チート最高
やってまいりました異世界。
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家族と友人との別れは想像以上に切なくて、もう二度と会えないかもしれないと思うと辛くて、苦しくて心が引きちぎられそうなほど悲しかった。
でもそう思っていることを私の大切な人に悟られないように、私は伝えたかった言葉をすべて伝えて、そしてお別れしなければならないことを伝えた。納得してもらえなくても、これから私が幸せでいることだけを伝えて。
家族には嘘はひとつもつかなかった。ミレイのこと異世界のこと全て話して、信じられないという家族に私はそれでもいいから、私は向こうの世界で幸せになるから、だからみんなもどうか幸せでいてねと願った。
大切な人のそばで過ごす短い時間を私は笑って過ごせた。
わんわんと泣きながらミレイと戻ってきた。ミレイはそんな私を抱きしめてひたすらに慰めてくれた。
全ての元凶は彼なのに、どうしても憎めない。
きっと憎んで呪って意地悪をしたってミレイはそれを受け入れて、どんな罰でも受けるとわかってはいたけれど。
「本当にすまない。私ができうることは全てあなたに捧げると誓う。あなたが私の世界で幸せになれるように」
なんとか涙が止まって、落ち着いてきた私は、ミレイのその言葉にコクリとうなずいた。
ミレイのプラチナの瞳は私ほどではなくても涙に揺れていて、眉間にシワが寄っていた。私の頷きに微かに安堵したようにほっと息を吐いて、わずかに表情を緩める。
そう、神様に等しい力を持つミレイがなんでも私にしてくれるというので、私はミレイの世界で生きていくために必要な力を貰おうと考えていたことを話した。
「やっぱり身を守る術は必要だと思うんだ。あとは一人で生きていくために必要なスキルとか。お金を稼ぐためにはいろいろできたほうが絶対にいいよね。あ、そういえばミレイとは会話できるけど他の人でも大丈夫なの?」
小説の中のチート主人公に自分がなれるとワクワク感にすこしだけ気分が浮上する。我ながら諦めも早ければ立ち直りも早い。私の言葉にミレイはウンウンと頷いている。
「それは当然だ。か弱い御零をこのまま放り出すなんてできない。よし御零のステータスを人類最強、いやこの世界の最強にしておこう。うん、あの魔王だって一捻りくらいにしておくね。この世界にあるスキルは全て習得させておくし、戦いなんてしなくても生きるのには絶対に困ることはないからね。あとは御零は誰からも好かれるだろうけど、害意になんてさらさせたくないから、あなたに害意あるものはあなたに一切近づけないし関われないようにしておこう。うん、それがいいね。ああ、言葉に関しては問題ないよ。私の力に溢れた世界だからミレイに理解できない言語はない」
…それってもはやステータスを最強にする必要ないんじゃない?と思ったがようやく淡い笑顔を見せたミレイにそんなことは言えなかった。
ここまでのチートってありなんだろうか?けれど、使うか使わないかはその時決めればいい。ないよりは絶対にあったほうがいいだろうと私は必死な様子のミレイにうなずきを返した
「じゃあ早速」
ミレイは私の手を取って、何らかの言葉を紡いでいく。
それが何分か続いたあと、ミレイは真っ青になっていた。
「え?どうしたの?大丈夫?ミレイ」
返ってきたのは思いもよらない返答だった。