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驚き

家の中が安全なのは確かだけど、変質者を家ににいれたくないなぁ。身の安全には代えられないのでそんなことも言ってられないけど。


「どうぞ」

「中に入っても良いのですか?」

「仕方ないので」

「ありがとう。お邪魔します」


礼儀正しく彼はそう言葉にしてから、家の中に入った。彼の巨体が歩く度に肉が揺れる。私は椅子に座るように勧めた。


「先ほどは本当にすみませんでした。貴方が噂通りの人物であるか確かめたかったのです」

「噂って、何ですか?」


最近、よく聞く単語だ。身に覚えのない突拍子もないことを言われるから、私のことじゃないと思ってたけど、こうも何人もの人達に言われるとどのような内容なのか気になってくる。


「その前に、僕の自己紹介をさせてほしい。僕は、セイラン・アルフォード。今日はお願いがあって来ました」

「はい」


左右非対称なパーツの配置。開いているのかいないのかさえ定かではない細い瞳、大きく分厚い唇はまくれ上がり、低い鼻はつぶれている。艶やかな金髪にアイスブルーの瞳。造形を除けば王子様と言われても違和感のない素材であるが。


「貴方に、僕の偽の恋人になってほしいのです」

「お断りします」

「まさかすげなく断られるだなんて。貴方は本当に私が求めていた人材だ」


また嬉しそうにそう宣う彼に私はついつい半眼になってしまう。


「はい?」

「無茶なお願いだということはわかっています…。見ず知らずの者からこんなこと言われても困りますよね。身勝手なお願いですし、もちろん報酬も支払います。この店の一晩の値段で貴方の数時間を私に売って頂けないでしょうか?貴方に触れたりすることはありません。もし私に付き合うことで何か不都合が生じるならば、それももちろん補填し弁償します」


怪しい。怪しすぎる。この人を信用しても良いだなんて全く思えない。偽の恋人になるだなんて、どう考えても怪しいし、報酬も法外だし。でも、とても真剣に話をしているのはわかった。返す言葉は決まっているのだけれど。


「お断りします」

「本当ににべもないな…。理由だけでも聞いてくれませんか」

「嫌です」

「そこをなんとか」

「嫌ったら嫌です」

「ど、どうして嫌なんですか?」

「第一に貴方のこと信用できませんし、偽だとしても貴方の恋人になるだなんて嫌です」

「も、もしかして、御零さんには恋人が?」

「それはいませんけど」


あれここは嘘つけば良かったのだろうか。そう思ったけれど、もう後の祭りだ。恋人の振りだなんてどう考えてもめんどくさいことになるに決まってる。この人のためにそんな面倒を被りたくなるほど、我が家の家計は逼迫していない。


「では、私のことが信用できたら、このお話受けてくださるのですか?」

「え…」


まぁ、正直、お友だちが困ってるのを助けるためなら、しないでもないけど。この人はお友達じゃないし。


「それより、この話が済んだのなら、街の噂というのを教えてくれませんか?」

「そうですね」


彼に話してもらった噂の内容は私の頭に鈍器で殴られたような衝撃を与えた。彼曰く…

王家御用達の『御零の愛』という娼館には、心優しく、どのような容姿の者にも平等に接する聖女がいる。その優しさは平等ではあるが、その愛を得るためにはただ1人彼女だけを愛さねばならない。


「あり得ない。どうなってるの?」


御零の愛だなんて正直痛くて恥ずかしい名前の店が他にあるとは思えない。つまり、その噂の内容は私のことを指しているわけで。私が聖女で…この宿が娼館?え、つまり、聖女で娼婦?ものすごい矛盾。何がどうなってるのだろう。嘘八百もいいところだが、この噂にはどう考えてもラシュエルが関わっていることだけは確かだろう。火のないところに煙は立たないのだ。

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