにとか、神様を信仰するとか、あまり興味がない。

だから、形だけで良い。

そう、みんなが勘違いしてくれれば、いい。


あの噂を消すためには、まず噂の根本からひっくり返して、それを周知させることが必要だと私は思った。けど、私がいくら違うと言っても、たぶんきっと全ての人には信じて貰えないだろうし、娼婦じゃないと声高に言うのは私が恥ずかしい。

それに、宿を辞めるにしても次の職は探さないといけない。

そして、次の職を探すにしても、私はここから離れたくないと思っている。

前提条件はこれだ。


ミレイに頼めば別の場所に移って心機一転やり直すこともできる。きっとそれは簡単でミレイはその方が良いと思ったんだろう。でも、私は、この状況のまんまでここを離れたくない。

離れてしまえば、逃げてしまえば、私はたぶんずっと後悔する。

せっかく初めてこの世界で仲良くなった人達ともきっともう会いたいと思えなくなるだろう。

それは、嫌だった。


だから、全てを解決するためには、やはり噂はデタラメだったと全ての人に分からせるしかない。

その方法を考えて、私は「聖女」を目指すことにした。

噂に含まれた聖女という文言、これを利用しよう。

題して、御零は娼婦じゃなくてほんとは聖女だった!大作戦だ。

娼婦でありながら聖女のようだ、は有り得ても。聖女でありながら娼婦をやってる、はさすがに無理がある……よね?

娼婦よりは聖女の方が、圧倒的に人々から受け入れられやすいだろう。娼婦ではないと証明するよりも、聖女だと証明することの方が簡単だと思う。この世界でのユリアさんの人気の高さを見るに恐らく社会的地位も高そうだ。


私は転移のスキルを使い昨日訪れた森に移動した。

明日はストワルさんに魔法を習うから、装飾品の効果を試すのなら今日がいい。

宿に関しては、しばらく、少なくともあの噂が消えるまでは、休業にするしかない。まだ貯えはわりとあるから、早々にお金に困ることはない。

家の中で私は自らの指に傷をつけて、白銀の腕輪に触れて傷が治ることを願った。すると傷は跡形もなく消えていた。この効果は予想と違わない。けれど、聖女としてあるならば、この効果が他者にも適用されなければ意味がない。それを試したくてもまだ不確かなこの効果をよくわからないまま人に対して使うことは出来ない。やってみたけど出来ませんでしたじゃ私が聖女ではないと言い触らすようなものだろう。

だから、私はミレイが家に置いてくれていた回復薬を持って森にやって来た。そう、都合よく傷ついた獣に会えたらなんて、不謹慎なことを考えて再びこの森を訪れたのだ。

そして、当然そんな都合の良い展開などあるはずもなく、私は手持ちぶさたのまま森をさ迷い始めた。

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