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それは魔族最強の称号

ストワルさんの帰り際、偶然居合わせたハルベラさんの言葉に私はビックリしてしまった。何故かストワルさんに良い感情を持っていないらしいハルベラさんの誤解を解くため話をする。私を心配してくれたハルベラさんを責めることなんて出来る筈もない。なんとか私とストワルさんが友達だと言うことを理解してもらえたので良しとする。


結局、ストワルさん、次いつ来てくれるのかなあ。







……………………………………………………………………


数日後




「御零、疲れたのかい?先に帰っておいで」

「大丈夫です。ハルベラさん。私この辺りで待ってます」

「ダメだよ。まだあたしの買い物はかかりそうだしね」

「うぅ、わかりました」

「気をつけて帰るんだよ」

「はい」


ハルベラさんとお買い物に来て、いろんなお店を一緒に回った。ハルベラさんはまだ買うものがあるらしいので、確かに少し疲れていた私は先に帰ることにした。

その前に少しだけ休憩しようと日差しを避けて木陰に入る。

ぼんやりと大通りを歩く人を眺めていると、目の前を見たことのある人が通った。


「あ!」


私の声にその男は立ち止まり、サッと私に視線を向ける。男の目が向けられた瞬間、世界の音が遠ざかった。ほんのわずか深紅の瞳と視線が交わる。


「…お前、」


時間が止まったような感覚を無理やり断ち切って、私はとっさに逃げ出した。それはもう全速力で男がいた通りとは反対方向に駆け出す。


「お、おい、ちょっと待て」


いくらも経たない内に、私の手首は追いかけてきた男に掴まれてしまった。


「お前、創造神か?」


赤い瞳が特徴的な黒髪の美形は息を切らしもせず私を捕まえた。それは、ミレイが私をこの世界に呼ぶことになった元凶を作った男。


「いや、違うか。力が弱すぎる」


勇者と恋仲の聖女に横恋慕して、盛大な三角関係による修羅場を繰り広げ、世界の核を破壊した者。


魔王だ。


「お前のことは知らないな。なぜ、お前は俺を認識できた。俺を知らぬものは俺を認識できぬようにしていた筈だが」


そんな魔法もあるのか。私は疲れも相まって早々に逃げることを諦めた。魔王はいわゆるチートキャラだ。


「私、あなたのこと知ってるもの。あなた、魔王でしょう?」

「はぁ?何でお前俺のこと知ってんだよ!?」

「見てたもの。あなた、聖女に恋をして、振り向いてもらおうといろいろしたけど、聖女は勇者のことが好きで振り向いてもらえなかった。二人の仲を引き裂こうと無茶苦茶したけど、どう頑張っても二人のなかは引き裂けなかった。その無茶苦茶に怒った創造神に『勇者と聖女は相思相愛だ。だから、聖女のことを思うなら身を引いてやれ』って言われて、素直に改心しちゃう意外と素直な人だってことも知ってる」


乱暴な語調に荒々しい声。わなわなと震える魔王。この人のことを知らなければ怖がるところではあるのだけれど、この魔王、自分よりも圧倒的にか弱い女子供には敵であろうと絶対に手を出さないという人物なのだ。しかも、私が絶対に無理だと思ったミレイの説得にも、あっさりほだされてしまうような素直な人。人間かどうかはさだかじゃないけど。


「な、何故それを知っている!?」

「だから、見てたんだって。私、創造神の身内?だから」

「わ、忘れろ!今すぐにだ。さもなくば、殺す」

「それ、無理じゃん」

「はぁ!?」

「だって、魔王、とっても紳士じゃない。か弱い私に手をあげられるの?知ってるよ。魔王は優しいから、女の私を傷つけられないって」

「ぐっ!」


漫画のような言葉の詰まりかたをした魔王に私は、ふふん、と笑って見せた。対照的に悔しげにギリギリと奥歯を噛みしめている魔王。

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