02 お楽しみの時間
〈薄く笑うベルベッド〉、か‥
書斎は焼けた。
しかし、生きていると気付かないうちに、様々な跡を残すものだ。奴に目を付けられるのも時間の問題だろう。
ロザリアはニュークリプトンのホテルへ向かい、予め取ってあった部屋へ向かった。
部屋は広くもなければ狭くもない、至ってノーマルなものだった。どうせここに長く滞在する予定はないのだ。早急にマグノリアへ行かねばなるまい。
返り血を流したい。しかし人に見られるといけないので、大浴場は禁物だ。部屋にあるシャワーで済ますしかない。
衣服を全部脱ぎ捨てる。そして、タイツからブラジャーに至るまで念入りに手洗いをする。
これはロザリアの一つの習慣のようになっていた。洗濯機は信用できない。箱に洗剤と水を入れ、かき混ぜるだけで服が綺麗になるとはとても思えない。
シャワーを浴び終えると、ロザリアは鏡を覗いた。
透き通るような、ショートにまとめられた白い髪。
隙のない冷静な表情。
大丈夫、いつものロザリアだ。
そして、持参したマゼンタ色のパジャマに身を包む。
やはり着慣れたものが落ち着く。こういうとき、ホテルに用意された寝巻きを使う神経がわからない。本当に清潔である保証などどこにも無いというのに。
そして、お楽しみの時間が始まる。
持参した二個目のトランクを開け、中から血の詰まったボトルビンを取り出し、これまた持参したワイングラスにとくとくと注いでいく。
少々特殊な薬剤を混ぜているので、血は凝固しない。艶やかな赤がルビーのように美しい。
ロザリアは一口飲んだ。
芳醇な鉄錆の香りと、柔らかな甘み。舌を刺す程よい酸味が心地良い。
今は深夜零時。
ホーホー
ホーホー
梟が鳴いている。
ロザリアはもう一口飲んだ。
さて、あと二時間程で出発せねばならない。
夜こそが我等、吸血鬼の時間なのだから。




